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太陽フレアが文明を破壊する日

こんにちは、りょーです。

今回は私が実際に研究をしている「恒星フレア」について書いていこうと思います。

タイトルで書いたように、太陽フレアは非常に危険な現象です。
巨大な太陽フレアは文明を衰退させる可能性があるとか!?

そこで太陽を含む恒星で見られている「フレア」とはどういったものなのかを専門家としてお伝えできればと思っています。

ちなみ写真は1980年代に作られた初代マッキントッシュ!
太陽フレアで衰退するのはこのレベルじゃないですよ〜〜〜〜!!


そもそもフレアって何!?

フレアとは、太陽などのように自ら輝く「恒星」の表面で起きる爆発現象のことを言います。

星の表面が爆発的に明るくなります。フレアが発生する時には、「フレアループ」と呼ばれる輪っかが表面から浮き上がっている様子も見えます(動画で見てみてね)。

フレアが危ない理由は、フレアが発生するとその爆発の勢いで、太陽表面の物質が地球の方向に飛んできたり、X線などの体に良くない放射線が飛んできたりするからです!

まずこの放射線については、そのタイミングで飛行機に乗っていたりすると危ないです。
太陽は普段からX線を放射しているのですが、その強度はそこまで強くないので地球の待機で吸収されて地上に全く影響はありません。

しかし、飛行機みたいに雲の上にいくと、宇宙との間の空気の層が薄くなるのでその放射線の影響をかなり強く受けるのです。
通常でもかなりの量の放射線を受ける可能性がある上に、フレアが発生した時には放射されるX線は10倍~1000倍にもなります。

(飛行機に乗る時に放射線量計を持ち込もうとすると怒られます。なぜなら。。。笑)

これだけでもかなりの危険性ですが、太陽フレアが発生したタイミングで飛行機に乗っていたりしなければ大丈夫です!!
地上までは届かないのでご安心ください。

問題は飛んでくる太陽表面の物質です。


この物質は電気をまとっていて、こいつが地球に当たると、色々と悪さをするんです!

人工衛星の機能停止に大規模停電!

電気をまとった粒子が地球方向に大量に放出され、地球まで届くと、こいつらがかなりの悪さをします。

電気をまとっているので、電子機器にこれらが大量に当たると、異常な電流を誘発させる可能性があります。
電子機器はそれぞれ流せる電流が決まっているので、太陽フレアのせいでそれを超えるほどの電流が強制的に流されると、電子機器は破壊されてしまいます。

例えば過去に、2000年には日本の天文衛星「あすか」が、この被害を受けて機能停止になってしまったことも。

実際地上への影響は、直接この荷電粒子が当たるのではなく、これらが地球の磁気と相互作用して、その結果さらに地上に影響を与えるという間接的な影響がおきます。

この影響で過去には、1989年にカナダのケベック州で大規模な停電が発生し、その被害総額は数十億から数百億円だったと言われているんです。

もし今、1989年に比べて電子機器が発達している今の時代に同じ規模のフレアが発生したら、被害総額は数兆円にも登る可能性がありますね。。。
恐ろしい。。。


こんなに脅してきましたが、実は嬉しい面もあったります。

オーロラは、実際は太陽フレアで飛んできたこれらの粒子が作り出しているんですね。

過去には巨大フレア発生時に赤道近くでもオーロラが見えたこともあるとか!?

なので、オーロラは寒くないと見れないわけではなく、太陽が飛ばした粒子が作り出すオーロラが発生しやすい位置が、たまたま寒い地域である、というだけなんです。


江戸時代にタイムスリップ!?

大規模停電を誘発したフレアは過去最大規模のフレアですが、実は宇宙ではそれ以上に大きいフレアがいくつも見つかっているんです!!

