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夢百夜(12) ハンチングの男と高校。車椅子の少女について。
(けさみたとれたての夢のはなし 3分でよめます)
どんよりとした雲のした、ハンチングをかぶったメガネの男性とあるいている。
ここは彼の故郷。
延々と先までつづいていく野原。
そしてそれに沿って流れる小川。
彼となごやかに談笑しながら歩いていく。
右手には彼の出身の高校がみえる。
その高校にはいると、なかはとても天井が高く、まるでホテルのロビーのよう。
ハンチングの彼が笑いながらなにか話しているが、内容は聞き取れない。
この高校でじぶんが優秀だった、みたいな話をしているようにみえる。
なかにいる高校生もきちんと制服をきている。みんなお行儀がいい。
その建物の三階にいく。
そこには喫煙所のようなスペースがあり、そこでぼくはしずかにして待つことに。
なにを待ってる?よくわからない。
そしてもうハンチングの彼もみあたらない。
ぼくはその学校の学生だったのだろうか。
授業がはじまるのを待っている。
ぼくが座っているところに空いている椅子は三つ。
そこに高校生男子数名がさわぎながらやってきた。
高校生特有のテストステロンの…なにか虫っぽいにおいが部屋にひろがる。
ぼくが待つクラスはとても人気のようで、廊下ではたくさんの人がその授業を待っている。
高校生の男の子から、おじいさんまで。
待っている人の年齢層は幅広い。
みんなの待っているクラスがいつ、どの部屋ではじまるのか、きちんと決まってないらしい。
廊下に待っている人たちのなかで、こっちの部屋ではじまるんじゃないかと誰かが動きだす。
するとまわりにいた人たちもつられてその部屋に移動する。
しばらくすると戻ってくる。
そんなふうに、廊下待ちをしている人たちはひとつの生命体のように、クラスがはじまりそうな部屋めがけて伸縮をくりかえしていた。
ぼくは直感的にひとつの部屋が気になった。
そこに目当ての先生がいる気がしたのだ。
まだ誰も、そのことには気づいてないらしい。
ぼくはその部屋の扉をそっとあけた。
扉のむこうの部屋は和風なつくりの一軒家につながっていた。
そこには車椅子にのった少女がひとり、ぽつんといた。
彼女がみんな探していた先生だ。高校生くらいだろうか。
車椅子にのった少女の先生は、玄関にいた。
すでに授業ははじまっている。生徒は僕ひとり。
僕は先生の行動をだまって観察していた。
先生も車椅子にのったまま微動だにしない。
すると、玄関の地面から銀色のバーが二本、ゆっくり音をたてずに伸びてきた。
銀色の二本のバーは、先生がのる車椅子をゆっくりともちあげた。
そして家の廊下の高さまで車椅子をもちあげ、先生は家のなかに入ることができた。
先生は車椅子をくるっと玄関側に向きなおし、僕をみた。
「このバーは車椅子が玄関に段差のある和風の建物に出入りするときにつかうの」
「このバーはとても軽くて、持ち運びもとても楽なの」
「これはわたしが開発したものなの」
そう、僕に、おだやかにゆっくりした口調で説明してくれた。
ひととおり説明したあと、先生は無言で車椅子の向きを家のなかに向けた。
そして廊下の闇のなかに車椅子を走らせていく。
僕がたつ玄関から少女の先生はみえなくなってしまった。
僕はこのまま先生を追いかけるべきだろうか。
それとも外で待つみんなを呼んできたほうがいいのか。
玄関の外をみてみると、そこは屋外の景色。
最初にハンチングの彼と歩いていたのどかな野原の景色だ。
いつの間にか僕は高校を出てしまったようだ。
これじゃあ、みんなを呼びにいけない。
でもここ、どこなんだろう。
そんなことを思いながら、僕は玄関でポツンとひとり立っていた。
きょうの作品
学生時代に兄の書棚にあった作品。
マンガだけど風流がある。
でもときどき表現がエグい。
なんて思い出しながらみてます。
やっぱりエグい。病的なレベルにも感じられるけど。
エグさもグロさも愛もうつくしさも動も静も。
混沌としながら作品に息づいてる。
そこがいちばんの見どころ。
アマゾンのプライム会員なら無料でみれます。
原作はもっと、こう、なまめかしい。
うちの子ノエルにちゅ〜るをあげます。