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かけがえのない1日を丁寧に生きることの大切さは全部「アバウトタイム」が教えてくれた

いつかの過去を思い出して、あのときああしていれば、もう一度やり直せるならなんてありもしないもしもを考えてしまう人は多いだろう。もう2度と過去には戻れやしないのに、過去にばかり目を向けて、過去の思い出をずっと思い出している。2度と戻らない過去を思い出してしまうあの現象を、誰かが勝手に「後悔」と名付けた。

過去に後悔を馳せるたびに、観たいと思ってしまう映画がある。その映画の名前は「アバウトタイム」だ。本作は主人公のティムが、過去の過ちを正すために、なんども過去に戻る物語だ。過去に戻るタイムリープという設定は最近話題の「東京リベンジャーズ」と同じである。過去に戻りたいという願いは実現不可だから、物語にその願いを込めているのかもしれない。

誰もが過去に戻りたいと願っているし、僕にもやり直したい過去がいくつかある。でも、残念ながらティムのように、過去に戻って後悔した出来事をやり直すことはできない。

※本記事はネタバレを含みます。

ある日、主人公のティムが父親から「私達一族の男はある力を持っている。タイムトラベルする力」と告げられた。もしこの言葉をいきなり言われたとしても、信じる人間なんてほとんどいないだろう。ティムも僕たちと同じように、最初は父親の言葉を信じなかった。そして、ティムは父親の言葉を半信半疑のまま、「もし過去に戻れるなら」と淡い期待を抱いて、クローゼットの中に入った。やり直したい過去を念じると、そこはかつて後悔したあの時間だった。

まずは恋人を作ろうと、シャーロットという女性にアプローチを掛ける。なんどアプローチをしても恋人にならないシャーロット。過去に戻る力は万物だけれど、偉大な力があったとしても、愛は手に入らない。愛を手に入れられるかどうかは、タイミング、フィーリング、ハプニングの3つのingが全て揃ったときだ。そして、人生には手に入れられないものがある。そんな当たり前の事実に、ティムは気づくのであった。

そして、次に弁護士になるために過去に戻ったティムは、とあるバーでメアリーという女性に出会う。2人はすっかり意気投合し、お互いの連絡先を交換し合った。家に帰ると、俳優が芝居の台詞を覚えず、最悪の舞台をお見せしてしまったと嘆くハリーの姿があった。

友人の芝居を成功させるために過去に戻るティム。友情とは素晴らしいもので、俳優に台詞を覚えてもらうために彼は奮起し、見事に舞台は大成功。でも、なにかを得るためにはなにかを失う。それが人生のセオリーだ。誰もがその運命から逃れられずにいる。そう運命の出会いを果たしたはずのメアリーとの出会いが、なかったことになってしまっていたのだ。

運命の出会いを失ったティムはある日、ケイトモスの広告を目にする。彼女との会話のやりとりの中で、ケイトモスが好きという情報を手に入れていたティムはケイトモスの写真展へと毎日足を運んでいた。努力の甲斐もあって、メアリーと出会うことに成功したが、なんと彼女には恋人がいたのであった。そして、メアリーと恋人が出会う前の過去にタイムリープし、2人の出会いを阻止する。なんて横暴なやつなんだろうか。元恋人からするとたまったもんじゃない。欲しいものを手に入れたいと願ったときの執念の凄まじさをそこに感じた。

2人の出会いを阻止したティムは晴れて、メアリーとお付き合いすることに成功した。ティムはときには無駄だと思える時間を過ごす時間も必要だと学んだと同時に、過去に戻り効率よく恋人を手に入れるずる賢さを学んだ。

交際を順調に進める2人。時間が経つにつれて、どんどん膨らんでいく愛情。愛を育み、幸せな時間を過ごしていた2人はポージーという子どもを設ける。過去に戻り、手に入れたいものをどんどん手に入れていくティム。2人の幸せそうな瞬間を見るたびに、過去に戻りたいと願う人も多かったはずだ。過去に戻れば公開をなくせる。それは事実だ。そんなときにティムの妹キット・カットが飲酒運転の事故を巻き込まれたという悪い知らせがやってきた。

