見出し画像

10年後に生き残れる地域の共通点とは? — コロナ時代に種を蒔くべきこと

まちづくりに関わり始めて、早7年が経ちました。

社会のあり方が大きく問われた2011年の東日本大震災。それ以降、各地域で行われてきた「まちづくり」において、少しずつ変わりゆく姿とそれでも変わらない姿のその両面を、同世代の中では間近で体感してきたひとりだと自負しています。(しかも複数の地域で)

そんな中で起こった「2020年コロナショック」は、まちづくりの文脈においても『歴史的な大転換期』として刻まれるだろうなと、僕だけじゃなく多くの人が感じてきているはずです。


1853年の黒船来航によって引き起こされた「明治維新(政治システムや身分制度の大改革)」や、1939年の第二次世界大戦によって起きた「日本型社会主義(社会主義的な資本主義社会)への転換」などと同レベルの大きな変革期にいることは間違いないでしょう。


ちなみに、有名な話なのでご存知の方も多いかもしれませんが、日本史を紐解くと、大規模な制度改革が起きる前(もしくは少し後)には、必ず「自然災害・経済不況・大転換点」が起きています

しかも、その大規模制度改革は『約80年周期』で繰り返しているのが日本史的な事実です。

正確に西暦で表せない部分や多少無理やりな部分もありますが、ザッとまとめるとこんな感じでしょうか。

[1620年期]
1591年:【制度改革】士農工商の身分体系確立(身分統制令)
1603年:【大転換点】江戸幕府 樹立
1611年:【自然災害】慶長三陸地震(M8.1程度)
1615年:【制度改革】武家諸法度 制定
1635年:【制度改革】寛永令の発令(参勤交代 義務化)

[1700年期]
1707年:【自然災害】宝永地震(M8クラス)
1707年:【自然災害】富士山大噴火
1716年:【制度改革】享保の改革

[1780年期]
1771年:【自然災害】明和の大津波
1783年:【経済不況】天明の大飢饉
1787年:【制度改革】寛政の改革
1793年:【自然災害】寛政地震(M8クラス)

[1860年期]
1833年:【経済不況】天保の大飢饉
1853年:【大転換点】黒船来航
1855年:【自然災害】安政の大地震(M7クラス)
1867年:【制度改革】大政奉還&王政復古
1869年:【制度改革】五箇条の御誓文 公布
1871年:【制度改革】廃藩置県
1889年:【制度改革】大日本帝国憲法 公布

[1940年期]
1923年:【自然災害】関東大震災(M7.9)
1929年:【経済不況】世界恐慌(昭和恐慌)
1939年:【大転換点】第二次世界大戦 開戦
1946年:【制度改革】日本国憲法公布(戦後改革)

[2020年期]
1991年:【経済不況】バブル経済の崩壊
2011年:【自然災害】東日本大震災(M9.0)
2020年:【大転換点】コロナショック
2026年:【制度改革】???

それぞれの時代における改革は当然長い期間をかけて実施されており、社会に浸透するまでにはタイムラグもあります。

が、大改革のスタートだけを抜き取ると、

1635年:寛永令の発令(江戸幕府の基本法)
↓ (81年後)
1716年:享保の改革(農業商業の立て直し)
↓ (71年後)
1787年:寛政の改革(商業軽視と備荒貯蓄)
↓ (80年後)
1867年:大政奉還(中央集権化と自由民権)
↓ (79年後)
1946年:戦後改革(社会主義的資本主義化)
↓ (80年後)
2026年:????(新しい時代への変革へ)

というように、ほぼ80年周期でこれまでの価値観や常識を覆す方針が示されてきており、近い将来また新たな大革新が起きても不思議ではないかなと。

(ただ、江戸時代以前まで遡ると80年周期説には少し無理も生じるので、あくまでもひとつの傾向として考えておくのがちょうど良いかもです)