これは京都大学の研究で明らかになって、Natureというすごい雑誌にも掲載された成果なので記憶にある方もいるかもしれません。

太陽に似た星を可視光で精密に観測した結果、太陽の過去最大規模のエネルギーのフレアの10倍以上大きいものがいくつも見つかったんです!
これらを「スーパーフレア」と呼びます(わかりやすいネーミングですよねw)

この研究から、太陽でももしかしたらスーパーフレアが発生するのではないか!?
もしそうなり、地球に太陽から大量の荷電粒子が飛んできたら!?
という危険性が指摘され始めています。

一説によると、そのようなスーパーフレアが地球に直撃するように発生すると、地球上の電子機器を軒並み破壊する可能性があるとのこと。

これによって現代のテクノロジーの上に成り立つ文明が一気に崩壊し、200年も時代が逆戻りするのではないかとも言われています。。。

200年も戻ったら江戸時代ですよ!
参勤交代なんかしてられませんよ!!

言うなればハイパーフレア!巨大恒星フレアの存在

太陽に似た星でおきたスーパーフレアによって、太陽フレアを危惧する声が高まったわけですが、実は他の恒星ではもっともっと大きいフレアが発生しているんです。

これは私たちの研究チームで見つけた巨大フレアで、太陽の過去最大規模のフレアの最大で1,000万倍(!!)ものエネルギーを放出します!

これは言うなれば「ハイパーフレア」といったところでしょうか!

これを見つけたのは国際宇宙ステーションに搭載されている全天X線監視装置MAXIという観測機。
常に宇宙全体をX線の帯域で監視していて、フレアのような突発現象を捉えるのに最適なんですね。

もしよければ「MAXI」お見知り置きを!
運用チームの一員として毎日みんなでお世話して今年で10周年記念の観測機です!!

話を戻して、このようなハイパーフレアも発生のメカニズムや、フレア中の様々な特徴は太陽と同じという事実も明らかになっています。

しかし、星の大きさが違ったり、恒星同士で連星を組んでいるなど根本的な違いはあります。

なので、数1,000倍のエネルギーのフレアはさすがに太陽で発生はしないとは思われていますね。

宇宙天気予報という新しい研究

こういった巨大な太陽フレアへの懸念から、太陽でフレが発生することを事前に予測して対策をしよう、という動きが出てきています。

その一つに「宇宙天気予報」という分野があります。

これは、太陽の状態を常に監視して、過去の特徴と照らし合わせながら太陽がフレアを起こしそうかどうかを予報している研究です。

日本だけでなくアメリカなどにも同様の研究機関が存在していて、最近ではAIを使って新たな予測手法が確率され始めたというニュースも出てきています。

そして!!この予測が高性能になればなるほど、オーロラも予測できることになるんですね!

つまり、これまでは運任せで見に行って探したオーロラも、将来的には狙い撃ちができるレア度の低いイベントになるかもしれません笑

今後は「宇宙天気予報」にも要注目です!!

まとめ

太陽と他恒星で起きるフレアについてまとめて見ました。

みなさんにあまり知られていないような、超巨大フレアまでを噛み砕いて説明して見ましたがいかがでしたでしょうか!?

普段はこういった面白そうな内容をTwitterで簡単に伝えているので、よければそちらもフォローください!

追加情報:フレアの原理(ちょっと理科っぽい話)

少し理科っぽい話を挟んでおきます。
いらなかったら次の章に行っちゃってください!笑

太陽も地球と同じように南から北に向かって磁力線が伸びています(コンパスが反応するあの磁力です)。
しかし地球と違って太陽のような恒星は表面がガスで、この磁力線がふわふわと浮いているような感じ。そのせいで太陽が回ると、これがねじれたりしてしまうんです。

そのねじれた磁力線同士が、変なところでくっつき直したりすることがあるんです。これを「磁気再結合」と言います。
このつなぎ変わる力が爆発的に大きいので、これが「フレア」として観測されます。

このねじれちゃった磁力線ですが、地上から太陽を望遠鏡で見ると(直接見てはダメですよ!)、表面に黒い点々が見えまして、それが「黒点」と呼ばれる領域にあたるんですね。
つまり、太陽表面の黒点は磁力線が浮き上がって、不安定な状態が見えている状態です!



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