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「絵が描けないデザイナー」がグローバル企業で「サービスデザイナー」になるまでの話

約5年ぐらいかかりましたが、なんとかデザイン業界で暮らせています。

デザインの「デ」の字も知らないニート寸前の状態から紆余曲折を経て、従業員が60万人以上いる巨大コングロマリットグローバル企業でサービスデザイナーになるまでの話です。

前段の話を飛ばして、いいところだけ知りたい人は「デザインの奥深さとキャリア」からどうぞ。

結論、絵が掛けなくてもデザイナーになれますが、

  • キャリア戦略性(ちょっとだけでOK)

  • デザインの知識を学ぶ姿勢

  • 業界内の意味のある繋がり

が僕を導いてくれました。
最後におすすめの本もあります。ご参考にどうぞ!


デザインとの出会い

見た目をなんかかっこいい感じにする、おしゃれにするのが「デザイン」と思っていた大学生時代。自称意識高い系だったので、いろいろな活動をしていました。

特に面白かったのが「参加者がお金を払ってアジアの起業家の支援をする」という団体、very50のプロジェクトに関わったこと。

今考えると何してんだよwと思いますが、参加者限定でいろいろな業界のトップランナーから連続講義を受けることができました。例えば、広報戦略やコンサルティングの基本、プロジェクトマネジメントなど、現場で使えそうな知識を中心に学びます。

この連続講義がまともなデザインとの出会いでした。担当してくれたのはNOSIGNERの太刀川英輔さん。「デザインの文法」というタイトルで見た目の裏に隠された思考や視点、広義のデザインのことを教えてくれました。

このときは「デザインって見た目だけの話じゃないんだな〜結構面白いな〜でも美大生じゃないと結局無理そうだな」ぐらい。なんとなく興味を持ちつつも、目の前に迫る卒業と人生の夏休みをエンジョイして大学生活を終えます。

貧乏と小金持ち

新卒で入った職場は1年ちょっとですぐ辞める「ゆとり世代最大のケイパビリティ」を発揮して、暖かいところでサーフィンしたいがために沖縄に移住します。このとき貯金約20万。

仕事を決めずに移住したため、すぐにお金がなくなり、日雇い労働で日銭を稼ぐ羽目に。主に沖縄の真夏にコンテナに入って「おーいお茶」を倉庫からトラックに乗せる仕事でした。

仕事が毎日あるわけじゃなくて、家賃(おっさんたちとシェアハウス)と食費をギリギリ払える程度の収入で「これはマジでやべえよ」と何度も思いました。

ある時、知人つてで当時まだ流行っていなかった「Airbnbを沖縄でやらないか?」と話が回ってきました。提供できるものが労働力しかなかったので、秒で不動産屋を回りまくって物件を決めて、ニトリとリサイクルショップ、アッテ(←復活してほしい)をフル活用でモノを揃えて、開始。

このAirbnbが大当たりし、2年ほど運用して小金持ち(気分)になったことで「次、なにしようかな?」と考え始めます。

このとき実はAirbnbの他にライターの仕事も。世界の面白いプロジェクトや製品、サービスを紹介する記事を書いていて、それとは別にネタ帳的なリストをコツコツ貯めていました。

リストを見返すと、あの講義からぼんやりと興味を持っていた「デザインに関するモノ」が多く、その仕掛け人たちに会って、話をできれば楽しいかもとうっすら感じつつも、「美大じゃないしな〜」とぐるぐるすること3ヶ月。

広義のデザイン

最終的にヨーロッパを周りながら、直撃インタビューをし、記事を書き、最終的にKindle出版を目指すことにしました。↓(出版したKindle)

それなりに海外に行っていたのでまあいろいろなんとかなるっしょ。と思っていました。痛い目みました。

一人でアポを取り、取材し、記事を書きつつ、次のアポを取り、宿を手配し、移動し、食事を作り、予算も管理し、、、で蕁麻疹になりました。

が、数カ月間、多くのデザイナー(グラフィックからUX、インタラクションからスペキュラティブまで)に会い、一緒にご飯を食べ、いろんな話をする中で「デザインって幅広くてやっぱりおもしろそうだな」と気持ちが募っていきます。

