マガジンのカバー画像

詩的日本酒論考

10
酒の味及び酒レビューについて探求するマガジン。不透明
運営しているクリエイター

#酒詩

エクリュは彼方に連れてゆく、僕を

エクリュは彼方に連れてゆく、僕を

愛する人の手触りは

おれを極北へつれてゆく 遠くへ

名もなき極北へそれは つれてゆく

雨音の千分の一 雪が雪に沈む音すら

はっきりと聞こえるような集中をくれる

吐息が聞こえる中で

外部の気配すら微塵ももらさず伝えてくれる

自分がまるごと世界みたいな

気恥ずかしくなるあの感触をくれる

照れるな

愛する酒の手触りも

おれを極北へつれてゆく 遥か彼方へ

姿を見たことのない

文字

もっとみる
『詩的日本酒論考』#1

『詩的日本酒論考』#1

明けてゆく。

暗かった恵比寿の空が白んでゆく。さっきまで身体を覆っていた熱が消えてゆくのを感じる。たぶん街の風に溶けて、もうどこかへ運ばれてしまったのだろう。熱は消えたのだが、その代わりに腹の底にある思いが湧いてくる。身体を巡ってゆく。それが言葉になり、脳裏に浮かぶ。

「日本酒が、酒が見せてくれる世界の表現はもっと大きなものでいいはずだ。」この数か月間、自分の頭の中を占めていた疑問が氷解した瞬

もっとみる