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道化師

人間は最後ににおいを忘れるだなんて、顔も声も温もりも君の癖もまだ全部覚えているから、においを忘れるのは一体いつになるんだろう。忘れた頃にくるLINE。都合のいい女だと理解しつつも、都合のいい返事しかできない。

見返りばかり求めても、仕返しばかりが返ってくる。好きと嫌いの狭間を行ったり来たりして、顔を見るたびに好きに戻る。人のいない駅前でキスをしながら腰に手を回して、君の温もりに触れて、別れた瞬間に正気に戻る。

君を好きな理由ならいくらでも見つかるのに、君が私を好きな理由はいくら探しても見つからないから君がずっと主導権を握り続けている。既読無視、未読無視、そんなのどうでも良かったけど、君の本心だけがただ知りたかった午前5時。

もう会えないかもしれないけど、淡い希望を抱いて「またね」としか言えなくて、期待しないフリをして、傷つかない予防線を張り続けている。これで最後なんても、言われても聞こえないふりをして、また電話をかけるのがオチ。

顔も声も温もりもにおいも照れた時に頭をかく癖もまだ全部覚えてるから、私は今日も都合のいい女に成り下がって、道化師になって踊り続ける。

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