第8回 会計事務所って何をやってるのか??_会計事務所の1年③

皆さまこんにちは!Ryoheiと申します。
この記事をご覧いただきありがとうございます。

会計事務所に勤務して3年弱が経つアラサー男子である私ですが、今回のテーマは、「年度末が故の繁忙期第3弾 ~法人決算申告(3月決算)~」です。

【目次】
① 法人決算申告とは?
② 3月決算がなぜ多いのか?
③ 法人決算申告の一連の流れ

① 法人決算申告とは?

まずはそもそも「法人決算申告」とは何か?ということですが、ざっくりいうと前回の「確定申告」の法人バージョンになります。

個人の確定申告は1月1日~12月31日を1年度とするルールでしたが、法人の場合はその法人によって、年度の開始終了日が異なります。
3月1日~翌年2月末を1年度とする法人もあれば、6月1日~翌年5月末の法人とする法人もあります。そしてその年度の開始終了日は、それぞれの法人で自由に決められますし、「翌年度から開始終了日を変えよう!」ということもできます。

また申告期限については、個人の確定申告は「翌年の3月15日まで」に申告納税するというルールでしたが、法人の場合は、「事業年度終了日から2か月以内」が基本ルールです。
(指定の届け出をすれば1か月延長することも可能ですが、ここではその延長はなしという前提でお話します)

また個人では所得税・消費税・住民税・贈与税の申告が必要ですが、法人の場合はまた申告する税金の種類がまた異なってきます。
具体的には↓

・法人税&地方法人税
・消費税&地方消費税
・地方税(都道府県・各市区町村)
・事業税/事業所税

があります。
さらに事務所や店舗を置いている場所が多ければ多いほど、申告納税する自治体も多くなります。

そして税金を計算するうえで検討しなければならない論点も、個人の確定申告と比べてはるかに多くなります(ここが法人決算申告の一番大変なところでもあります)。

② 3月決算がなぜ多いのか?

上の①で、法人の決算申告期限は「事業年度終了日から2か月以内」が基本ルールと書きましたが、その場合でいうと、3月決算は「事業年度は4月1日~翌年3月末→決算申告期限は5月末」ということになります。
日本では3月決算としている企業が、全体の約2割を占めているといわれているため、会計事務所では、個人の確定申告が落ち着く3月後半から法人決算申告期限の5月末までは、この3月決算の準備で最繁忙期を迎えます。

ではなぜその3月決算が多くなるのか?
理由は主に以下の3つが考えられます。

・国・地方自治体の会計年度に合わせるため
・税制改正のタイミングに合わせるため
・教育機関の年度に合わせるため

③ 法人決算申告の一連の流れ

では法人決算申告はどういった流れで進められるのか?
3月決算に限らずどの月の決算期にも当てはまりますが、ここでは一連の流れをご紹介します。

※前提:3月決算、事務所所在地は東京23区のみ、消費税申告もあり

1.3月末までの会計を固める
 ここでは事業年度末を迎える3月末までのすべての売上、原価(仕入)、費用(経費)、その他の収入支出(預金利息や資産売却時の損益など)の情報を法人から収集し、会計資料(売上/支払請求書・各種領収書・給与台帳など)を基に会計処理を進めていきます。
会計処理は会計ソフト(弥生会計、勘定奉行、freee、Moneyforwardなど)を使って、日付・金額・内容などを入力していきます。
 毎月こまめに会計資料を頂ける法人もいれば、年に1回まとめて資料を頂く法人もあります。
 比較的中規模以上の法人であれば、社内に経理部などの専門部署がありますので、その場合は会社内で会計処理をされた状態で、(処理の内容が正しいか)内容をチェックします。

消費税の申告も発生する場合は、この他にも消費税がかかる取引とかからない取引の検討も必要です。
特に2019年10月に消費税の軽減税率がスタートしたので、消費税がかかる取引でも10%になるのか8%になるかの検討も必要になり、さらに複雑になりました。。

2.会計が固まった後、税務論点を洗い出し検討する
 「税務論点」とは、実際に納める税金の額を計算する際に、「この支払は税金計算から外せるかも」だったり、「この条件を満たしているから税金が優遇される制度が使える」などの問題をいいます。

よく登場する税務論点は、ごく一部ですが以下のようなものです。

・単価10万円以上の備品は、全額を経費にできず、一部しか経費扱いにできない
・取引先とのディナーに行ったとき、1人あたり5,000円以上かかった場合は全額を経費にできない可能性がある
・2年以上続けて勤務した社員全員の給与総額が、前年より数%増えたら、一部を税金から引くことができる(「賃上げ税制」と呼ばれているものです)
・役員の給与や賞与は税務上経費扱いにならないが、一定の条件を満たしたら全額経費扱いにできる(「事前確定届出給与」と呼ばれるものです)

法人の規模が大きくなればなるほど税務論点も多くなりますし、数字もかなり複雑になってきます。
さらにこれらの税務論点を見落としてしまうと、本来支払う税金を余分に払ってしまう可能性もありクレームの原因にもなるので、一つ一つ論点を検討しなければいけなくなります。

3.税務論点を一通り検討したのち、実際に各種税金の申告書を作成する
 ここでは実際に税務署(各地方自治体)に提出する税金の申告書を作成します。
例えば法人税の申告書であれば、一部ですがこんな構成になります。

・別表一 各事業年度の所得に係る申告書
・別表二 同族会社等の判定に関する明細書
・別表四 所得の金額の計算に関する明細書
・別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
・別表五(二) 租税公課の納付状況等に関する明細書
・別表八(一) 受取配当等の損益不算入に関する明細書
・別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書

わけわかりませんよね(苦笑)
ざっくり言いますと、「別表一」がベースのもので、各項目の内訳や詳細を「別表二」以下の各明細書に記載していくという構成です。
また上に挙げた明細書すべてが必要なわけではなく、各法人の決算の内容によって提出が必要な明細書も異なってきます。
それでもどの法人も、上の明細書はほぼ必須で提出が必要になります。
(あくまでこれらはごく一部で、実際はもっと提出が必要な書類があります。)

ちなみに現在は申告書作成のシステムがありますので、実際に申告書を準備する場合は該当の場所に数字を入力しただけで計算と申告書の作成を自動的にやってくれるので、申告書の準備自体は、それほど時間はかかりません。

4.各種税金額が確定したら、その数字を決算書に反映させる
 2の段階で会計作業自体は終わっていますが、最終的に決算書(1年間の経営成績や財務状態等を明らかにするために作成される書類)が完成するのは、税金額がすべて確定してからとなります。
 
5.法人へ決算と納税額の報告をしたのち、申告書を税務署(各地方自治体)に提出
 本来は紙に印刷して法人から社印をもらって税務署に郵送する…という流れなのですが、こちらも申告書の作成システムを使えば、電子化された申告書データを直接税務署に送信してくれますので、提出作業自体も簡単にできます。

これが一連の法人決算申告の流れです。結構大変そうだと思った方は、その通りです(笑)

今回はこれにて以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました!

【参考】
・3月決算の企業が多いのはなぜ?押さえておくべき法務のたしなみ
https://legalsearch.jp/portal/column/companies-that-close-in-march/
・第144回 国税庁統計年報 P218
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/h30/h30.pdf

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