※ この機会に日本史を改めて学び直したい人は、下記の書籍などがわかりやすくてオススメです。参考にどうぞ。


本題に戻ります。

このような歴史的な背景や、現在の世界的な動きを踏まえて、10年後の2030年に生き残っている国内地方都市の共通点を考えてみました。

もちろん、今後10年以内に起きる大改革の時期や中身まで予想できる人はいないでしょう。とは言え、コロナショックを機に、

・デジタル技術前提のシステムへの移行が進む
・統治制度、経済制度、教育制度にメスが入る
・域内経済圏を強く意識して暮らす人が増える
・生活するために働く必要性は目に見えて減る

という変化は大なり小なり起こるだろうという前提で、現在進行中のコロナ時代に地域で取り組んでおくべきことを書き出してみました。

上記の前提にピンとこない人には全く刺さらない内容かもしれませんので、その点はご了承いただけると嬉しいです。(あくまでも勝手な予想なので)


【補足】この記事では 、30万人〜100万人程度の人口圏をひとつの「地域(経済圏)」として定義して考えています


というわけで、ここからが本当の本題です。


1.地域コミュニティのオンラインサロン化

まず、コロナ時代に地域単位で取り組むべきことの1つ目は「地域コミュニティのオンラインサロン化」です。

オンラインサロンという言葉自体に違和感もあるかもしれませんが、言わば、自治会をオンライン化して統合するイメージに近いかなと。(本当は全然違うけど地域の人たちに伝えやすい表現を使ってます)

これからの時代、地域コミュニティ内の人間関係の構築や情報の交換、生活のセーフティネットなどの役割を担っていくのは、会員から会費(=自治会費)を徴収しながら運営する「地域内オンラインサロン」になるはずです。

というより、オンラインサロンを持たない地域は大きな変化への対応が弱くなるだろうなと。

それこそ、もし今の段階で数年単位で運営されてきた地域内オンラインサロンがあれば、運営者が積み立ててきたお金を苦境に立たされたサロンメンバーに対して独自に給付することもできたかもしれません。

また、緊急事態宣言緩和後に飲食店が直面するであろう「常連以外は入店させたくない」という感情にも、サロンメンバー限定でオープンするという選択肢で寄り添うことができるでしょう。

【余談】ウィズコロナ時代に生き残る飲食店は「常連だけで店舗経営が回るお店」か「通販など店舗営業以外で売上が立つお店」のどちらかだけだろうと思ってます。内需で回し切る、ネットで外需を獲得する、の2つしか戦略はないだろうなと。地域内オンラインサロンは、前者を強力に支持しつつ、後者の戦略を模索するためのサポートができるはずです。

他にも、各自がSNSで知人友人間で行っている食糧の物々交換なども、地域内で普段から繋がっているオンラインコミュニティがあれば、より効率的に行えるはず。独自の通貨(ポイント)でサロン内の経済を回すこともできます。

さらに言うなら、直接民主主義的に運営することや、一時的に強権施策を実施することも、オンラインコミュニティにブロックチェーンを掛け合わせれば容易に可能です。(お金の流れや強権の発動も厳格に管理できる)

オフ会や勉強会などの実施も、オンラインサロンがあればより開催しやすくなるはずなので、今のうちに色々な試行錯誤を始めておくべきだろうなと。


ちなみに、今の時点で最もイメージに近いのは、キングコング西野亮廣が運営する『西野亮廣エンタメ研究所(月額1,000円)』です。現在5万人ほど会員がいますが、やっている内容は今後求められる地域内オンラインサロンの役割に近い部分が多いと感じます。

【余談】地域内オンラインサロンの規模は、管理コストなどを考えて数千人〜1万人レベルが適切規模になると予想してます。ただ、付随するサービスによって、会費額は数百円〜数十万円単位と幅広くなるかなと。その辺りの考察はこれからより深くしてみたいと思います。


2.電気の自給自足(域内資本による発電投資)

続いて、コロナ時代に地域単位で取り組むべきことの2つ目は「地元資本による再生可能エネルギー発電ビジネスへの投資」です。

これは本当に急いで考えていくべきポイントだと思ってます。

今まで再生可能エネルギー(太陽光&風力など)と言えば、環境問題の視点で語られることが多かったと思いますが、今後は「地域社会および地域経済の持続可能性」の観点での議論が増えるはず。

