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V調のVの和音 一歩進んだ和声学 Part 20

今回はV調のVの和音というものを学んでいきます。これは借用和音の一種で、V調のVの和音を一時的に借りてくるものです。ポピュラー音楽ではセカンダリードミナントとして知られているものですが、和声学ではどのような機能を持っているのでしょうか。早速見ていきましょう。

1 各音度調

ある調において、Iの和音以外の各音度3和音(定位音度からなる)をそれぞれIの和音としてもつ調を、その調の各音度調といいます。

ある調の各音度調に対して、その調自体をI調と呼びます。

それぞれを
IIの3和音をIの和音としてもつ調をII調
IIIの3和音をIの和音としてもつ調をIII調



VIIの3和音をIの和音としてもつ調をVII調

といいます。

ハ長調の場合は
II調→ニ短調(Dマイナー)
III調→ホ短調(Eマイナー)
IV調→ヘ長調(Fメジャー)
V調→ト長調(Gメジャー)
VI調→イ短調(Aマイナー)

となります。
長調においてはVIIの3和音は減3和音となるので、VII調は存在しません。

ハ短調の場合は
III調→変ホ長調(E♭メジャー)
IV調→ヘ短調(Fマイナー)
V調→ト短調(Gマイナー)
VI調→変イ長調(A♭メジャー)
VII調→変ロ長調(B♭メジャー)

となります。
短調においてはIIの3和音は減3和音となるので、II調は存在しません。

2 V調のVの和音の借用

ある調において、そのV調からV諸和音を一時的に借用することがあります。(例えばI調がハ長調なら、V調であるト長調のV諸和音を借用する)
これを以下のように示します。

ここでは文字でこの和音群を表す場合はvVの和音と表記することにします。

vVの和音群はS(サブドミナント)和音に属し、後続和音はV諸和音に進みます。

vVの和音群は
vVの和音
vV7の和音
vV7の和音根音省略形
vV9の和音
vV9の和音根音省略形

のいずれかの形で用いられます。

これらの和音は一部の音が変位したものであり、
長調・短調ともにIV音が常に上方変位(↑IV)しています。
短調においてはVI音も上方変位(↑VI)しています。


また長調においてはV調の〇V9の和音、〇V9の和音根音省略形を借用することができます。この際、III音が常に下方変位(↓III)しています。

3 第9音の配置制限

vV9の和音において
第9音は根音の9度以上、上に置かなくてはいけません。

長調のvV9の和音、vV9の和音根音省略形において
第9音は第3音の7度以上、上に置かなくてはいけません。ただし第9音が予備されているならこの限りではありません。

4 vV諸和音の連結

さきほど述べた通り、vV諸和音はV諸和音に進行します。

vV諸和音→Vの和音の連結の際に
vVの和音の第3音は限定進行音で2度上行します。

・vV7の和音の第3音、第7音は限定進行音で、第3音は2度上行、第7音は2度下行します。

・vV9の和音の第3音、第7音、第9音は限定進行音で、第3音は2度上行、第7音、第9音は2度下行します。

vV諸和音→V7、V9和音の連結の際に

vVの和音、vV7の和音、vV9の和音の第3音は2度上行せず、増1度下行します。第7音、第9音に関しては2度下行します。

これは半音階的関係をなす2音(↑IV→IV)を同一の声部に置く必要があるからです。

ただし
・vVの和音、vV7の和音、vV9の和音→V7の和音第3転回形
・vVの和音、vV7の和音、vV9の和音それぞれの第1転回形→V7の和音

においては対斜が生じてしまいますが、これは許されます。

また前者の場合、低音2度の予備がありませんがこれは許されます。

vV諸和音→I2_V(7)の和音の連結の際に
・第3音は2度上行
・第7音は保留
・第9音は保留、または増1度上行(↓III→III)

します。

5 先行和音→vV諸和音の連結

先行和音はIの和音、VIの和音、II(7)の和音、IVの和音のいずれかが使えます。

この際、両和音に半音階的関係をなす2音が含まれる場合は、同一声部で増1度関係に連結します。

またvV諸和音は固有和音ではないので、準固有和音→vV諸和音という進行は可能です。

対斜が許される場合は、後続和音、すなわちvV諸和音が減7の和音の時のみ許されます。

II7の和音→vV諸和音の連結の際は
・先行和音のII7の和音の第7音は保留されます。

先行和音からvV9の和音第9音高位への連結における外声間の並達9度は
・IVの和音第1転回形→vV9の和音の連結において、ソプラノが2度下行して第9音に到達する際にのみ許され、その他は使えません。

先行和音からvV9の和音根音省略形第2低音位第9音高位への連結の際
外声間に生じる並達5度は許されます。

短調のIの和音、VIの和音→vV7の和音、vV9の和音(根音省略形を含む)の連結の際に
内声(アルト、テノール)に限りIII→↑IVの増2度進行が許されます。
ただし↑IVが後続和音でVに進むことが条件です。

長調において、外声がIII→↑IVの上行をした場合は、後続和音でVに進まなければいけません。

内声でIII→↑IVの上行が行われた場合は、Vに進む必要はありません。

6 終わりに

いったんここで一区切りとします。
次回はさらに細かくvV諸和音を掘り下げていきます。

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