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本来の居場所

#就労支援の現場から

今日はある、復職を果たした方について書きたい。

私が働く就労移行支援(就労移行支援の説明は割愛しちゃうのでお許しを)では、「新しく就職を目指す」方と「復職を目指す」方がいる。

というのも、「新しく就職を目指す」に関してはイメージつきやすいかもしれないが、「復職を目指す」に関しては、私たちの事業所が対象にしているのが主に、「脳卒中等による身体障害、高次脳機能障害を持った方」だから。

それまで普通に働いていた中で、ある日、脳卒中を発症し入院をする。
会社には「休職期間」がある。
休職期間は会社によってさまざまで、3ヶ月~3年くらいとされている。その休職期間のうちに、また職場復帰をすればそれが「復職」となる。


その方は、

「復職なんか難しいですよ」

という風に言っていた。それは卑屈なわけじゃなくて。真面目な方で、以前まで出来ていたことが出来なくなっていることを自覚しているから、会社に戻っても迷惑をかけてしまうんじゃないか、と思っていたんだろう。

軽度の失語ということもあり口数が少なかったり、感情の波がなく、その一方で特に理由も分からなく涙が出てしまう、という悩みを抱えていた。

詳細な部分はここでは割愛するが、私たちとしては何とか復職してほしいと思っていた。日頃見ているこの方の真面目さから、きっと職場でも責任感あって必要とされていたんだろうな、と感じたから。

移行支援の利用を重ねていくうちに、徐々に前を向けるようになってきた。
利用開始から半年が経過したくらい、

「復職を目指していきたいです」

初めてその方が、自らの口でそうお伝えしてくれた。

「わかりました!!!!!!」

それからその方に教えていただき、復職先の企業の方とコンタクトをとった。3者でのお話をした。その企業の上司の方はこう言っていた。

「私たちとしては○○さんに戻ってきてほしいんですよ…!」

やっぱり。間違ってなかった。この仕事をしていて思うことがある。何か困ったことがあった時、最後に自分を救ってくれるのは、「それまでの自分の立ち居振る舞い」だなと。何かできなくなったり、失うことがあったとしても、その人の存在感というものがなくなるわけではない。

話が少し逸れてしまった。

3者でお話していた時に上記のような言葉をいただき、私としても感銘を受けた。それから上司の方と2人になり、こう話してくれた。

「私としてもずっと戻ってきてほしかったんです。うちにとって○○さんは必要な存在だから。うちにはなかなかいないキャラなんですよ。でも真面目なのはわかっているから、「戻ってきなよ」と声を掛けるのもプレッシャーになるだろうな、と思ってて。今回繋げていただき、本当にありがとうございました。」

ものすごくグッとくるものがあった。

それからは、いきなりフルで職場に戻るのではなく、お試しでの勤務から再開した。最初は緊張している様子だったけど、すぐにその方は笑顔になっていた。大げさ抜きで、それまでに見たことないくらいの笑顔だった。

「あ、やっぱりその方がいるべき本来の場所ってあるんだな」

純粋にそう感じた。と同時に、その場所に戻れる可能性が高くなっていることに、私個人的にもすごく嬉しくなった。そこから順調にリハビリ勤務が始まっていった。

***

復職をしてから最初の半年は、移行支援が職場定着のサポートをするのが義務になっている。

今日は職場復帰してから3ヶ月目の定着支援に向かった。実は企業側も復職してから3ヶ月は「リハビリ期間」というかたちで設定していて、徐々に慣らしていこうとしていた。そして今日が3ヶ月目というわけで、今日の産業医面談を持ってリハビリ期間も終了する。

「何か変化とかはないですかー?」

「何も変わらず、出来てます」

産業医の方の質問に、まさにその人らしく淡々と答える。そして無事、産業医面談終了。予定通りリハビリ期間が終了となった。

今日訪問して気づいたのは、以前よりもさらに表情が柔らかくなっていること、リアクションがしっかりしていること。それが見れただけですごく嬉しかった。

度々言うけど、戻るべき「本来の場所」に戻れたんだなぁ、と。
と同時に、一度はその戻るべき場所に戻ることを諦めていたと思うと、自分がやっている仕事のことを誇らしく感じたりもした。

そんな心が温まる1日だった。




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