まず、地域社会の観点で見たときの話をします。現在地域が抱える最も大きなリスクは、電気の供給がストップする【ブラックアウト】です。2018年の北海道地震の際に話題になりましたが、感染症によるロックダウンや地震などの天災よりも、何らかの拍子で電気が止まる影響の方が遥かにデカい。

他のインフラ(ガス・水道・道路など)は最悪地域内で代替を用意可能ですが、電気だけはほぼ不可能。だからこそ、地域社会の持続可能性の意味で、電気を自給自足できる体制を整え始める必要性は大きいです。

ただ、このときに「自分たちの地域にはすでに太陽光発電や風力発電の施設が多いから大丈夫」と思ったら墓穴を掘ります。おそらくその大半は地域外の会社や投資家のお金で作られたものなので、電気代の大半は域外に住む彼らの懐に入ってしまうからです。


ここで簡単に「30万人の地域圏の一般家庭から域外に流出する電気代」を計算してみましょう。

1世帯あたりの平均人数は2.3人ほどなので、地域世帯数は約13万戸です。
1世帯あたりの電気代を平均8,000円とすると、一般家庭から支払われる電気代の総額は「年間12.5億円」となります。

このうち、電力会社の人件費や家賃などで地域内に残るのが約3割程度だとすると、一般家庭経由で「年間9億円」程度が電気代として域外に流出している計算です。

さらに、新電力ネットの『電力市場データ』によると、全電気代のうち一般家庭(電灯契約)の割合は40〜50%程度なので、30万人圏からは「年間20億円程度」が域外に垂れ流しになっているということになります。

つまり、もし30万人圏の電気をすべて再生可能エネルギーで自給自足できた場合、毎年20億円が域内に留まることになります。

また、名著『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』によると、1万人程度の地域における乗用車の保有率は約8割程度。加えて、年間のガソリン代を平均10万円程度、ガソリン代のうち地域に2割残ると仮定すると、30万人圏から「年間200億円程度」が域外流出している計算になります。

電気の自給自足が実現していれば、今後電気自動車が普及した際に、このお金の大半も地域内に残ることになるというわけです。

ちなみに、人口20万人弱の鳥取市における市税収入は「約230億円」です。


これらの理由から、「2020年代のうちに地域内資本で再生可能エネルギー発電ビジネスに投資して電気の自給自足を目指すべき」と考えています。

このとき、投資資金は、不動産会社・交通会社・ガス会社・都市銀行・行政機関のような内需にビジネスモデルを依存している事業者たちが中心となり、共同出資の形で実現していくのがベストだと思います。

イメージとしては、ドイツの公益団体「シュタットベルケ」が近いです。そこに一般の人たちが小口出資をしたり、上記のオンラインサロンが出資したりするのが理想的な形な気がします。


特に、音頭を取るべきは各地域に根ざしたガス会社だろうなと。

我が生まれ故郷の鳥取では、2015年に鳥取ガスが鳥取市(行政)と共同出資(鳥取市10%・鳥取ガス90%)する形で『株式会社とっとり市民電力』を設立しています。

この会社では、大規模な太陽光発電所(メガソーラー)や、下水処理場で発生する消化ガスを活用したバイオマス発電所などを次々と開発しており、全国的にも先駆けて「電力売買×地域活性化」を狙った官民共同出資会社として活動おり、非常に好感を持っています。

詳しくは書籍『鳥取の注目15社』も参考にしてみてください。

【余談】よりエネルギーの自給自足を進めるためには、高断熱住宅の建設や車の利用機会を減らす対策なども考えていかなければなりません。そのため、発電と同じような発想で「不動産投資」にも戦略的に取り組む必要があると考えてます。(この点もガス会社が主導していくとスムーズ)


3.教育システムの再構築(現代版の寺子屋化)

