ヘンゼルとグレーテルとギャル曽根

むかし、あるところに、貧しい一軒の家がありました。
あるとき、母親が言いました。
「もう、食べるものが何もないわ。この子どもたちを、森へ捨ててきましょう 」
翌日、ヘンゼルとグレーテルは、父親に連れられて、森の中に置き去りにされました。
森の奥深く、ヘンゼルとグレーテルは、さまよい続けていました。
「おにいちゃん、おなかがへって、もう歩けない」
「泣いていたって、しょうがないよ。さあ、がんばって、もう少しあるいてみよう」
すると、いつしか二人は家の前に出ました。
・・それは、おかしの家でした。
ビスケットの壁に、ケーキの屋根、煙突はキャンディ。
ふたりは、われを忘れて、おかしの家をたべてゆきます。
物陰では、ふたりが腹いっぱいになったら、声をかけようと、悪い魔女が待ち構えています。
「いずれ、二人を食べてやる。クッ、クッ。いまのうちに、菓子の家でも食べるがいいさ」
そこに、突如、ギャル曽根ちゃんが現れました。
「あら、おいしそう」
彼女は、そう言うや、お菓子の家を食べ始めました。
チョコレートのドア、あめの窓、ビスケットの壁、ケーキの屋根、片っ端からたべてゆきます。
あまりのことに、魔女はオロオロするばかり。
とうとう、ギャル曽根ちゃんは、家を全部食べてしまいました。
そうして、ヘンゼルとグレーテル、ギャル曽根ちゃんは、また森の奥深へと消えてゆきました。
魔女は、ひとり取り残されました。
ギャル曽根ちゃんのおかげで、ヘンゼルとグレーテルは、魔女に会わずにすみました。
3にんは、その後仲良く幸せにくらしましたとさ
(おしまい)


<続き>
魔女は考えました。
あの小娘は、何でも底なしに食っちまう。しかし、さすがに今度は食べられまいて。
ニヤリと笑うと、今度はそれは大きなお菓子の城を作りました。
ギャル曽根ちゃんがやってくるのを魔女は目を細めて木の影から眺めています。
まあ、美味しそう
彼女はそう言うや、自分の頭より大きなお菓子を手にとると一口で飲み込んでしまいました。
お菓子の城はあっという間に影すら消えてしまいました。
「恐ろしい女じゃ。奴こそ魔女よ」
魔女は深いため息をつくと、今度は札束の家を作り始めました。
札束の壁、黄金の扉、ルビーの呼び鈴。
部屋に入れば、エメラルドのテーブル、大理石の床、そしてその床には妖しい輝きを放つ無数の宝石が散りばめられています。部屋の中央には博物館ですら見ることのできないような大きなダイヤモンドが無造作に置かれています。
明日が楽しみじゃわい。
魔女は満足げに笑うと床につきました。
翌朝、魔女が見ると数匹の人間が家の中で身動きが取れなくなっていました。
魔女は宝石のまわりに、強力なとりもちを仕掛けていたのです。
さて、今夜は久しぶりに人間を食えるぞ。
魔女は人間の顔を覗きこんでみましたが、それはどれも、たいへん醜悪そうな顔だちでした。
なんて傲慢で欲深そうな顔をしてるんだろう。
尊大そうな鈍く濁った目に、卑屈な口元、下劣な匂いがプンプンしてきます。
まるでゴキブリじゃわ。
「お前らは誰じゃ」
魔女が問うと、彼らは答えました。
わしらは政治家であると。
“とても、こいつは食えそうにない
こんなの食ったら腹を下しちまう”
こうして魔女は人間を食べることを諦めたといいます。
そして、この事件は政治家が国を救った唯一の出来事でもありました。                                                   おしまい


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