B2BビジネスにおけるABM実践事例-パイプライン数の最大化を担うパートナーセールス-
FORCASのBDR担当は、前回共有したような手紙を活用した方法の他に、複数の施策を用いて新規の案件獲得に取り組んでいます。
後に述べる枠組みでBDRを位置付けている組織やチームが、私の周囲に多くなく、かつ弊社で一定の結果と考察が見えたため、以下の方々へ向けて共有します。
・B2Bマーケ/営業担当者
・法人の新規案件獲得に取り組む経営者の方
【要約】BDRの業務を図解
ここからは上記要約に関して、詳しくお伝えします。
【課題】
ターゲット企業からの新規案件獲得数の最大化
FORCASのBDR担当を一言で表すと「社内外のアセットを活用するパートナーセールス担当」です。
パイプライン数の最大化を目的に、アサインされた予算の範囲内で、リードジェネレーションから商談獲得までの業務を担います。
その過程で発生するパートナーとの契約管理業務や、予算の管理業務、パートナーの新規開拓業務、フィールドセールスやSDR担当との連携もミッションの範囲です。
それらの業務を課題としてまとめると以下になります。
1.ターゲット企業からの新規案件獲得数の最大化(KPI:パイプライン数)
2.予算と契約の管理
3.1と2を継続的に実現するため、社内外との連携による施策の企画
【現状の施策】6つの施策
以下が現状BDRが担当する施策の一覧です。
CPAや市場環境、社内状況に応じて出し入れが発生するので、時期によって特定の施策を止めたり、新たな施策を始めたりします。
1.リファラル
社内の人脈を活用して、見込み顧客の紹介を促す施策です。金銭的なコストがかからないため、CPAは非常に良いです。しかし再現性が、協力してくれる社員の存在や、会社のカルチャーに依存するため、実践するためには潜在的な人的コストが発生します。
2.顧問
社外顧問の人脈を活用して、見込み顧客の紹介を促す施策です。継続的に成果を生むためには、新規の顧問を開拓し続けること、相性の良い顧問(例えば自社商材のユーザー等)にリーチすること、顧問と良質なコミュニケーションを取ることが重要な施策です。商談数を拡大しやすい反面、高いCPAを維持できるかが成功の分岐点になります。
3.企業マッチングサービス
ビジネスマッチングベンダーと連携して、案件の獲得を目指します。相互提案になることも多いため、先方が要望する自社の特定部署との連携が必要であったり、商談の建付けにコストがかかるといったデメリットはありますが、ベンダーの介在コストが低いため、手数料が低い点は魅力です。
4.手紙
伝統的な手法であり、非効率的であるように見られることもありますが、無視はできません。実施する前段階で、実現したい課題の明確化や現実的なゴールセット、適切なプロセスの構築ができれば、成功の可能性は十分あります。弊社では受注におけるCPAは相対的に高く、パイプラインや商談におけるCPAは相対的に低い傾向があることが見えています。
社内に成功事例がないテスト段階では特に、外注することをお勧めします。理由は2つです。
一つはコストです。手紙を活用したアプローチにおいて外注できるプロセスは、主に顧客へのテレマーケティングと手紙の作成送付のプロセスですが、特にテレマーケティングのプロセスは、外注できるベンダーや個人事業主が市場には豊富に存在し、彼らが多くのノウハウを持っています。彼らのアセットを活用することで、低いコストで施策をスタートすることができます。豊富なアウトバウンドアプローチの経験を持つ担当者を高いコストで採用する必要も無く、採用した後のマネジメントコストも外部の担当者であれば、低く抑えることができます。
もう一つは中断できることです。何かしらの理由で、その施策から望ましい成果を得られなかった場合、その施策は中止する必要があります。しかしその施策を実施するために、例えば担当者を採用したり、他の部署から異動させたりした場合、それらを無かったことにするのは、特に日本ではとても難しいことです。その点外部に発注することで、契約内容を工夫すれば、長くても半年で中断することが可能です。
5.オフライン交流会
オフラインでのネットワーキングは、コロナウィルスの影響で、この数年完全にストップしていました。しかし近年はその反動もあってか、注目すべき施策となっています。私たちは直近この施策で(今後長期的な検証が必要ではありますが)高いCPAを記録しており、今後の伸びしろを期待しています。
6.定期的なターゲティング
これは全ての施策の根底になる業務です。特に能動的に顧客へリーチする場合に絶対欠かしてはいけないことが、私たちがその顧客へリーチする明確な理由を持つことです。仮説ベースでの明確な理由を持たず顧客へリーチしても、顧客と信頼関係を築くことはできません。