最後に、コロナ時代に地域単位で取り組むべきことの3つ目は「教育システムをアップデートすること」です。

明治維新によって寺子屋が学校に変わったように、今回のコロナショックを機に「教育システムのあり方も抜本的な見直しが求められる気配」も漂ってきています。オンライン授業が一気に進みそうなところに、その気配を感じている人も多いかもしれません。

が、変わるのはもっと根っこからになるんじゃないかなと。僕の仮説は、

・年齢や時期は一切関係ない
・必要な分野を必要なときに
・教育機関のエコシステム化

という変化です。近代化(工業化)のために必要だった学校システムに縛られることなく、何歳だろうと必要なときに必要なタイミングで必要なことが学べる教育環境が有機的に出来上がっていく気がしています。

江戸時代の寺子屋は、まさにそのような感じだったと思います。入学時期が一律に決まっているわけではなく、学びたい分野やレベルに応じて、別の寺子屋(先生)を紹介してもらう。きっとそんな教育システムに戻りそう。

そこに「講義のオンライン化」と「欧米的教育のエコシステム化」が加わった【現代版の寺子屋】とも言える形が地域の中で出来上がっていくと強い

【余談】アメリカの大学では、必要ならば学費や生活費などまで返済不要で出してもらえる環境が整っています。在学中に必要なケアを受けられるからこそ、卒業後に多額の寄付をする気持ちにもなり、且つ、寄付したお金は完全に免税となる特典まである。また研究開発による基金の運用益も少なくない。このようなエコシステムを有した教育システムが今後は各地域で出てくるでしょう。(きっと地域オンラインサロンはその一端を担うはず)

特に、これからの時代に必要な『デジタル技術の応用(ビジネス化)』のために実践と学習を同時に行える教育環境は、オンラインサロンを中心にして早急に整備されていくんじゃないかなと。(そもそも、工業高校や商業高校はあるのに、今の時代に必要な分野を専門で学べる高校がないのが不思議)

その辺りの受け皿を、大人(上の世代)がしっかりと整え始める地域こそが、きっとこれから50年先まで生き残ると信じています。


ちなみに、名著『シン・ニホン』によると、データ×AIの時代に必要なスキルは下記の3つとのこと。参考あれ。

ビジネス力(Business Problem Solving)
課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理して解決する力

データサイエンス力(Data Sicence)
統計数理や分析的な素養の上に、情報処理や人工知能などの情報科学系の知識を理解して使う力

データエンジニアリング力(Data Engineering)
データサイエンスを意味ある形に使えるようにして、実装や運用できるようにする力


まとめ:正解はまだ誰も知らない

というわけで、長々と書いてきました。最後まで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。僕自身も書きながらまとまらない部分も多々あったので、きっと読む側も何度となく「??」と感じたんじゃないかなと。

抽象的すぎるところも多いですし、具体的な話が少なくてわかりにくさもあったかもしれません。

まあ、現時点での自分の考えを書き残しておくことを主題に書いたものなので、ひとつの参考程度に捉えてもらえたらなと。

感想や指摘など、たくさん送っていただけたら嬉しいです。


ひとまず僕がこの記事を書く上で参考にした書籍を紹介して、終わりにしようと思います。


【補足】きっと農業もアップデートが必要になるんだろうなと思っていましたが、全ての地域で重要なポイントではないのかもと感じたので、今回は載せませんでした。しかし、おそらく「垂直農法」などの手法は各地域で導入されて然るべきだろうなと。地方都市と農業空間がより隣接する形に近く気がします。


- - - ✂︎ - - -


というわけで、今日の記事は以上になります。
ひとりでも参考にしてもらえると本望です。

では、またあした〜!

▶︎ 合わせて読んでほしい記事 ◀︎
≫ ウィズコロナ時代の正解は、まだ誰も知らない。
≫ コロナ時代の「出会い」はどうデザインされていくのか。
≫ 決断のスピードと、検証のクオリティが、勝負を分ける時代。


サポートしていただいたお金は、CAMPFIREパートナーの認知を広め、より多くの人にクラウドファンディングを安心して利用してもらうための活動資金として使わせていただきます。