帰国が近づいてきたタイミングで数名のデザイナーにおすすめされた「デザインリサーチ」(「デザインのバックグラウンドがなくても、リサーチならお前でもできるよ」と半分冗談だったと思うけど真に受けた)を軸に就活を始めました。

デザインの奥深さとキャリア

The Process of Design Squiggle by Damien Newman, thedesignsquiggle.com

当時日本にはデザインリサーチを専門とするファームが少なく、業界未経験だったためエスノグラフィックリサーチを強みとするリサーチ会社になんとか就職します。

はじめてのクライアントワークでよく分からないことだらけ+背中を見て学べスタイルだったのでIDEO Uを自費で受けたり、デザインリサーチの海外記事を翻訳して学んでいました。

このときはコロナ前だったので、たくさんイベントに参加して業界の情報やトップランナーたちをフォロー、2回イベント見かけた人には「あの〜すいません、〇〇のイベント参加されてました?」と声をかけてFB交換していました。

業界未経験だったので、「教えを請う」姿勢でイベントでも無駄に質問して登壇者の方と話すきっかけを作っていました。あるイベントでは全部のトークに手をあげて質問し、覚えてもらえました。

(登壇する側になるとわかりますが、質問、うれしいんです、ちゃんと興味持って聞いてくれたんか〜〜〜ってなります、そうなれば顔ぐらいは覚えてもらえます)

謎にnote公式マガジン「デザインまとめ」の運営?に加わらせてもらったのもこの頃。同時にいろんな視点の人の記事を読むことになり、基礎的な学習が進みました。

ほどなくして、気がついたこと3つ。

  • リサーチだけでは結局、社会に落とし込めない

  • クラシックなデザインやってきた人の作る能力、まじでハンパない

  • デザイン、奥深くて楽しい

特に3点目が僕にとって大切です。飽きっぽい&器用貧乏なのである程度の「複雑性」や「難易度」がないと興味を持ち続けられません。

知れば知るほど、自分の無知を知る

Albert Einstein

グラフィックからプロダクト、果てはトランジショナルデザインまで、デザインの輪郭は今も広がり続けていて、1を知ると3つ分からないことが出てきて、調べたり詳しい人に聞いたり。この繰り返しを今も続けています。

一方で絵が描けない僕が、デザインに貢献するにはどうしたらいいのか?

これは結構悩みました。社会に落とし込むために最後のクラフトの力「細部まで作り込める能力」がどうしても必要。が、僕にはなくて。(今でも憧れあります)

ん〜この部分は他人に任せてしまおう!と振り切り、クリエイティブエージェンシーのディレクターに転職します。


リサーチから新規事業、イベント、ブランディング、自社ビジネスの拡大までなんでもやるマン

特殊なクリエイティブエージェンシーだったので、もういろんな案件が次々降ってきました。

もともとリサーチが得意だったのでd-schoolで教えていたキャプテン・アメリカみたいな方と一緒にデザインリサーチをしたり、大企業の新規事業開発をデザイン思考をベースに実行したり、北海道のブランディングで記事を作ったり、マーケイベントしたり。

台湾や香港など海外でのプロジェクトも経験させてもらいました。

2年目ぐらいからは自社サービスの責任者として営業からマーケティング、プロジェクトの設計やらPL書いて予算管理、マネジメントとの折衝などビジネス側にも携わります。

とても刺激的でデザインについても造詣が深い方が多く、学びもたくさんありました。一緒に働いたデザイナー、コピーライター、アニメーター、フォトグラファーさんたち、同僚もスキルとコミュニケーション能力が高く、非常に優秀でした。

