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地理旅#14「エチオピア編〜The New Spirit of Africa〜」(2024.8)

ソウルでの途中降機を経て、エチオピア航空で12時間…10年ぶりにアフリカの大地に降り立った。トランジットで24時間滞在したエチオピア。EUの支部やAU本部も位置する、アフリカの中心的存在である。

アフリカのハブ空港・アディスアベバ
ぜーんぶエチオピア航空

とは言え、いわゆる「熱帯雨林」みたいな気候ではない。ここは人類発祥地の地という説もあるアフリカ大地溝帯の上。つまり地球が「生まれる場所」だ。おかけで標高が2,350mと富士山6号目程度もあり、赤道近くの低緯度帯にも関わらず、年中常春といった気候だ。

人類発祥といえば、国立博物館では約320万年前の最古の人類・ルーシーのレプリカが展示されている。ホモ・サピエンスとは「知恵のある人」という意味であり、他の哺乳類と異なって集団学習に長けていることが種の保存と発展の最も大きな要因であるという仮説が立っている。

等身大のルーシー

さて、「世界一ウザい国」という悪評もあるエチオピアだが、街を歩けば拍子抜けするくらい親切で、そして愉快な人が多かった。ライドシェアアプリでお世話になったドライバーは「アフリカで植民地化されなかったのは、リベリアとエチオピアだけだ。日本もそうだろ?」と誇らしげに語ってくれた。

スコールでも活気溢れるローカルマーケット・メルカト

エチオピアはナイジェリアに次ぐアフリカ第2位、世界第10位の約1.3億の人口を抱えている。人口減少の日本とほぼ同数だが、対照的にエチオピアの平均年齢24.0歳、合計特殊出生率4.16(2021)で人口爆発真っただ中。

そのうち“公式”統計では400万人以上が首都・アディスアベバに密集している。いわゆるプライメイトシティ、首都一強の過密状態である。アディスアベバのどこのエリアを車で走っても、目につくのは人、人、人の波。たまにロバ、ヤギ。

荷物を運ぶロバ

特にはメルカトは控えめに言ってもアメ横の10倍くらいの活気に溢れ、さすが東アフリカ最大のローカルマーケットといったところ。

たまーに「見せたいモノがある」とあからさまに怪しいオジサンもいたが、街を歩いていても絶望的な治安の悪さを感じないのは、エチオピアの失業率が3.5%程度と低水準なことと無関係ではないだろう。ちなみにEUの平均が6%、アメリカが3.5%、そして日本が2.6%である。(もちろんエリア・時間帯など気を付けるべきポイントは色々あるのでご注意を。)

建物内も活気と密度に圧倒される

他方、エチオピアは世界最大級の難民受け入れ国でもあり、周囲のスーダン、南スーダン、エリトリア、ジブチ、ソマリア、ケニアからの難民は100万人にのぼるという。たしかに、失業率の低さを疑うほどに、街には若者…というか子どもたちが靴磨きや露店といったインフォーマルセクターに就いていた。

そして、街を歩けば引っ切りなしに物乞いから話しかけられる。足がない人、動物を連れている人、そして妊婦…。たった一日の滞在のうち、何度小さい子どもたちから「I'm hungry.」と腕を引っ張られただろう。この数たるや、体感的には今まで行った国の数でも一番だったかもしれない。

ここで目の前の子どもに小銭を渡すことが、本質的に“タメ”にならないことや、その後すぐに物乞いに囲まれることは分かっている。そう、分かった気になって、偽善者にすらなれやしない自分に、やるせなさが押し寄せる。15年前にインドを訪れたとき、同じ気持ちに苛まれたが、それから何ができるようになったというのだろう。あまりに無力で、こうして筆を取って昇華させようとしていることさえ気色悪い。

ところでエチオピアは農業が主要産業であり、GDPが停滞している要因でもある。(…という進歩史観さえ、どうなのかという疑問もあるけれど、工業化によって人類は富を蓄えてきたことは疑いようがない。)

メルカト内でもコーヒーブレイク中

特に、コーヒーはエチオピアのカッファ地方が原産と言われ、語源にもなっている。街中には無数のカフェが存在し、エチオピア人たちが豊かな香りとともに談笑している。エチオピアでは、プロポーズが成功するとコーヒーを飲む文化があるそう。それは、大地に根を張るコーヒーの木のように、ずっと添い遂げることへのメタファーなのだと言う。

空間づくりが最高だったDUKAMO COFFEE

また、低緯度の高原地帯に位置するエチオピアやケニアは花卉の一大産地でもある。前出のドライバーは言う。「この国には、いろんな人たちがいる。エチオピア人や移民、クリスチャンやムスリム。でも、みんなバラをもらったら嬉しいだろう?」

街中には花屋が目立つ

エチオピア人はとにかく良く笑って話しかけてきた。果たして僕たちは、日常にこれだけの笑顔と彩りを持って生きているのだろうか。

目的地の南アフリカ共和国まで、旅は続く…。

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