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澪つくし倶楽部 「ベテラン車両に敬意をこめて」2022.01.01

年末の休日、年越しに向けての買い出しであれこれと奔走していた。ある日はクルマで、ある日は電車で。大阪市民にとっての足は、地下鉄である。もちろん、通勤の際にも乗車するけれど、やはり休日は心にゆとりがあるためか、様々なことに意識が向く。

御堂筋線で、天王寺→心斎橋、心斎橋→梅田、梅田→なんばと、かなり細々と乗車することがあったが、その全てで、10系(厳密にいうと10A系)に出くわした。(この記事のトップ画像を参照してほしい)

昭和51年(1976年)の運用開始以来、現役で運用されている大阪メトロの車両の中では、圧倒的な古株である。現在走っている編成は、同系列の中では最終期に製造・投入された(1989年)ものになるが、それでも既に30年超戦士となる。「厳密にいえば10A系」と先ほど書いていたが、本系列車は、内外装の更新や制御方式の変更など、長い年月の中で様々な手が加えられてきており、現在運用されているのは、内外装を更新され、チョッパ制御からIGBT素子VVVFインバータ制御に変更された「10A系」のみ。デビュー当時から原則そのままの未更新車やチョッパ制御のまま内外装更新がなされた、いわゆる「10系」たちは、2020年7月を以て完全に姿を消している。
10A系だって、厳密な数は把握していないが、残すところ数編成のはずだ。(注:2022年1月末時点で、残り3編成)にも関わらず、何も気にせず、一日3回乗車して、その3回ともそんな最古参車両に出くわしたわけである。

駅構内や各種設備のリニューアル等が目覚ましく、全体的に新しい雰囲気が似合う大阪メトロの中で、この古株車両は、長く親しんできた市営交通時代の「マルコ」ロゴから一新されたOsaka Metroの「M」ロゴが、どうにも似合っていないと感じるのは、僕だけだろうか。
車内に乗り込み、扉端に立つと荷物棚が最近の新型車と比べて低く、頭がぶつかって何とも不便だ。これまで定期的に張り替えられてきた座席シートも、30000系などの「快適で立派なシート」に比べるとなんともみすぼらしい感じが否めない。つまり、何も考えず乗れば、こいつはもはや「ハズレ車両」なのかもしれない。
しかし、一年のおわり大晦日の昼時、普段とは違う年末の用事のために移動をしている、多くもなく少なくもない、ほとんどが私服姿の乗客たちを乗せて走るこの古株車両は、妙に味わい深かった。
時代を感じる走行音や機器の動作音をさせながら、もう何十年も黙々と走り続けてきた10A系は、あと何回、大晦日の運用を経て、年を越すのだろう。
少しずつ話題も増えてきた大阪・関西万博が予定されている2025年、この古株車両は、現役車両や新型車両と肩を並べて走っているのだろうか。僕と一緒でこいつは、前回昭和45年(1970年)の大阪万博を知らないはずだ。大阪万博時から主力となった、今はなき30系や現状の大阪地下鉄の顔ともいえる新20系たちと違い、御堂筋線専用車両である10系だが、間違いなく長らく大阪のアーバンネットワークを支えた立役者だと思う。

ペタンとしたシートから立ち上がり、「プシュン」という空気音をさせながら開くドアから、ホームに降り立った。しばらくそこに留まり、僕は発車しトンネルへと消えて行くベテラン車両を見送った。
古く見栄えがせず、朝のラッシュ時に荷物棚が頭にぶつかってイラっとする時もあるけれど、もう少し一緒に走ろう。そして、ぜひ2022年の大晦日も、年越しの買い出しに行く僕を乗せてほしい。

ベテラン車両に敬意を込めて。

ちなみに、その直後、反対側ホームに入線してきた30000系(それもだいぶ新しめの第19編成)は、やはりピカピカでイケていた(笑)

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