りょうおん

夏の終わりに別れを告げた息子への手紙を綴っています。息子の思い出記録として。

りょうおん

夏の終わりに別れを告げた息子への手紙を綴っています。息子の思い出記録として。

最近の記事

夜空のひこうき雲(17)

空が白い 街が白い 寒さが嫌いで猫のように丸まっていたのを思い出す そのくせに、雪あそびは好きだったね 競争が嫌いで雪合戦は嫌がったね。 なぜか雪だるまも作らなかった 雪を波しぶきのように遊んでいた 今年もたくさんの雪が積もったよ 君はこの銀世界を海のように漂っているのかな

    • 夜空のひこうき雲(16)

      昨年も生かされた いつか死ぬかもしれないと思いながら 今年はどこまで生きられるのか 運命を受け入れたい

      • 夜空のひこうき雲(15)

        私の人生において 多大なる影響を与えてくれた君に感謝している もう会うことはできない。けれど 私が今後生きていくための精神となって生きている 私の血や肉や細胞で君を宿し、生み そして、今、私の精神に還っている 君と共に育ち生きた証が私の中に宿っている 共に生きている

        • 夜空のひこうき雲(14)

          職業柄、児童福祉法、子どもの権利条約、子ども家庭福祉施策などに折に触れて学ぶ機会が増えている 大体が「最悪の事態にならないために」「昨年の18歳未満の自殺者数は過去最大で・・」って必ず講義内でその言葉が出てくる。それを防ぐための法律であり、施策だって 自殺=大問題もしくは最悪なこと という認識で講義を受けるんだけど、そうなると君の選択は大問題でとっても最悪なことでそれを選択した君は最悪の人になってしまう。 君の選択を真正面から受け容れたい私にとっては講義の内容を否定した

        夜空のひこうき雲(17)

          夜空のひこうき雲(13)

          周りの子育てについての話しや、悩みを聞くと つい、自分と比べてしまう 「自分はどうだったのか」「君にとってはどうだったのか」 それは、どうしても反省から後悔に繋がり、 悲しみの底へと引き摺り込まれてしまう。 いくら反省しても、後悔しても、悲しんでも、泣いても、喚いても 君が戻ることはないし、現れることもない。 君がいないというリアルを頭で理解しながら、 悲しみを抱える心がある 子育ての話しを聞きながら、頭でアドバイスし、 自分との比較で生まれた悲しみに引きずられないようにし

          夜空のひこうき雲(13)

          夜のひこうき雲(12)

          近くの山々が雪化粧を始め 朝の弱い私は起きるのがつらいよ 君は朝早く起きて、好きな本を読んだり YouTubeを観たり のんびりと自由に過ごしていたね 時々、ふと リアルに君の姿が見える時がある 視線を横にやったり、自分の足元に落とした時 君の座っている後ろ姿や 丸っこい裸足が見える それはとてもリアルで気配もあるから 本当にびっくりするよ 君の持ち物に残っている思念が見せているのか 君の魂がそっちの世界から たまに?間違って?こっちの世界に現れてしまうのかな 雪が降

          夜のひこうき雲(12)

          夜空のひこうき雲(11)

          朝早く、まだ空が白い時間 外に出た 少し遠くまで散歩した 車通りも、人もほぼ無く この道は自分だけのものみたい 段々と陽が昇っていく 植えられた街路樹が目を擦って起きてきた 朝日に照らされた枯葉がキラキラと光っている 小鳥たちが番いで飛び回っている ねぇ。君。 こっちの世界も棄てたもんじゃないよ よく見れば、美しいものがまだまだあるよ そういえば、君の大好きなアニメが劇場版で映画化されてるよ 君が珍しく「作者に会いたい」といった作品だよ 「なんだよ。ずるいなぁ」って悔

          夜空のひこうき雲(11)

          夜空のひこうき雲(10)

          君に愛を注げていたかな 君は私の愛を感じてくれていたのかな こんな聞き方も こたえを君に委ねている。ズルいよね。 君はひとりで静かに逝ってしまった。 翌日には跡形もなく消えていて、今ではもう何もなかったかのよう。 近所の人で、君がいなくなったことを知っているのはごくわずか。 私は愛を選択して生きていこうと心がけている 君に常に愛をもって接していたつもり でも、君には君の感じ方があるから、この思いは私の一方的なものである可能性は否めない 愛とはなんだろう 愛は不条理で完璧

          夜空のひこうき雲(10)

          夜空のひこうき雲(9)

