見出し画像

赤信号

誰かに会いたくなって1人で行った深夜のコンビニ。綺麗に陳列された商品。取り残されたお惣菜。「余り物は辛いね」なんて言って、今の僕と同じ状態の惣菜に激しく同情しているたった1人の男がいた。

「揚げ物は10分かかります」

深夜のコンビニは揚げ物がない。揚げ物は揚げてから数時間で捨てなければならないルールがある。深夜はお客さんの数が少ないため、廃棄を減らすために、在庫を置いていない場合が多い。そして、揚げ物を揚げる油も深夜のうちに清掃することで、お昼の混雑時などニーズのある時間に応えているのだ。揚げ物のために流石に10分も待てないから、欲しいものを早々に諦める。欲しいものをすぐに諦めるのが僕の悪い癖だ。

たまらず消去法で、発泡酒とポテチだけ購入する。ポテチは関西だししょうゆかうすしおで迷うことがあるが、今回は迷うことなく、関西だししょうゆにした。そして、買い物を終え、1人帰路に着く。家に着いてテレビを点ける。砂嵐しか流れないテレビ。そうだ、彼女と喧嘩したときに、カッとなってテレビにものを投げてしまったのだ。壊れてしまったものは元には戻せない。発泡酒を片手に、テレビに同情していた僕。お前を壊したのは僕だ。本当にごめんな。そして、今までありがとな。

誰かの共感が欲しかった。別れた原因を誰に話しても、「お前が悪い」の一点張り。俺が悪いのなんて知ってるよ。でも、誰かの共感が欲しかった。そして、終わってしまった恋を浄化して、前に進みたかった。

願わくば、僕が壊した2人の関係を元に戻したかった。砂時計を元に戻しても、時間は思うようには戻らない。君はもう見知らぬ男の腕の中にいるから、君が僕へ抱く感情はもうひっくり返らない。でも、別れてすぐに次の男にお蔵を変えるなんて、君も悪い女だよ。

信号はいきなり青から赤へ。黄色を飛ばして急に赤を迎える。突然のさようなら。前置きなんてなにひとつとしてなかった。思い当たる節はあるけど、それが別れの原因だったとは到底思えない。

人の脳は都合の良いことばかり覚えて、都合の悪いことはすぐに消去してしまう。ねえ、君はいつも自分の都合にいいように解釈するよね。僕のことなんかいなかったことにするんだろ。全部なかったことにするんだろ。そうやって都合の良いことばかり記憶しておくんだろ。

ひとつの恋が報われなかった原因を、君のせいにしてしまうのが僕の悪い癖だよ。

ありがとうございます٩( 'ω' )و活動資金に充てさせて頂きます!あなたに良いことがありますように!