この頃からプロジェクトを通してクライアントワークの基礎が徐々にでき始めていました。

と同時に、長年お世話になっているコーチングを通して見えてきた「人間の行動や心理」に対する興味や関心を日々のスキマ時間で学ぶようになります。

勝手に始めた全社メルマガがきっかけでコラム記事も書かせてもらえました。勝手に全社メルマガ始められる会社、レアだと思います。

デザインのバックグランドがない+なんでもやるマンに近かったので、個人のブランディングも含めこの一歩は大きかったなと思います。

突然来た「デザイン組織の立ち上げ」

より社会実装できる場所を次のチャレンジとして求め、転職活動をする中でいろいろな会社さんと話をしました。娘の誕生などもあり、地味に長くて転職活動自体は半年〜10ヶ月ぐらい続きます。

事業会社に行くべきか、様々な業界に携われるコンサルティングファームに行くべきか???

選考に進んでも、イマイチ実感がわかず、落とされたり、こちらから断ったり。答えが出ないまま、時間が過ぎて行きます。

そしてある日、Messengerでブラジル人の友人から5年ぶりくらいに連絡が来ます。

「会社でデザイナー探していて、推薦しておいたから、HRから連絡行くと思う」

初回の面談は友人となつかしすぎて、仕事の話一切せず終了しました笑。
それからしばらくチャットでやり取りしつつ、状況を聞くと「デザイン組織の立ち上げ」をやっている様子。しかも全然人が集まっていない様子。

結果、候補者であるはずの僕も、他の候補者をなぜか探すという謎ムーブをします。

極めつけは「ほぼ1日ですべての選考を終わらせる」という採用の常識を打ち破る転職でした。

いまやっていること

入社から半年ほど経ち、今は提案営業からのクライアントワークに加え、組織拡大のための環境・制度整備やマネジメントたちとのコミュニケーション(と少しの喧嘩)、後輩の育成、採用業務、社内への認知拡大と多岐にわたります。

自由すぎるクリエイティブエージェンシーからトラディショナルな大企業への転職だったので、カルチャーショックは相当なものです。

みんなスーツの中、僕は半袖短パン&サンダルです。社内で「メッセンジャーの方ですか?」って声かけられたことあります。インド人が多い会社なので日によってはずっと英語だったり、ツールだったり、働き方、仕事に対する考え方や進め方の違いがあります。(インド英語が一番の苦労、、、)

その文化や会社の仕組み自体をデザインのチカラで変えることも大きな目標です。個人的にサービスデザインは、クライアントワークよりも部門横断型社内プロジェクトのほうが効果はバツグンだと思います。

マネジメント経験が少ないので、立ち上げ初期メンバーを生かして積んでいこうと思います。

おすすめの本

今までたくさんのデザイン関連本を読んできました。古典的なものから、特定のテーマに特化したものまで、特におすすめな本を紹介します。

Adaptive Path社の主要メンバーが執筆した本。少し古いですが、デザインとは究極的に人間の理解であることを教えてくれます。

ドン・ノーマン氏の名著です。アフォーダンスやシグニファイアなど知っておいて損はない概念が紹介されています。手元にずっと置きたい一冊。

6マインドという分析方法が秀逸です。記憶に関わることなのか、それとも視覚か感情か?など分析を職人技にしない点が素晴らしいです。

実践者が書いているので生々しいノウハウが載っています。分厚いですが困ったときの手引として優秀です。

市場を見つけるのではなく、作るための本。課題のリフレーミングがキモです。

基礎的な仕事力、上がる一冊。情報構造で遊べるくらいになりたい。

デザイナーにとってインタビューはとても大切です。息を吸うようにできるようになる必要あります。そして、インタビューはプラットフォームであることを教えてくれます。

クライアントワークなら必携。

いいサービスってなんだろ?は民間も公共も変わらないことを教えてくれます。15の原則すべてを実現することは難しいですが、目指すべき原則であることに変わりはありません。

問題発見にフォーカスした一冊。ライトに読めるけど、中身は濃厚です。

なぜあの人はこんな行動をしているんだろう?と思ったら読むべき。分析にも使えるのが良き。

ジョブ理論を読んでも人の行動が分からなかったらこちらがおすすめ。心理的アイディアがいかに人を動かしているか事例も踏まえて解説してあります。



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