この夏が最後になるなら

令和初の夏、終わりを迎えた君との関係性。

苛立ちを見せる2人。焦りにも似た感情。感情の使い方をコントロールできない2人。2人の思いが交わることはもうなかった。

都合の良い書き換え機能によって、記憶は良いように上書きされていく。

始まりは突然に。終わりもきっと必然に。

この夏が最後になるなら、約束なんてしなければ良かった。

この夏が最後になるなら、もはや夏なんてなくなれば良かった。

叶いもしない願いに、報われるはずだった2人の思い。

思い出はゴミ箱に。君への気持ちはどこかに置き去りに。

自分のことしか考えられなくなったから、もういっそのこと1人になりたかった。

いつからだろう?

君と向き合えなくなったのは。

いつからだろう?

君への思いがなおざりになったのは。

徐々に軋み出す2人の思いに少しずつ狂い出す歯車。

狂う歯車に気づかなかったのではなく、気づかないふりをあえてした。

見たくないものに蓋をして、見たいものだけ見るようにして、逃げていた。

恋は一瞬。愛は一生だなんて黙れよ。

儚くも散るのが人の恋路ってやつでしょうが。真実の愛って何だろうね?

真実の愛ってやつは人生何回目なら見つけられるの?

今思い返すと君は変わってなかった。変わってしまったのはきっと私だ。

ほんとうの意味では変われなかった。認めたくなかった。

私の強がりはやがてナイフに変わってしまっていたんだよ。

小さな傷が徐々に広がり、取り返しのつかない事態に。

虚しくも恋は散り、愛は途方もない場所へと彷徨う運命。

「空虚」

大きく空いた心の穴、1人では塞がりません、虚しくも。

「乙女の純潔」

コスモスの花言葉、咲かずに散っていく、虚しくも。

春が去り、夏が来る。夏が過ぎて、秋が来る。

秋がやがて冬となる。セオリー通りの季節。暦通り進む時間。

人生はセオリー通りにいかない。

恋路も挑戦も同様に、セオリーはいとも簡単に崩れ去る。

全てを洗い流す雨。梅雨が終わるその頃に、洗い流し尽くした2人の思い。

傘が機能を果たさないぐらいには、強い雨が全てを洗い流してしまった。

いつもは気にならない自販機の明かりが今日だけはやけに眩しかった。

眩しい光に、露呈していく2人の闇。まるで2人とは対極にいるみたいだった。

どんどん露呈していく闇。抱えきれない感情に下ろしたくなった大きな荷物。

届けよ、思い。届けよ、願い。

「もうこれ以上行き場のない感情は一体どこに向ければいい?」

なんて言ったところで、結末はもはや変わりしないから、最初からなかったことにしておきたいというのが本音。

「言葉じゃ誰も救えないよ。」

適当な言葉を並べて、淡い期待を抱かせなきゃ良かった。

君に送ったメッセージを全部取り消したかった。

「嘘をほんとうに」

嘘は嘘のままに、ほら吹きのまま終わってしまった。

取り消し機能があれば、リセットボタンがあれば、優しさが全部じゃないと知っていれば、人生にもしもがあれば、今ここで使ったのかな?

「大丈夫だよ」

君の大丈夫はいつも強がりだった。弱みを見せれない君。君の大丈夫になりたかった。

1人残された部屋に残る君のタバコ。

君を思い出したくて一度吸ってみたけど、やっぱり不味かった。思った通りの味だった。

「これが恋の苦味かぁ」だなんて意味もない悟りを開く。

この夏が最後になるなら。

そっと1人思い出に浸る最後の夏。

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