見出し画像

酒造りの不思議な感覚

どうもこんばんは、胃が不調のりょーさけです。
本日休肝日です。

自分ルールで酒を飲んでない日は酒の感想を交えた記事は書かないことにしています。些細なところでもライブ感は大切だと思っています。幼稚なこだわりがどこかで思いがけないものを運んできてくれないかなあと願う、私のあまり多くないゲン担ぎのうちの一つです。

(ということは酒の味について多少なりとも触れている日は多少なりとも飲んでいるわけです。来週健康診断だけどこれでいいのだろうか。人生二度目の飲酒ドクターストップが来てしまうのではないかと危惧しながら炭酸水をすする今であります。)

さて、ということでたまには仕事について書いてみたいと思います。
私は根本的に仕事に熱心でないと思うので大したことはかけません。

根本的に熱心ではなくても、浅瀬で頑張って泳いでますのでサボっているわけではありません。ここ重要。哲学をかじったことによる悪しき副作用だと思います。半端に理屈っぽくなると世の中で大切だと言われている価値観に疑問を持ちたくなるようです。半端にですよ。極めるとまた違って世界が見えてきて面白い気がしますが…まあそこに立ち入ると本題に入れずいつまで経っても森の入口で立ち止まってしまうので立入禁止で行きます。

世に数多仕事はあれど酒造りや発酵系の仕事はひとに不思議な感覚をもたらすのではないかと思ってます。

どういうことが不思議かと言うと、やっているうちに微生物と自分たちの能動受動の関係がごっちゃになってくる点が不思議なのです。

どういうことかと説明しますと、酒造りや味噌作りなどのお仕事は当然ながら自然に生息する(か、研究施設で純粋培養された)菌の力で素材、または素材の一部を我々ホモサピにとって有利な形にかえるのがメイン作業なわけです。

で、私のような下っ端蔵人は日夜諸々の品温が適正値になって少しでも順調に発酵が進むようにアレコレしてます。失敗が多いけど笑

で、やってるとですね。
はじめは菌を「自分たちが管理している」というような意識で行動するのですね。
流石は食物連鎖の上側。偉そう。その上側の中では下側のくせに!偉そうに!

でもまあ日々肉体労働も多いのでそういう感じになるんです。特に私のような鈍感な人間はそうなるのですヨ!

ところがですね。
私も一応この仕事について数年経ちましたので、ちょっと最近は変化してきたんです。なんというか心持ちがね。

日々のスケジュールの一例を取り出してどういうことかを説明しましょう。

7時に温度を測る。
9時に温度を見る。
10時半に調整。

みたいな感じで他の作業をしつつ特定の温度を管理してるわけですが…。

昼飯前に確認。
午後イチで…。
おやつの時間前に…。
…???

あれこれどうみても僕のほうが行動を管理されてません?!

そう、ここなのです。
はじめは自分が能動的に働きかけて何事かを起こそうとしていたのですが、気がつくと超わがままなぼっちゃんにつきっきりのメイドさんの如く懇切丁寧(で、ありたい)に麹様のご機嫌を取らせて頂いてるではありませんか。

そう、そうなのです。酒をつくる人々は酒をつくっているのではありません。つくってるつもりでつくらされているのです。中には「いや、コントロールしているんだよ」と断言する人もいるかも知れない。それは言い方の問題でしょうと言ってくる人もいるかも知れない。

ですが、今現在の私の心境としてはそうです。
どう考えてもこれは「動かしている」のではなくて「動かされている」のであり、「働かせている」のではなく「働くように働かされている」のであります。
日本酒は様々な仕込み方があります。
教科書的には同じだとくくられる仕込み方でも、細部を見ると酒屋ごとにぜんぜん違うことをしていたりします。

当然私はやったことはないですが、より凝った、手間のかかる仕込み方をしている蔵もたくさんあるわけで…。その中にはより菌たちにダイナミックに、アメイジングに働いていただかなければならないやり方もあるでしょう。

多分そういった方々は僕が述べたようなことをより一層深く感じて、更に菌たちに敬意を払って働かされているのではないかなあ。

そんなふうに思います。
気がつくとはじめについた職業はパン屋で次は酒屋。
全然理系的素養ゼロなのですが、なぜだかいーすとさんとかおりぜーさんとかがいつも身近にいます。

やってるようでやらされている。
でもやらされているようでやっているところもある。

この不思議な感覚はまだ芽生えたばかりなのですが、付き合っていくうちにもっと味わい深い感覚になっていくのではないかなあと思います。たとえ自分が現職を離れたとて日本酒を飲むのはやめないでしょう。飲みながらこの感覚のことを思い出し、その時奮闘していらっしゃる方々(と、菌?)のことを思ってまた一杯。

そんな風に年月を過ごしていきたいとぼんやり思う今日は、やや大きめの月が出ているようであります。関係ないけど風流ね。

この雑感も、種々の菌たちによって醸されたものなのだろうか。
カッカしやすい私ですが、大切な雑感を守るためにも長期低温発酵でいかせていただきたいものです…。

今日は炭酸水で乾杯。
明日もきっと酒がうまいね。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。