弊社の場合、例えば過去受注実績のある複数の企業を分析し、共通する特徴を導き出すことで、私たちがどのような企業に価値を届けられるのかを、詳細に言語化します。それらは顧客へリーチする明確な理由となりえます。
【問題】2つの問題
これら取り組みは、業務内容が多岐にわたるため、その時々で発生する問題も様々です。しかしボトルネックとなりえる問題は、一定以下に収束します。
・ネットワークの枯渇
・CV率の低下
【解決策】2つの解決策
上記のボトルネックの解決策となりえるものを順番に説明します。
・ネットワークの枯渇
ネットワークの枯渇というのはつまり、パートナーからの案件供給がストップすることを意味します。パートナーセールスは、パートナーのネットワーク(人脈)の力を借りて、成功を目指す取り組みです。そのためターゲット企業の担当者とのネットワークを持つパートナーと、私たちは関係を持ち続けなければいけません。
そのためには絶えずパートナーを開拓し続ける必要があります。なぜならネットワークは有限だからです。パートナーのネットワークが尽きれば、別のパートナーを開拓しなければいけないのは当然です。一方で規模の大きな法人とパートナーとして連携できれば、この問題は起こりづらいでしょう。
パートナー開拓の方法はさまざまで、例えば社内に特定の分野のエキスパートがいるのであれば、その方はおそらくその分野での豊富な人脈を持っており、その人脈を借りることへ最初に力を割くべきです。他にも社外顧問のプールを抱えるベンダーと連携すれば、優秀な顧問を継続的に開拓することも可能でしょう。
・CV率の低下
これはつまり他の施策と比較して、相対的に案件を獲得できていなかったり、受注ができていなかったりする状態のことを指します。この状態に陥った場合は、まず以下を見直すべきです。
1.パートナーの能力は充分か
そのパートナーが自社の商材を充分理解できていなかったり、理解できていても顧客へ適切な説明ができていなかったりした場合、そこから良質な案件を獲得することは難しいでしょう。
2.パートナーの持つネットワークは充分か
そもそもそのパートナーが、自社のターゲット企業との人脈を豊富に持ってない場合、そのパートナーからの案件は比較的容易に失注します。
3.そのパートナーに熱意はあるか
自社商材の拡大への熱意がパートナーになければ、その案件は受注に至りません。そしてその熱意に火をつける要因の一つが契約です。自社が提供できる最大限の報酬を、パートナーへ用意しましょう。それは金銭的な報酬に限りません。
【結果】
インバウンドマーケティングと同等のCPA
具体的な数値は開示できませんが、現状インバウンドマーケティングと同等のCPAが出せており、組織としての役割自体はFORCAS事業の創業期から継続しています。
【考察】2つの考察
この業務の組織的なメリットは、以下だと考えています。
・関係する自社の社員数が少ないこと
この業務は決済、契約の承認などの業務を除く、ほとんどの業務を一人の担当者が行います。例えばインバウンドマーケティングでは、リードジェネレーションから商談獲得までの業務に、複数の担当者が携わります。そのためBDR業務を取り入れることで、採用コストやマネジメントコストなど、組織的な人件費の部分は節約できる可能性があります。
・変化への柔軟性が高いこと
昨今の市場の変化はスピードが早く、非常にドラスティックです。その変化に対応するためには、施策自体のPDCAのスピードを速くする必要があります。施策に社員が紐づくと、その施策を止める判断に社員の異動等のコストがかかります。その点複数の施策を、一人の担当者が運営していれば、契約の内容を工夫することで、短いスパンで止めることも可能です。
【最後に】御礼
この業務を行うためには、上記で述べたような現場の業務ももちろん重要ですが、他にも様々なバックオフィスの業務が発生します。
例えば他部署との連携による予算の策定や、契約書のレビュー、承認捺印業務などなど。それらをスピーディーに進めるにあたり、特に私の上司である中井さんは、最大限サポートしてくれています。他にも複数の社内メンバーに支えられていることに関して、ここで改めて御礼を伝えたいです。
また、現在パートナーセールス業務に取り組まれている方と、積極的に情報交換させていただいています。私のLinkedin宛にメッセージをいただければ、数日で反応できますので、お気軽にご連絡ください。
私のLinkedinアカウント:
https://www.linkedin.com/in/ryuichi6/
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