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主音上のV 一歩進んだ和声学 Part 45

今回は主音上のV諸和音についてを紹介していきます。
バスがI音(主音)の際にV諸和音が置かれる場合があります。これらは転位の結果生じた偶成和音の一種ではあります。実際にこの和音が使われた際にどのような働きをしているのかを見ていこうと思います。

1 主音上のV

バスにおける主音(I音)の上に、V7の和音(根音省略形含む)、(〇)V9の和音高温省略形が置かれる場合があります。

これらを
主音上のV7の和音
主音上のV7の和音根音省略形
主音上の(〇)V9の和音根音省略形

と呼びます。
表記の仕方は以下の通りです。

5声体では(〇)V9の和音も使用可能です。

これらの和音は転位を含むIの和音です。  

                                                                             

主音上のVは和音交替点に置かれ、後続和音はIの和音となります。
これらをまとめて以下のように表します。

これらの和音は一つにまとめて、T和音として扱います。

主音上のVにある限定進行音はそれぞれ所定の限定進行を行います。

2つの定位Iの間に主音上のVが挿入される場合もあります。

実際に使用されている例をご紹介します。

モーツァルト ピアノソナタK545 第2楽章より
ラフマニノフ 交響曲第2番 第3楽章より

古典派においては多楽章作品の緩徐楽章で用いられることが多いです。ハイドンモーツァルトの作品ではよく出てきますので、探してみてください。

V諸和音→主音上のVの進行においては、限定進行音の置き換えが可能です。

2 転位音を含むソプラノ課題

さて、転位音についてを色々と紹介していきましたが、ここで転位音を含むソプラノ課題を実施していこうと思います。

例題はこちらです。和音交替は拍点でのみ現れ、拍点外交替はないものとします。

調はハ短調(Cマイナー)です。

転位音を含むソプラノ課題では、どれが定位音でどれが転位音かを判別する必要があります。どれが転位音かを分けたものが以下のようになります。青い丸で囲った部分が転位音です。

転位音の判別が終わった後は転位音を還元して、単純な形にした後に和音の設定をします。今回は以下のように和音を設定してみました。

転位音を還元

これを基に内声を設定します。

ソプラノを元に戻します。

ここで禁則が破られていないかどうかを確認します。
ここでは2つの問題が発生してしまいました。

倚音・掛留音の下にその同種定位音を置くことはバス以外はなるべく避けなければいけません。禁止されていないので間違えではないですが、綺麗なラインを作るためにこれを修正します。修正したものが以下のものになります。

一部和音を変更して正しいラインへと変更しました。
転位音を含むソプラノ課題では、還元したときと転位音を含むときで和声の禁則を破っていないかを確認しなくてはいけません。手間のかかる作業ですが、根気よく課題を実施しましょう。また和音の設定はカデンツさえ無視しなければ自由に置けますので、同じソプラノ課題でも全く違う和音を置くことで様々なパターンを生み出すことができます。色々なパターンを探してみてください。

3 終わりに

まだまだ転位音に関しては紹介するものがあるので、しばらく続きます。時々転位音を含むソプラノ課題を挟みながら続けていこうかなと思います。

よければ他の記事もご覧ください。

また作曲、編成もしています。

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