見出し画像

名は体を表す

ある年の中学剣道の全国大会、男子の部で優勝したのは長野県の剣持くんだった。剣道の大会で剣持くんが優勝する、友人からはギャグみたいじゃないかと随分からかわれたらしい。しかしその年は何故か、様々な競技で同じようなことが同時発生した不思議な年だった。

陸上の女子100メートル走、優勝したのは百田走華(ももたそうか)さんだった。中学になってから始めた陸上競技、成長期を終えて3年になってからグングンと記録を伸ばしての結果だったらしい。男子卓球で優勝したのは針本くん、針は英語でピン、そして本。卓球を始める前からあだ名は『ピンポン』だったという。バスケットボール、籠球で優勝したのは籠原中学校。これまでは強豪というわけでもなんでもない中学だったが、昨年は何故か才能が集まっての大躍進だったようだ。サッカーで優勝したのは静岡県の強豪校だったが、得点王になったのは準優勝になった岡山の中学の蹴人(しゅうと)くんだった。新体操で優勝した新田操(にったみさお)さん、バドミントンのダブルスで優勝したのは鳩山くんと水戸くんのペア、スポーツ分野だけではない。将棋の全国大会で優勝したのは王手(おうて)くんだった。

不思議なのは、彼らが目覚ましい結果を残したのがほぼこの1年だけだったということだ。剣道の剣持くんは共学の高校に進学してすぐに彼女が出来てからは彼女を優先して練習を疎かにするようになり、当然成績が伸び悩むようになった。100メートル走の百田さんは優勝してから更に背が伸びてしまい、凡庸な選手になってしまった。卓球のピンポンくんは雪の日に滑って転んで足首を痛めたのが長引いて引退。サッカーの蹴人くんも新体操の操さんもバドミントンの鳩山くんと水戸くんも、将棋の王手くんも、皆それぞれ伸び悩んだり怪我や様々な理由で引退したりして、1年限りの活躍となってしまった。

名は体を表すという言葉がある。彼らがこの先もずっと結果を出していたのなら、まさにその言葉を実践することになったのだろうが、現実はなかなかそうもいかないらしい。しかしこの年のサッカーの全国大会、全国大会得点王になった蹴人くんは伸び悩むわけだが、山梨県の中学でエースだった英寿(ひでとし)くんと、全国大会ベスト4になったチームの正ゴールキーパーだった正剛(せいごう)くんだけは、後に日本を代表する選手に成長することになる。不思議なこともあるものだ。

よろしければサポートいただけると、とてもとても励みになります。よろしくお願いします。