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映画『流浪の月』をみる


☆☆☆☆★
※ネタバレ注意

プライムビデオでみれました。

とても良かったです。

ふたりの主人公の交錯を丁寧に、美しく描かれていました。

2時間30分と長いが、長さを感じさせない作りで一気にみ終えました。

久しぶりにじんわりといい作品をみれた満足感。


それぞれの重荷を背負った大学生と小学生が偶然出会い

それぞれが「誘拐犯」と「被害者の女児」となった15年後、またふたりは再会する。

そんな感じで物語は進んでいく。


結論からいうとふたりはお互いを補える特別な人だった。

でもなんかこう、出会いからここまでエクストリームに展開する必要、あったのかって。

ストーリーにのめりこみながらモヤモヤしました。

大学生の男性も冷静で知的な感じだから、もうちょっと、たとえば第一に児童相談所に相談するとか、

専門家をふまえて女児をサポートするとか、

何らかの形で男性もサポートに参加するとか、できなかったのか。とか。

一方的に匿ってしまったら間違いなく犯罪になるわけで、結果的には彼女のサポートも中途半端になっちゃう。

そのあたり、大学生の男性は考えられなかったのか。とか。


原作を読んでないので、ディテールが省略されているからかも。

原作読みたくなりましたよ。



男性が抱えているコンプレックスって、同性目線として、そんなに深刻なのか…?となって、「それわかるわー」にはならなかった。


ちょうど今読んでいる橘玲氏の作品で、人間は狩猟時代からアップデートされていない本能があって、それは

「生殖すること」「生存すること」

の二つだと。

この二つが脅かされると本能レベルで動揺してしまう。


主人公の男性が抱えているものって、まさに生殖に関わることで、他人が思う以上に深刻で、異性とも良好な関係が築けない。

ここらへんもコンプレックスを仕事とか趣味とか芸術とかに昇華できたらいいんですけどね。


最後に気になったのは、主人公の男性が異性と良好な関係を築けないコンプレックスがあるのは、わかる。

そこから偶然出会った小学生の女児に、恋愛感情を抱けるものなのか。

物語では、ロリコン→じつはロリコンじゃなかった→でも二人で暮らしていたときドキッとした、

って描写がありましたよね、女の子の口についたケチャップをみて。

そこらへん、もうなんだかわからなくなってきた。

この作品はあたらしい関係を描いている、ってことなのか。


主人公の女性の婚約者の変化がよい。

外ヅラいいけど内面は未成熟。暴力で女性をコントロールする癖があり、彼も愛情を乞うひとり。

ダメ加減が人間くさい。カッコ悪くてジタバタして自傷して。

でも最終的に執着の対象の彼女を手放す。

救急車に運ばれながら婚約者が彼女の手を離すシーンに救いを感じました。

攻撃的になって、暴れて、悲観して、のたうち回って、最終的に受けいれるプロセス。

『死ぬ瞬間』の著者キューブラーロス博士の「死の受容の五段階」ぽい。



一方で、すげえなって思ったのが、ラストのシーンで主人公の男性が女性に自分のコンプレックスをさらけ出すところ。

この状態で、彼のこれまで抱えてきた痛みや重荷を、女性は受容して受け止める。

すげえなって思いました。

同性からみても、それがどれくらいのものなのか、少なくとも自分は理解できないと思う。

受けいれるポーズはできるけど、理解できないと思うんですよね。

更紗、すごいなと。





プライムビデオでみれます。観終えたあと原作が気になっちゃう作品ですね。


レッテルで判断されて社会から阻害されるふたり。『オアシス』の二人にも重なりました。こちらもプライムビデオでみれます。いまのうちに。


『死ぬ瞬間』の著者による自叙伝。


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