見出し画像

生身の人間と属性観


罪を憎んで人を憎まず

なんて、こんなに当たり前に実践出来ない言葉は中々ないね。

半年くらい前に軍用機レーダー照射やらから激化してきて、日本人の心にも大きな溝を作ったように感じる韓日の関係。



画像1

これで700円しない破壊力




メディアの煽動ってのはやっぱりどうにも恐ろしい。テレビであれこれ語るコメンテーターや「戦争するしかない」なんて声高に叫ぶ政治家、切り取られた画像と会見の一部に反韓感情を昂ぶらせる市民、一体どれだけが、生身の人間として世界で会話をしてきたんだろう。


SNS始め、韓国叩きは中々のもんだ。
(もっとも、これは対日本でも同じだと思うけれど)

このまま過ごしていたら自分もそっち側に行ってしまいそうで、1週間前の丁度今日、ソウル行きの飛行機を取った。


画像2

景色のキレイなソウルのカフェ。



「生身の人間」

彼らはやっぱり普通の人間だ。当たり前だけど。

反韓を訴える人には残念に聞こえるかもしれないが、今回の4日間の旅中、反日を感じる瞬間はほとんど無かった。


①タクシー
韓国のタクシーは安い。日本の1/3-1/4くらいかな。
つい多用する自分に嫌気は差すが、旅行に行ったら金は沢山使うべきだと思うのでまぁいい。
タクシー運ちゃんは結構話しかけてくる。特にでっけぇリュックを背負ってると、「From?!」って脅してるのか?って感じで聞いてくる。
最初は恐る恐る答えるも、自分で何を恐れてるのかと少し恥ずかしくなる。
運ちゃんは特に英語が出来る訳でもない。
「そうか」と言って運転に戻る。
話しかけてきた4人の内2人は、拙い英語で「韓国の女の子はどうだ?」とか「韓国は良かったか?」などと話しかけてきた。
僕をタクシーに乗せてくれた何人かは、もしかすると日本が嫌いかもしれない。でも僕がそこにいることに嫌悪感は示さなかったように見えた。運ちゃん達も僕も、国以前に「生身の人間」だからなのか。タクシーという密空間で2人。人が本当に生身になる瞬間に、溝を感じなかったのは幸福だった。


②電車
とは言ったものの、電車にも結構乗った。
国民性という言葉自体あまり好きではないけれど、あえて言うなら、「道端」と「公共交通機関」には良く国民性が出るなと思う。
やっぱり最近は、日本人渡航者が少ないらしい。
僕も数えられる程しか日本語を聞かなかったし、その殆どは、政治にはあまり関心が無さそうな若い女の子だった。(知らないけど)
だからローカル電車でテグ植物園を訪れる物好きなんてあんまりいない。
植物園に向かう電車で、僕の横に、おばちゃんがドサッと腰掛けた。その時おばちゃんは僕の脱毛したての膝を掴んでバランスを取った。
なにやらハングルで「思わず掴んじゃったわよ、ごめんねぇ!」と笑いかけてきた。(多分そう言ってた)
多分おばちゃんは、僕が日本人だとは知らない。僕も、わざわざ言わなかった。
こういう大陸性というか、何となく馴れ馴れしい感じ(中年の方に多い)、嫌いじゃない。
ここで言いたいのは、僕が韓国人だと認識したから、彼女が陽気に話しかけた訳じゃない、ということ。
お互い「生身の人間」だったから、ただ笑顔を返すだけの僕に、何の疑念も持たなかったんだと思う。

パスポートとか国籍とか宗教とか、自身を集団に帰属させる事の出来る何かを感じる時、人は生身の人間から遠ざかる。ずっと生身で、一人でいるのは怖い。集団の中で自分を定義する方が楽だ。少なからず仲間がいる。ラベルがついた途端、弱いペットのようになって、首輪で繋がれたまま、犬小屋から吠える。飼い主を守るなんていう大義を掲げるフリをして、敷地内から敵を威嚇しては、決して自ら首輪を取って動こうとはしない。


③現地の若者
カウチサーフィンで現地の人、2人と話をした。
彼らはどちらも、決して日本を悪く言うことは無かった。とてもオブラートに包んで「歴史的な軋轢」については触れたが、目の前の日本人を不快にさせまいと気を遣っているのが分かった。

こういう時に英語が使えるのは素晴らしいなと思う。出会った2人とも英語話者で国際感覚自体は高かったし、何より「国籍」というラベル自体、生身の僕らの前では余りに無力だ。政府やメディアは国民の代弁者ではない。僕たちはやっぱり「生身の人間」だから、目の前に相手がいなきゃ分かり合えないこともある。

これは肝に命じなければいけない。


画像3

露店のおっちゃん



「目と指先の情報、国や集団のプロパガンダだけを鵜呑みにせず、自分で確かめる」

「ネット上の相手は生身の人間ではなく、犬である」

「外交や国」と「人」は似て非なる概念である


訪韓観光客が少なくなることこそ、もしかしたら経済制裁的な側面が強いかもしれない。


というか、「韓国がこんな悪いことしてるんだから、日本がこういう措置を取るのは当たり前だ!」
的な「目には目を歯には歯を」思想って、どうなんだっけ?日本人ってそういう教育受けてたっけ??
外交はそんな甘っちょろいもんじゃねーんだ!とか、怒られるのかな。


ちなみに、僕が最初に「韓日関係」って書いたのもおかしく見えたかな。
英語で主語を作る時は必ず「You and I」
年上の人と何処かに出向いても「誰々さんと私」

ちっちゃい理想と尊敬を並べて、「生身の人間」をもっと感じられるようになりたいな。


画像4


路地裏に昔ながらの良い汚さが残る弘大


画像5

大邱の植物園




おわり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?