ティムは再び過去に戻り、事故をなかったことにする。現実に戻り、愛娘であるポージーの異変に気付く。なんとポージーの顔がちがうのだ。なぜ顔がちがうのか。父にその疑問をぶつけると、「子どもが生まれる前に戻ると、別の精子が受精される」と言った。どの精子が受精するかなんて運次第で、精子が変われば遺伝子の情報は書き換わる。ティムは今回のタイムトラベルで、なにかを変えれば、なにかが変わると学んだ。

そして、物語は父親との物語へと突入する。幸せな家庭を築いている2人、その幸せな物語とは別のところで、ティムの父親が癌に犯されるのであった。父親が癌に犯された原因はタバコ。父親がタバコを吸う前に戻れば、癌は防げる。でも、それはポージーが生まれるはるか前の過去なのだ。ティムがもし過去を変えてしまえば、ティムや妹が生まれないかもしれない。そうしてティムの父親は癌で亡くなってしまった。

不幸に襲われるティム。そんな中でメアリーは子を設けたいとティムに相談をした。過去に戻ればいつでも父親に会える。でも、子どもができれば、過去を変えることになって、新しく生まれる子どもには会えないかもしれない。そうして、ティムは父親のいる過去に戻り、2人で卓球をした。父の好きな卓球。それを楽しむ父の姿を見て、涙するティム。そんなティムの姿を見て、ティムと同様過去に戻れる父親は自分が死んでしまったことを悟る。そして、2人で過去に戻り、2人で幸せなひとときを過ごす。

これが本当に最後。2人が幸せに過ごすあの時間は寂しくて、あたたかくて、それでいてすこしだけ儚なかった。最後の親子の時間を過ごしたティムは、過去を胸にしまい、メアリーの子どもを作りたいという提案を受け入れる。

現代に戻る前に、父親が「1日を過ごしたら過去に戻って同じ1日をもう一度過ごしてみなさい。そうすればきっと1度目は気づけなかった素晴らしいことに気づける」とティムに話した。現代に戻ったティムは1日を過ごし、過去に戻って同じ1日を過ごす日々を繰り返していた。タイムリープの繰り返しの中で、毎日の大切さを学び、感謝の気持ちを知り、1日1日を丁寧に幸せを噛み締めることの大切さを知った。次第に過去に戻らなくなって、目の前に起きた出来事をちゃんと噛み締めるようになった。

ティムは物語の終盤には「僕はもう過去には戻っていない。昨日にさえも。僕は毎日を生きている。まるでその日をやり直した時のように楽しんでいる。とんでもなくありふれた人生の今日が最後の日」と言った。

本作はラブストーリーだと言われがちだけれど、テーマは「人生」だ。物語が進むに連れて、目の前の出来事をきちんと味わうことの大切さに気づくことができる。何気ない日常の中に、幸せがきちんとある。そして、幸せに気づける者と気づけない者がいることも事実だ。幸せに気づけないよりも、気づける者のほうが、幸福を多く感じられるのであろう。たった1回の人生だ。ぜひとも幸福だと思える瞬間を少しでも多く味わいたい。

「2回目のチャンスはないと思って人生を生きる」

『アバウトタイム』のように過去に戻ってやり直すことは誰もできない。いつかタイムマシーンができるのかもしれない。でもその「いつか」はやってこないかもしれないから、たった1回の人生を懸命に生きた方が自分のためになるだろう。たった1回の人生をどのようにして生きるかは個人の自由だけれど、過ぎ去った時間は2度と戻ってこないという点は万物共通だ。だからこそ、過去に戻って大切なものに気づいたティムのように毎日を丁寧に生きたい。たとえ後悔することがあろうとも、それすらも人生だと胸を張って言えるようなそんな生き方をしていよう。

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