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初心者のための作曲家紹介シリーズ No.9 ブラームス

ヨハネス・ブラームス(1833~1897)。ドイツロマン派の代表的な作曲家。ワーグナー(1813~1883)など当時は急進的な作風の作曲家も現れた中、彼は古典的な作風を貫き通した。完璧主義であった彼は何度も作品を放棄したことも多かったが、遺された作品は傑作が多い。そんな彼の代表作を見ていきましょう。

交響曲第1番ハ短調op68

ブラームス最初の交響曲で、完成までに約21年の歳月を費やした大作です。この時ブラームス43歳でした。交響曲デビューとしては遅めでしょう。

なぜこうなったのかというと、彼はベートーヴェン(1770~1827)の存在を畏れており彼の遺した9つの交響曲に非常にプレッシャーを感じていました。そんなプレッシャーと闘いながら生まれたこの作品は指揮者であるハンス・フォン・ビューロー(1830~1894)から「ベートーヴェンの第10交響曲だ」と絶賛され今日でもオーケストラのレパートリーとなっています。

ハンス・フォン・ビューロー


交響曲第4番ホ短調op98

ブラームスの最後の交響曲です。第1番の完成以降、第2番以降は長い年月をかけることなく完成させることができています。この作品の特徴としては第4楽章にバロック時代の形式であるパッサカリア(シャコンヌ)が採用されていることです。

これは低音の反復音型のもと、自由に変奏していく形式です。なので低音部の旋律がずっと同じのまま曲が進行していくことです。

またこの作品は第3楽章にスケルツォ的音楽が初めて配置され(他の交響曲は間奏曲風の楽章となっています)、暗→明、いわゆる短調で始まり長調で締めくくる作品も多くなってきたなか、この作品は短調ではじまり短調で終わる構成を取っています。

今回は第1番、第4番をピックアップしましたが他の交響曲もよい作品なのでぜひ聞いてみてください。
第3交響曲の第3楽章は聞いたことがある方も多いでしょう。


ピアノ協奏曲第1番ニ短調op15
ピアノ協奏曲第2番変ロ長調op83

ブラームスはピアノ協奏曲を2作品遺しており、青年期に作られた第1番、全盛期に作られた第2番があります。

第1番は全3楽章構成ですが、演奏時間は約50分かかる大作です。当時はピアノ助奏付きの交響曲との評価もありましたが、現在ではよく演奏される作品の一つです。

第2番はスケルツォが導入された全4楽章構成であり、ピアノ協奏曲として4楽章構成はなかなか珍しいものでした。第1番とはうってかわり比較的に明るい曲層が目立ちます。

両者に言えることですが、ブラームス自身もピアニストであったので、技術的には難しい場面が多く、特にブラームス特有のトリルが特徴的です。

ブラームスのトリル


ヴァイオリン協奏曲ニ長調op77

3大ヴァイオリン協奏曲の一つです。第3楽章は重音奏法が多用されており演奏至難です。初演から大絶賛され今日でもよく演奏される作品の一つとなっています。

ヴァイオリンが響きやすいニ長調を選択し、ヴァイオリンの特性をいかんなく発揮できる作品となっています。

ハンガリー舞曲集

元々はピアノ連弾用の作品として書かれた作品群で、のちオーケストラ編曲が施されています。ブラームス自身が編曲したのは1、3、10番のみで、他は他者による編曲です。編曲者によって楽器の特性を考慮して調が変更されている場合があります。

この作品はブラームスのオリジナル作品ではなく、あくまで編曲としたものと位置づけられているので作品番号は付けられていません。第5番がとくに有名でしょう。

パガニーニの主題による変奏曲op35

イタリアのヴァイオリニスト、作曲家のニコロ・パガニーニ(1782~1840)24の奇想曲第24番の主題を用いた変奏曲です。

パガニーニ

第1部、第2部構成で練習曲として構成されていたこともあり演奏は至難。


ドイツ・レクイエムop45

もともとレクイエムというのはラテン語で書かれた祈祷文のもと、死者の安息を神に願う典礼音楽です。この作品は演奏会用作品として書かれており、歌詞もドイツ語で書かれた旧約聖書と新約聖書からブラームス自らが抜粋したものです。

クラリネット五重奏曲ロ短調op115

ブラームスはヴァイオリンとチェロための二重協奏曲イ短調op102を書き終えた後はピアノ曲、歌曲、室内楽曲の作曲に専念しました。この作品はその時期に書かれた晩年の傑作です。クラリネット五重奏曲自体そこまで多く遺されておらず、名作となったこの作品はクラリネット奏者にとって重要なレパートリーとなっています。

編成は弦楽四重奏とクラリネットであり、ロ短調で始まりロ短調で終わる作品で、仄暗い哀愁をもった旋律が散りばめられています。終始落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

いかがでしたでしょうか?
これを機会にブラームスの作品に触れていただけたら幸いです。


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