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優等生のふりをして生きるのは楽だった

親や先生の言うことを聞き、言われた通りに生きる優等生を演じる。

言われた通りに生きることで、従順だとか真面目だとかいろいろな言葉で揶揄されたこともあったけど、誰にも怒られることなく、生きるのは楽なことだった。

そう僕が優等生を演じていたのは、他人の言う通りに生きることで、他人からの評価を上げ、じぶんが生きやすい環境を作り上げたかったからである。

夏休みの宿題は夏休みが始まって、日記以外は1週間ほどですべて終わらせていた。忘れ物もほとんどしないし、忘れたとしても、普段の行いを見てくれているから、周りの人よりも怒られることはない。みんなが嫌がることを率先して行い、じぶんの好感度を上げる。日頃から先生の好感度を上げておくことの大切さを、周りが怒られている時との温度差で知った。

「相手を傷つけてはいけない」って言われていたから、なるべく優しく接する。「優しい人だね」って、親や先生に言われた通りのことをしただけの話だから、嬉しくもなんともなかった。友達も割といて、学校生活を送るのにはなんの支障もなかったような気がする。でも、それは上部だけの付き合いで、卒業してからは連絡はおろか生存しているかの情報すらも知らない人がほとんどだ。

相手にしっかりと体を向け、相手の目を見て、しっかりと返事をする。でも、実際は話を聞いているふりをしているだけで、話の半分も聞いちゃいない。それでも「あいつはちゃんと話を聞いくれるやつ」だと評価されるから、学校生活では優等生のふりをした方がお得なことが多かった。

頭が良かったのかはわからないけど、聞き分けは幾分か良かったと思う。すべては「じぶんが楽に生きる「に繋げるための伏線で、そこに介在するじぶんの意思なんてものはない。楽に生きれたらそれで十分だ。それ以上はなにも求めない。

ある日、授業で学ぶのではなく、教科書を読んで、じぶんで学んだ方が効率が良いと気づいた。その日から先生の授業は、聞いているふりをして、まるで聞いていない。でも、授業内容は理解しているから、先生が問題を出したときは、率先して「はい」と大きな声で手を上げる。問題を答えれば答えるほど先生からの評価も上がるし、周りからも「あいつは頭が良い」という印象を付けられる。こんな簡単なことはない。

テストの点数も優秀で、学年の上から数えた方が早いぐらいの位置に常にいた。寝ている子にノートを見せることもあったし、深夜のファミレスで、夜な夜な勉強を教えることもあった。テスト中に友人にカンニングさせてあげたこともあったし、テスト前は勉強するのではなく、周りの友人の勉強を教えることの方が多かった。そして、周りの友人に勉強を教えることで、じぶんの理解度を深め、周りの好感度も上げる。教えれば教えるほど、理解度と好感度が比例して向上していく。楽に生きることができる場所の確保の完了の鐘が鳴った。

優等生を演じることは楽な生き方だった。そして、大学生までは親から敷かれたレールに順調に乗っていた。学校の先生もじぶんが学校の先生になると確信していたことだろう。成績優秀、言われたことをしっかり遂行する従順さ。優等生の生き方を演じ続ければ、おそらくある程度の立ち位置を確保できただろう。でも、そんなじぶんを好きになれないじぶんもいた。だから、大学生になってからは親の言うことを聞かないダメなやつになった。誰が見ても優等生だったじぶんが。レールから脱線するだなんて誰にも想像できなかったことだろう。

小学校の先生になると息巻いて入った教育学部で、入学式の日に先生になることを諦めた。生まれて最初の親への反抗である。そして、小学校の先生にならず、ベンチャー企業に就職した。わずか2ヶ月で転職し、バーの運営のために独立し、今では文章を書いて生計を立てている。学校の先生になって、家族を作り、優雅ではないけど、安定した暮らしを手に入れるが親の願いだったと思う。

でも、親の理想とは逆のいつ死んでしまうかわからないサバイバル合戦を今は生きている。毎月の給料も変動するから、目の前のことに全力を注がなければならない。会社という後ろ盾がなく、じぶんの名前で生きる行為は、神経も擦り切れそうになるときもあるが、その分じぶんの力で生きているという実感がある。

親や先生の言うことを聞かない人生は、ぜんぶ自分で決めることができるからとても楽しい。でも、その分責任が伴い、じぶんの行いはぜんぶじぶんに返ってくる。優等生のふりをして生きた経験があるから、今はこうしてじぶんの頭で考えることの大切さを理解できている。

優等生のふりをして生きる行為は、楽しくはないけど楽だった。学校でうまく生きるには立派な生存戦略だったと思う。とはいえ、今も同じことをやりたいかと問われれば、必ず「NO」を叩きつける。人は変わる。これは確信である。

他人の言うことを無視しまくったじぶんはもう優等生ではないのかもしれないけど、今の方が生きていると言う実感は強い。だから、じぶんの選択に後悔するのではなく、正解にするために今後も生きていたい。

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