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もう君なんて必要ないよ

ずっと一緒だと思っていた恋は、いとも簡単に壊れてしまった。大切だと思うものほど、いつも簡単に壊れてしまう。もっと繊細に扱えば、壊れなかったのかもしれないけれど、終わってしまった過去にはもはや未練すらないってのが本音だ。

仲睦まじい恋やもう無理かもしれないと思っていた恋も、やがて終わりを迎える。それが満足いく結果だろうがなかろうが、終わりを迎える運命には誰も抗えないし、終わってしまった恋は修復すらできない。誰もが恋を終わらせないように尽力し、誰もが終わった恋に一縷の寂しさを抱える。

「俺たちずっと一緒にいような」

「うん、ずっと一緒だよ」

君がいつも定番のように言っていた「ずっと一緒」って言葉。あの言葉が事実であれば、どれだけ嬉しかっただろうか。お別れを選ぶあの瞬間までは、君の言葉を信じていたなんて、君に言ってもどうせ君は信じないに決まっている。

「ずっと一緒」なんて言葉はただの幻でしかなかったし、言葉はやはり行動には勝てないのだろう。行動の伴わない言葉は無力で、その人自身の信頼も損なわれる。自分が損をするだけなのに、男ってやつは守れない約束ばかりしてくるから本当に厄介だ。

人はなぜ守れもしない約束ばかりするのだろうか。守れない約束なんてしなければいいのに。約束をすることで、未来の2人に安心を与えたいのだろうか。でも約束を交わしたときは、約束をどうやって果たすかを懸命に考えていたのだろう。

未来永劫続くと思っていた幸せは、いつの間にか歯車が1つ、また1つと噛み合わなくなった。それに伴い2人で交わした約束は、空を泳ぐようになってしまった。人生なんてこんなはずじゃないの連続だし、その現実を受け入れられずに生きている人ばかりだ。

約束は約束を持ちかけてきた人が、それを守るために尽力する必要がある。でも、約束を守りたいと思えなくなった原因は、私にもあるにちがいない。約束を現実にするためには、お互いの協力が必須で、どんな別れにもどちらか片一方だけが悪いというわけではない。2人に原因があって、2人がその原因に最後まで気づけなかったため、この関係性は破綻してしまった。ただそれだけの話である。

別れすなわち約束が破られた原因を冷静に振り返ると、思い当たる節がありすぎて、どれが根本的な原因なのかがわからない。とはいえ別れの決定打はなく、些細な出来事の積み重ねが別れに繋がったんだろう。

過去に戻りたいと思っても戻れないし、やり直そうと思ったときにはもう2人の関係はすでに破綻していた。だから、関係修復は早いに越したことはない。噛み合わなくなった歯車を、2人で噛み合うように歩み寄る。普段から言いたいことを言い合い、ダメなことはダメと言い合う。お互いに改善を繰り返し、絆を強固なものにする。そうやって愛は少しずつ真実の愛へと変貌を遂げる。

ぽっかり空いた大きな穴を埋め合うだけの愛では、その穴は塞がらないし、また別の大きな穴をを作ってしまうだけだ。相手のすべてを手に入れたいと願うようになり、その独占欲が2人を崩壊の道へと導く。軌道修正は不可。そこにあるのは絶望で、終わってしまったあとに、失った人を大切だったと気づき、憂い、悲しみ、取り戻したいと躍起になるのだろう。

君を失ってからなにも手につかなくなった。生活は雑になり、洗濯物は3回分も部屋に散らかったまま。ご飯も外食ばかりで、友人が心配して、家にご飯を食べにおいでと招いてくれる。寝るだけの部屋には生活感のかけらもすらない。行き届かない掃除に、願いが届くことのない下書きに残されたメッセージ。

また深夜にいきなり電話をかけてくれるんじゃないかと、震えもしないiPhoneをずっと握りしめる日々。iPhoneが光るたびに期待して、君からの連絡じゃないと知るたびにひどく落ち込む。やっぱり君からの連絡はないし、かといってこちらから連絡をする勇気もない。家に帰っても「おかえり」と微笑む君はもういないし、「ただいま」と君に手を振る私はもう過去の話。

戻りたいけれど、戻れない。でも本音は戻りたくない。だって映画の続編が本編を超えるケースは稀だし、終わってしまった2人が過去以上になるなんて想像もできないそんな自分がいる。だから戻ったところで、きっと関係を修復できないまままた終わってしまうのがオチだ。

君と過ごしていた時間が空いてしまったから、空き時間を仕事に費やす日々。仕事をしている時間はなにも考えなくていいから楽だ。暇はやはり悪だ。忙しいほうが現実と向き合わなくていいし、仮初めの充実感を運んでくれる。

「仕事が恋人なんですか」って後輩に茶化されるたびに、「そうなんだよね」って平静を保つふりをしながら、ずっと無理をしていた。きっと君なら私が無理をしているときの顔を、一発で見抜いてしまうんだろう。「無理しなくていいよ」っていつものように微笑みかけて、強張っている私の顔をいとも簡単に緩ませる。

「なんでそんなに私のことがわかるの?」って疑問に思ってしまうほど、私を理解していた君。そんな君が守れない約束だけを残して、私の元を去った。あなただけが悪いんじゃなくて、私も悪いと理解しているけれど、君の「ずっと一緒」って言葉を盲目的に信じていたかった。

金曜日の深夜に行ったコンビニ。お目当ての揚げ物がすべて売り切れで、拗ねる私に「アイス買ってあげるから我慢しなよ」となだめる君。揚げ物なんてなくたって、アイスなんてなくなって、君がいればただそれだけで十分だったあの日々。土曜日に家で観た映画。映画のラストシーンみたいには、上手くいかなかった2人。日曜日のお別れをするあの時間が嫌いだったのに、いまでは仕事がはじまる前の日曜日の夜を好きになっている。

大好きだった君とお別れをしてもう少しで3年の月日が経つ。もう君の顔も仕草もにおいもあまり覚えていない。この事実は君が私の人生には必要ないという証拠なんだろうか。またどこかでやり直す機会があったとしても、やり直したいとは思えないし、そんなドラマチックな展開はもう2人が望んでいない。

もう君なんて必要がない。

そう思うと君とお別れしてから苦しんだあの時間はなんだったんだろうと思ってしまう。君の喪失に苦しんだ結果、君の思い出はどんどん綺麗になっていった。過去は美化されるのに、そこに感情はなくなり、いつしかいい経験だったと言える日がやってくるのだろう。失恋は時間が解決するもので、時間をかけて自分で乗り越えていくものだ。

私には君が必要ないし、君にも私が必要ない。もうそれでいいし、そのほうがきっと2人のためになるんだろう。だから、さようなら。かつて愛して人。そして、ありがとう。もう会うことはない私には必要のない君。

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