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異世界への扉を開いた、新宿ゴールデン街。

新宿ゴールデン街。
闇市、青線を経て、現在はひっそりと立ち並ぶ飲み屋街になったが、
今もなおどこか昔のままのような雰囲気を残す。
いや、その昔を知らない僕は、これがまだグローバル化した世界ではなく、海を越えた向こうにある文化というものがほとんど入ってきていなかった戦後の日本だったのかもしれないという空想を、この場所に足を踏み入れた途端抱かざるおえなかった。

歩きながら店内を覗くと、同じ色のスーツを着たサラリーマンの二人組、奇抜なファッションをした一人の中年男性、また、女性が一人で飲みながらマスターと会話をしており、僕と同じような若者達が大騒ぎしていたりと、老若男女問わず様々な人間達の生きる姿がそこにはあった。

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道沿いにたくさんのお店が立ち並ぶ中、僕は階段を登り2階へ上がった。
そこには上京して一人暮らしを始める誰もが借りるであろうほどの広さに、壁一面に何万もの写真が展示されている空間があった。
椅子に座り、この雰囲気とは全くといっていいほど合わないジントニックを注文すると、とても優しそうに見えるが鋭くどこか野性的なものを感じる目を持ったマスターが「そのレンズものすごく大きいね。」と僕が首からぶら下げていたsony Planar T* FE 50mm F1.4 ZAを見て話しかけてくれた。
僕がそのレンズの説明を一通りすると、隣に座っていた男性二人も話しかけてくれて、そのままそこにいる全員で会話が始まった。 


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僕はその速さに驚いた。
椅子に座って飲み物を注文し、まだその飲み物が僕の目の前にない来ていない状態で、もうすでに会話が止まらない。
自己紹介が始まり、何が好きなのか、これからどんなことをやっていきたいのかのようなことをなぜか話すことになり、その話しを聞いた男性達からの失敗談を聞き、またそれは僕にとってとても深く考えさせられる体験談だった。
「実はポパイを見てここに来ました」と言うと、マスターはとても喜んでくれ、「ポパイを見たんだったらあのお店は絶対に今日行くべきよ」と、
道を挟んで向かい側にあるお店を紹介してもらった。
そのお店の扉には、「member only」と書いてあったが、マスターが一言話すとすんなりと中に入ることができた。

2つ目のお店は最初に行ったお店とは雰囲気がガラッと変わり、四半世紀を3回ほど生きた女性がやっている、シンプルでとても静かな空間だった。
ジントニックのジンの量がとても多かったのか、すでにお酒が体の隅々まで行き届いていた僕がビールを少しずつ飲んでいると、「2階もあるから、よかったら見てきてもいいよ。」とそのおばあちゃんが言った。
2階へ上がろうとすると、隣に座っていた男性がゴールデン街の歴史を話し始め、最後に「この話しを踏まえた上で2階に行ってきな。」と少し自慢げそうに言った。

このお店の2階では、あるプロのカメラマンの方がよく打ち合わせをするらしい。その影響なのか、そこにはたくさんの写真たちが飾られていた。
正直言うと、僕はそこにあった写真を理解することができなかったのだが、写真家というのは二つあって、万人に受け入れられる写真を撮る「商業カメラマン」と、番人には受け入れられないが、ある人たちにとってはものすごく心に響く写真を撮る「芸術カメラマン」がいて、その二つは同じ写真を撮っていながらにして全く別のものであり、またそこで生きるカメラマンは、全員カメラマンではあるが、全く違う世界で生きる人間達なのだということを学ぶことになった。


ゴールデン街から離れ、歌舞伎町を歩きながら僕は、「さっきまで俺はどこにいたのだろうか。」と思った。
ゴールデン街と歌舞伎町は徒歩2分ほどの距離なのだが、そこにあるもの、人、雰囲気の何もかもが違っていた。
ゴールデン街を経験するまでの僕の新宿というのは、
人間の様々な欲が入り交じり、その欲たちがそこにあるキラキラしていてとても綺麗なのだがどこか汚さを感じさせるたくさんの看板を映し出している歌舞伎町のような街のことを指していた。
でも新宿はもっと深い街だと知った。歴史があり文化があり、今までたくさんの人間の「生」を作ってきた街なのだ。
そしてこれはこの新宿に限った話しではない。
渋谷、六本木、上野、浅草。もっと言うと日本全国にある街、いや世界中にこれまで人間のストーリーを作ってきた街がある。
僕はそんな歴史や文化、そこにいる人間達の生きる姿を見てみたい。
そしてその異なる世界を高速で行き来し、その中心にいる自分という世界をしっかりと観察してみたいと思った。 

僕にはまだ知らない世界が星の数だけある。
その数えきれない異世界を知れば知るほど、悩み、苦しむかもしれないが、
それを僕は「広い視野を持つこと」だと思っている。
もしこの異世界への高速移動がたとえば、
ゴールデン街から紛争地帯、そしてサハラ砂漠に行き、その後インドの瞑想センターに行った後、アマゾンのジャングルの奥地へ。
そんな移動を数日かけてやってみたらどうだろうか。
間違いなく自分の中にある何かが変わるはずだ。
ゴールデン街から歌舞伎町に移動しただけでその世界の違いに驚かされた僕は、そんなことを自分の頭で想像するようになり、もしその想像が非現実的だと思う人がいるとするならば、僕は最後に一言言っておきたい。


その非現実的なことこそが、
新宿にひっそりとお店が立ち並ぶゴールデン街なのだ。

小林凌磨


こどじ
新宿区歌舞伎町1-1-9(花園一番街)2F

サーヤ
新宿区歌舞伎町1-1-8





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