見出し画像

借用和音を含むカデンツ 一歩進んだ和声学 Part 35

今回は借用和音が用いられた際に、その借用和音がT、S、Dのどの機能にあたいするのかを紹介していきたいと思います。


1 借用和音の役割

とある内部調の固有和音が主調へと所属転換され借用和音となったとき、その借用和音は内部調における役割を失い、主調における役割へと変化します。例えば、所属していた内部調ではD和音だったものが、借用和音になるにあたり主調におけるT和音へと変化する、といった感じです。

上の例では借用和音となったiiVの和音はもともとII調(ニ短調)におけるD和音として機能していました。これが主調の和音の一部となったことで、D和音からT和音へと機能が変化します。

さて、借用和音がT、S、Dのどの機能に変化するのかは、その借用和音の根音が関係しています。まとめると

T和音グループ
根音がI、III、VI
S和音グループ
根音がII、IV
D和音グループ
根音がIII、V、VII

となります。

先ほどの例ではiiVの和音は根音がVIなのでT和音に変化します。
すでに紹介したvVの和音(セカンダリードミナント)では根音がIIであるので、S和音となります。

2 副V・準副Vの機能

借用和音の中でも多く使用されるのが副V・準副Vの和音です。これは既に学習した(〇)vVの和音をはじめとする、(〇)iiVの和音、(〇)iiiVの和音、(〇)ivVの和音、(〇)viVの和音、(〇)viiVの和音です。

これらは
T和音グループ
(〇)iiVの和音、(〇)ivVの和音
S和音グループ
(〇)vVの和音、(〇)viiVの和音
D和音グループ
(〇)iiiVの和音

に分類されます。

(〇)viVの和音に関しては
後続和音が主調の(〇)IVだった場合はT和音
後続和音が主調の(〇)VIだった場合はD和音

に分類されます。

ここでは(〇)iiVの和音、(〇)ivVの和音、(〇)viVの和音を用いたカデンツを見ていきたいと思います。

(i) (〇)iiVの和音

では例を見てみましょう。

(〇)iiVの和音はT和音で後続和音はIIの和音(第1転回形も含む)です。

(ii) (〇)ivVの和音

ivVの和音は長調においては3和音の形では使われません。これはIの和音と一致してしまうからです。〇ivVの和音は3和音、7の和音ともivVと一致するので、9の和音のみ準副Vとして扱います。

(iii) (〇)viVの和音

(〇)viVの和音がTとして扱われるのは、主に長調においてです。

Dとして扱われるときは長調、短調共に使われます。
ただ、短調においては3和音の形態だとIIIの和音と一致するので、3和音以外の形態で使われます。

3 +Iの和音

短調において、+I調のIの和音が単独で借用される場合があります。これを+Iの和音といいます。

曲の締めくくりの和音として用いられる場合が多いです。

例としてバッハのフーガト短調の最後の部分の和声を見てみましょう。


※わかりやすいように一部音価を変更しています。
曲の締めに+Iの和音を使用しています。
このような終わり方をピカルディ終止といいます。

4 終わりに

次回も借用和音の続きを紹介していきます。

よければ他の記事もご覧ください。

また作曲もしています。

合せてご覧いただけたら幸いです。
またスキ、コメント等非常に励みになりますので、よかったと思った方ぜひお願いいたします。

皆様の応援の力が励みになります。コンテンツの充実化に努めてまいりますのでよろしくお願いいたします。