B2BビジネスにおけるABM実践事例-BDRチームの発足-
今年7月、弊社では法人の新規開拓をミッションとする、新たなBDRチームが発足しました。このチームのミッションは既存のチャネル以外から商談と案件を創出すること。つまりゼロベースで案件獲得の手段を構築することでした。現場の専任担当者は私一人。そしてこれを書いている2021年11月初旬時点で、一定の成果と考察が見えたので、以下に該当する方へ向けてシェアします。
・B2Bマーケ/営業担当者
・コロナ禍において新規案件獲得に困っている方
※ABMについてはこの記事がわかりやすいです。
※2023年3月7日に【結果】を更新しています。
要約
ここからは上記要約に関して、少し詳しくお伝えします。
【課題】
これまでの弊社の案件獲得手法は、オンラインセミナーを始めとしたインバウンドチャネルと、社内外の人脈を活用したリファラルによるものが主でした。
その中において、事業をさらに加速度的に成長させるためには、新規の案件獲得手法の構築が必要でした。こうした背景から新たに私がこのチームにジョインし、少ないリソースで成果が創出できる∧短期-中長期的に成果が期待できるチャネルの開発を課題として業務に着手しました。
【問題点】
この2年、述べるまでもなく外部環境の変化が著しいです。主にコロナウイルスの流行によるテレワークの普及と、それに伴う在社率の低下やコンタクト率の低下が挙げられるでしょう。これらは多くのポジティブな影響も我々に与えましたが、特に売上高の拡大をミッションに持つ我々のような担当者の頭をおおいに悩ませていることでしょう。今回のミッションにおいても、これらはボトルネックになる可能性が想定されました。
またリソースの少なさも特徴的でした。今回のミッションに使える社内のリソースは、私一人でした。そのため特に拡大フェーズにおいては、私が「やるべきこと」、「やるべきではないこと」を慎重に見極める必要がありました。
【仮説】
上記問題点から以前、前職時代にシェアした手紙を活用した手法が、課題解決につながる施策となりえると仮説を立てました。当時もエンタープライズ企業の在社率は低い傾向にあり、社内のリソースも3名と少ない中で、一定の成果が挙がったからです。一方で、当時以上に活用できる社内リソースが少ないため、チャレンジングなミッションであることには変わりないとも考えていました。そのため今回は、予算を確保しつつ外部ベンダーの活用を推進する必要があると想定していました。
【方法】
まずは手紙を活用したアプローチが、現組織でも再現できるのか、テストを兼ねてリストの作成や手紙の作成と郵送、顧客への架電等を一貫して私一人で実行しました。これはタフではありましたが、実績のない施策を回す上では必要なフェーズです。以下に業務の手順を記載します。
1.リスト作成
まずリストですが、これは主に自社ツールである「FORCAS」を活用し、ターゲティングされたTier企業の企業リストをベースに、【会社名+ターゲット部署名+ターゲット役職名】でweb検索を行い個人名を特定しながら作成しました。またターゲット部署の特定には自社ツールである「FORCAS Sales」を活用しました。使い方に関する詳細は別の機会にシェアします。
2.手紙の作成
およそ1,000字の文章を作成し、そのうち50字程を企業別にパーソナライズしました。パーソナライズされた文章は50字と決して多くはないですが、ここでも自社ツールである「FORCAS Sales」を活用することで、短時間で業界レポートや決算説明会資料、組織図などへアクセスし、工数を最小限に抑えつつ、ターゲットの行動変容を促す文章を作成することができました。印刷がメインでしたが、より優先順位の高いターゲットの一部は手書き文章にしました。
3.架電
手紙送付先には、電話を使った追客を実施しました。代表電話番号が主でしたが、ハウスリスト内にターゲットとなる担当者が所属する部署の電話番号があれば、そこへ優先的に架電しました。電話でのアプローチの場合、重要なのは代理人または受付との会話です。ここでは、本人とのコンタクトを目指しつつ話し過ぎないことを意識すべきです。ターゲットは電話に出られる状況か。手紙の件で電話をしていること。手紙は誰から誰へ送ったものか。まずはこれだけで良いです。手紙の主旨などは聞かれたら伝えるので構いません。話し過ぎないことで、受付担当者のブロックマニュアルをクリアする確率が上がります。
上記取り組みを1ヶ月ほど実施した結果、商談と案件の創出に成功したため、当組織においても成果の再現が可能だと判断しました。これを受けて外部ベンダーを活用し、活動の拡大を図りました。
外部ベンダーには、手紙の作成と郵送作業、手紙送付先への架電を発注しました。手紙の作成と郵送作業には、アルバイト雇用の他に「Keyman Letter」を導入しました。この「Keyman Letter」の具体的な活用方法については、別の記事でシェアすることにします。
手紙送付先への架電は「kakutoku」へ発注しました。このサービスの特徴は営業代行会社や、営業を強みにする個人事業主へ効率的にアクセスできる点にあります。業務を外注するとき、外部ベンダーを探す作業、特に情報収集には多くの時間が必要です。「kakutoku」はそれをサポートしてくれます。詳しくは、このインタビュー記事でお話ししています!
【結果】
活動量は私一人での活動と比較して15倍に増加しました。結果的にこれを執筆している11月初旬の段階で、およそ50件の商談を創出し、そのうち3割弱が案件化しています。またオプトインが取れたリード約70件を獲得できたことは副次的な成果として計測しています。
追記
2023年3月7日現在、初回接点からいくつかのキャンペーンを踏んだ案件も含めて、6件の受注が発生しています。
【考察】
上記成果によって、コロナ禍においても、手紙を活用したアプローチは、再現性高く一定の成果が期待できることが検証できました。
要因は以下と推測します。
・当組織のもつ企業リストの質が元々高かったこと
当組織はABMが浸透した組織です。そのため元々用意されていた企業リストの質は、高かったであろうと思います。
・私の業務内容を上流工程のリスト作成とディレクション業務に絞ったこと
活用できる社内リソースが少ないことは、当初から問題でした。しかしだからこそ、私自身が「やるべきこと」と「やるべきでないこと」を明確にすることへ、視点が向きやすかったとも考えています。
・質の良いベンダーと協業できたこと
これは運の要素が大きかったですが、「Keyman Letter」も「kakutoku」も素晴らしい働きをしてくれました。特に共通している点はレスポンスの早さです。これには同じSaasベンダーとして身の引き締まる思いでした。
【今後の課題】
当初の課題を一定クリアした今回のミッションでしたが、未だ課題は多いです。例えばターゲット数です。弊社のように、ABMを取り入れる企業は、アプローチ先企業の数を絞っています。そのためターゲット数も限られており、限られたターゲット数の中で、成果を最大化するための方法(例えばアカウント深耕など)については、引き続き検討の余地があります。
他に社内での期待値調整も考えられます。特に弊社のように、インバウンドチャネルがメインの案件獲得手法であった企業にとって、アウトバウンドで獲得した案件、商談をどのように扱うべきか、ノウハウも経験もありません。そのため、アウトバウンドで獲得した案件への商談の際、どのような商談内容にすべきか、リードのリサイクルをどのように展開すべきか、検討が必要です。
【最後に】
ここまで読んでくださった皆様と、入社間もない私をサポートし、導いてくれた弊チームの皆様(特に山元さんと檜山さん)、当プロジェクトへ携わっていただいてるベンダーの皆様へ御礼をお伝えします。
またご覧いただいた方は、同僚やお友達へぜひこの記事のシェアをお願いします!