          この前、散骨に行ったよ 綺麗な白い粉が舞ってキラキラ光ってた 少しづつ、君が違う世界で生きる自立を助けていかなくちゃね せっかく、この世界の肉体を棄て、自由になれたのに 私がいつまでも、縛っていてはいけないね 私と君は親子だ これは紛れもない事実で 触れ合う事も、笑い合う事もできなくなってしまったけれど でも、確かに存在しあっていた この手紙がいつか そっちの世界に生きる君に届けばと願い 書き続けたいと思う

          夜空のひこうき雲(9)

          夜空のひこうき雲(8)

          ネコが好きで 生まれ変わったらなりたいものがネコで 「吾輩は猫である」のネコのように死にたいと 言っていた 別れの2ヶ月前 突然「誕生日プレゼント何がいい?」ってメールくれた 今までそんなのなかったし、 何より、私の誕生日とは全然ちがう日だった 君はあの時、何か感じていたのかもしれないね クリスマスのプレゼントみたいに枕元に置きたかったんだけど失敗しちゃった と、はにかんだ顔 虫の知らせならぬ ネコの知らせだったのか

          夜空のひこうき雲(8)

          夜空のひこうき雲(7)

          君の大切な 覚悟と勇気をそんなことに使うんじゃないと ずっと、そう思っていた 最初で最後の 君の覚悟と勇気 私を信じてくれていたからだと だから、あの時に使ったんだと そう、思っていいよね そう思えたら、 あの時の君の覚悟と勇気を讃えられる

          夜空のひこうき雲(7)

          夜空のひこうき雲(6)

          君がいなくなってから、なんどか思ったことがある 子供がほしいと 君に会えるんだと、そう願って、望んで、また妊娠できれば、まだ年齢も大丈夫だし、もう一度子育てを、君を育てるんだと、もう一度会いたいんだと、出来なかったことを、後悔したことを、全部、次の子には必ず、 って、そう思ってた。でも、君は君の人生を全うしたから。肉体をもった人生をやり遂げたんだ。もう一度も、次もないんだよね。 改めて、そんな君に会えた事を感謝するよ。奇跡だったんだ。何もかもが特別でいて素晴らしかった

          夜空のひこうき雲(6)

          夜空のひこうき雲(5)

          朝晩かなり冷え込んで、秋を飛ばして冬がやってきたような そんな日々だよ 思い返せば、大きくなってからは風邪をひいたり、熱を出したりしなかったね。赤ん坊の頃は気管支炎から中耳炎になったりして、よく病院に連れて行ってたよ よく、二人で紅葉を見に、お寺や神社に行っては茶席を楽しんだね 小さい頃から何故か点てたお薄が飲めて、周りの人に驚かれてたっけ 最後の泡が吸えなくて、苦労してたね。 お饅頭よりも干菓子の方が好きだったね。 おじいちゃんと一緒に居るのかと思ってたよ 何かと渋いも

          夜空のひこうき雲(5)

          夜空のひこうき雲(4)

          本好きの君が 何年も読み続けていた本をもう一度手に入れたよ 君が読んでいた本は、一緒にそっちへいってもらったから いつになったら開くかな 読みたい気持ちと 不安な気持ちと 小さな単行本を目の前にして何もできないでいる おかしいよね まだ、君の選択に、君の死に向き合えていないってことかな ねえ、髪切ったんだ。 髪色も変えたんだ。 気づいてくれるかな。生きていた時はどんな髪型しても気づいてくれなかったけど いつも無理矢理褒め言葉言わせてたね きっと、私がどんな髪型しよう

          夜空のひこうき雲(4)

          夜空のひこうき雲(3)

          時々、とても不思議な感覚になる時があって、 本当は「いなかったんじゃなかったのかな」って 長い長い夢を見ていて 出産して、一緒に色んな経験をしたのは夢だったんじゃないかって そんな風に思ってしまう なぜだろう 君のことを知っているほんの一部の人しか 君がもう居なくなってしまったことを知っていて 他の大多数は君はまだ生きていると思っている。 ここでも、また不思議なのは、 まだ生きていると思っている人から 君の話題は出ないんだよ 君がまだ生きているのか、そうでないのかは現実とし

          夜空のひこうき雲(3)

          夜空のひこうき雲(2)

          近所の学校は運動会シーズン。 運動会 大嫌いだったね 大縄跳び大会も大嫌いだったね みんなで何かを作り上げることは好きだけど 失敗したことを責められるのを嫌ったね 嫌いな運動会の写真が遺影になってしまったよ 君がいないのは寂しい 突然、ふと泣けてくる。そんな衝動はだいぶん少なくなったよ。 君が選択したことだから。受け入れたいし、ちゃんと向き合って受け入れられるのは私しかいないと思っている。 親だから、とかじゃなくて、君の一番の理解者は私だけだから。 君の選択にたくさんの学

          夜空のひこうき雲(2)