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ロシアと中国:脱ドルのパートナーシップ(Atlantic Council)

Atlantic Council | Russia and China: Partners in Dedollarization
By Mrugank Bhusari and Maia Nikoladze

Russia and China: Partners in Dedollarization

上図のように、ロシアが中国に輸出する際の決済通貨に占めるドルの割合が、急激に減少してます。

今回紹介する記事は国際間決済におけるロシアの脱ドル(Dedollarization)の動きについてです。ロシアがなぜ脱ドルに至ったのか、そして現状と未来。脱ドルに対するロシアと中国の微妙なスタンスの違いについても、記事では触れられています。

ロシア脱ドルの背景

そもそも、ロシアがいきなり「そろそろドル依存から脱却するぞ」と言い出したわけではなく、今話題のウクライナにおいて、2014年にロシアがクリミアを併合したことに端を発しています。

「この併合を受けて欧米がロシアに制裁を行い、ロシア国営企業や銀行が欧米市場で資金調達する能力が制限されました。そのため、ロシアにとってドルからの脱却が優先課題として浮上した」という背景が記事中で触れられています。

こうして見ていると、バイデン政権のロシア制裁もロシア銀行全てが対象ではないですし、そもそも貿易でのドル決済比率が急激に下がっており、代わりにユーロによる決済の比率を上げているので、欧州からの制裁の方がロシアにとっては嫌なはずです。

一方、中国も脱ドルの流れに乗った理由は?

選挙期間中から中国との貿易不均衡を問題として取り上げていたトランプが大統領に就任すると、対中貿易赤字削減に乗り出します。しかし、米中では覚書や協議書レベルでの合意にしか至らず、2018年に米国が追加関税措置(=高い関税の上乗せ)を発動。この流れの中から「中国もロシアの脱ドルの取り組みに価値を見出すようになった」と記事にあります。

ロシアと中国、不平等なパートナーシップ

「2020年のロシアの対中輸出のうち、23%だけがドル建ての決済だったが、中国の対ロ輸出は依然として60%がドル建ての決済」という不均衡が紹介されています。

今回(2022年)のロシアのウクライナ侵攻でも、制裁対象として話題のSWIFT(国際銀行間通信協会)ですが、ロシアは以前(2014年)にも、クリミア侵攻時にアメリカからSWIFTから切り離すと脅されたため、SWIFTに代わる国際間送金システムSPFS(ロシア語:Система передачи финансовых сообщений)を開発しています。

このロシアの取り組みに関して「中国政府は完全にはコミットしていない」と記事にはあります。

脱ドルしても苦しいロシア

脱ドルしても、現状のように今度はユーロの比率が高くなり、EUからの制裁に対して脆弱になります。

それでは人民元やロシアのルーブルを国際間決済に使うかと言えば「通貨の取引シェアにおいて、米ドル(40.5%)、ユーロ(36.7%)、英ポンド(5.89%)に対して中国人民(2.7%)という低さ。ロシア・ルーブルに至っては、たったの(0.21%)」という話が記事にあるように、人民元ならまだしも、ルーブルを決済通貨として用いるのは非現実的です。

ちなみに円は2.5%で、19年12月の3.46%から比較すると相対的な地位が低下しています。逆に人民元は今は2.7%ですが、2020年1月は1.65%だったことを考えると、これからまだまだ比率が伸びる気がします。人民元は主に欧州で使用されており、欧州の取引を除くと世界6位になり、日本円やカナダドルを下回ってます

そしてこれから

「ロシアと中国が取引を計画している中で、米国と欧州の連携がこれまで以上に重要。大西洋を越えた協調が継続できれば、(決済通貨を)ドルからユーロへシフトしても(ロシアが)得られる利益は限定される。最大の目的である ”制裁に強い” 自国経済を築くのは困難である」

「ロシアと中国は、貿易におけるドル比率の切り下げでは、何とか協力している。しかし、両者の目的のずれが、さらなるドル切り下げを遅らせる可能性がある。ロシアは貿易と金融取引の脱ドルに向けた新たな取り組みを積極的に進めているが、中国はその両方において消極的である。中国の対ロ輸出の5分の3は依然としてドル建てであり、中国の銀行もSPFSへの参加を急いでいないことから、中国がロシアの脱ドル政策にどこまで追随できるかは未知数である。」

記事はこのように締めくくっています。記事の内容を全て紹介できてないので、より詳しい内容を読みたい方は是非、元記事をご覧になってください

【龍成メモ】
決済通貨を人民元にするという手もありますが、中国に首根っこを掴まれるのはドル依存よりもさらに危険な可能性があるので、ロシアとしては出口が見えない脱ドルの取り組みな気がします。

表紙はMaria_Domninaさんの写真です。

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