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自由律俳句 #281

【破れた音を聞いたことがある】


ちょっと深めにしゃがんだら、
パンツの破れた音と感触がした。

ビリビリビリ

パンツのリア側ではなく、
フロント側の破れた音と感触。
まるでガムテープをちぎるような感じ。

あら!破れた?
それとなくトイレに行って確認する。

揺るぎないほどに破けている。
100人いたら100人が破けていると断言するでしょう。

でもしょうがない。
破けていてもどうすることもできない。
(ガムテープでも貼ってみる?なんつってー)

日中は破けたまま過ごすしかない。
破けていることに気付かれてはいけない。
(気付かれないから!)

私、パンツなんか破けていませんよー!
っていう風に立ち振る舞わなければいけない。

それ相応の演技力が求められる。
(求められてないから!)

そしてその日は、
破れていない役を完璧に演じ切って、
なんとか無事に仕事を終えた。

早く帰ろう。とりあえず帰ろう。

帰宅して、奥さんに伝えた。
「今日さー、しゃがんだらパンツ破れたさー、しかもフロント」

「あらー、守られてないのー?」
奥さんはのんびりと言った。

「うん、でも守られてるみたいに過ごしたから大丈夫だった」

私はパンツが破れた音を聞いたことがある。


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