映画『ブラックホークダウン』 原作よむと解像度が爆上がりすぎる
具体から抽象へ
映画版が好きで何度も観てます。
しばらくアマプラ対象外だったのでDVDを購入しました。
監督はリドリー・スコット氏。
ブレードランナー!
ブラックレイン!最近またアマプラ解禁中です。
グラディエーター!!!
ラッセル・クロウ氏演じるマキシマスがどこにいってもヒーローすぎる。
さてブラックホークダウン。
この作品、登場人物が多すぎる。
さらにメインは戦闘シーン。
みんな戦闘服。顔も汚れて俳優の見分けがつきづらい。
それほど戦闘シーンがリアル。
戦闘時に計画が狂ったとき、どれほど現場が混乱するかが描かれてます。
最近知ったのがジャック・ライアンの原作者トム・クランシーって「元祖ハイテク軍事ホラー」って呼ばれていること。
『ブラックホークダウン』も極限の戦闘ホラーといえます。
映画→原作を読むと、映像の前後のプロセスや各シーンの詳細、セリフひとつとっても、作品の解像度が爆上がりする。
ちょっと前にこちらの作品をみました。
その後原作を少し読んだんだけど、冒頭のシーンから映像では気づかなかった描写が描かれている。主人公が最初に乗っていた列車の足元には体力がもたなかった兵士が横たわっていた、とか。
原作の方が情報量がとてつもなく多い。でもイメージがしづらい。
その点、映画はディテールを一瞬で把握する必要があったりするけど、全体像が把握しやすい。
『ブラックホークダウン』もひょんなことからハヤカワ文庫で原作があるって知って上下巻を購入。
映画版でもたくさんの登場人物が出てくるんだけど、一人一人のエピソードがわんさか書かれている。
映画版のその背景まで知ることができる。
それにしてもこの原作、出版社のコメントに
と書かれているんだけど、まさにそんな感じ。
銃撃戦が始まると延々と市街地の影からソマリア民兵が出てきてはAKをぶっ放してくる。
またRPGというロケットもどかどか打ち込んでくる。
戦争ノンフィクションって慣れてなくて、かなり新感覚。
米兵の心理
登場人物。多すぎるし名前が横文字なので覚えられない。
翻訳作品ってよく扉に登場人物一覧ってある。
あれ煩わしいって思ってたけど、この作品に関しては登場人物一覧を載せてほしかった。
作中でソマリアに送り込まれたレンジャーとデルタ。それぞれ精鋭部隊。
とくにデルタはエキスパート。
映画では夜間の活躍が痺れるくらいに格好いいし、寝ずの救出劇を繰り広げた後、カレーをかきこんで次の作戦に向かう姿は惚れます。
登場人物のエピソードの中で、多くの若者(兵士の多くは20代前後)は退屈な日常から脱却したくて軍隊に入っている。
訓練のシーンなんかはいろんな火器をぶっ放したり手榴弾を投げたり、悪ガキが悪ノリしている雰囲気。
就寝前に過去の戦争時の活躍を描いた小説を読んで、俺もこうなりたいって憧れたり。
あと自分が兵士であることと、中世の騎士というイメージを重ねたり。
そういった兵士の内面が描かれていて、これは映画だけだとわからなかった。
あと、国として。
先進国同士ならお互いの妥協点を探って、争わずに問題を解決ができる。が、未開の国に対しては暴力こそ正義。
相手は殴らないとわからない。
徹底して攻撃することによって相手にわからせる。
そういうスタンスが描かれていて、先の大戦についてもこういった考え方だったんだろうなと。
戦争という混沌
この作品。
武力において圧倒的に有利の米軍だったんだけど、ブラックホークというヘリがソマリア民兵に撃ち落とされることによって戦況が一変。泥沼化する様子がメインのテーマ。
上巻の184pに「戦争の霧」について書かれていて、これはいかに周到な計画を練っていても、撃ち合いが始まれば混乱状態に陥ることを指している。
これが本当に怖い。
もともと1時間で終わるはずだった作戦。
が、まさかのブラックホークダウン。
現場が大混乱。
「水よりも大事な無線からの情報」が混乱に混乱を重ねて、ハンヴィー特殊輸送車両が延々とソマリア民兵が潜伏している市街をぐるぐると走らされる。
『ダークナイト』でジョーカーが、悪人一人が死んでも誰も驚かないが、首相が突然死ぬとみんな大慌てする、みたいな台詞があってまさにそれ。
このシーン。2:20あたり。
予想外のことが起こっての大混乱。
ダークホーク撃破で大混乱を狙うって、じつはソマリア側が意図的に計画していたということも原作ではじめて知りました。
空き巣なうって本があって。
こちら、高齢者宅が連続して狙われている昨今、必読の本。
空き巣元プロの著者が語る犯行時のエピソードの数々。
この本を読むと、万一空き巣と遭ってしまったら原則は抵抗しないが鉄則ってなる。
なぜなら空き巣もリスクを考えると真っ当に仕事をした方がいいって十分わかってる。でもやめられない理由の一つは、犯行時のスリル。
著者は仲間との犯行時のエピソードを、まるで居酒屋で偶然隣になったおじさんのように、ときには可笑しく、ときにはしんみりと語っている。
が、犯行の手口は行き当たりばったりだし、予定が狂って家主が在宅しているものなら「殺しちまうか?!」って話になるし(作中では未遂)、女性がいるものなら襲いかねない。
とにかく、異常なテンション。手を出さない方がいい。何をされるかわかったもんじゃない。
ブラックホークダウンの中でも原則は市民は撃たない。こちらから撃たない。撃たれたら撃ち返す。市民が銃を手にしたら撃つ。
でも「戦争の霧」状態の戦場で、そんなこと言ってられない。
街中の民兵たちから一斉攻撃されていて、誰が敵なのかわかったもんじゃない。
逃げる子供を撃つ。女性も撃つ。
こういった米国側としては不都合な点に関してもちゃんと描写されている。
極限のなかで兵士たちは何を感じ考えどう行動して生き残るか。
そういった手に汗握る緊迫感溢れるノンフィクションのアクションを堪能することができる。
そしてアメリカそして米兵って普段は何を考えているのかって描写が興味深い。
これはいいって映像作品をみつけたら原作を読んで世界観を掘り下げていくって、解像度がグンと上がるのが体感できてゾクゾクすっぞ。