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マーケ力は知識より、3つのセンスで決まる。

新卒でマーケ担当に配属されて2年半が経つ。

現場で手を動かすフェーズも終わり、組織のマーケティング力を高めるために、マーケティング力が育つ仕組みを考えるようになった。


そこで感じたのが、

「センス」の一言で片づけてしまいたくなるくらい、同じ知識を持っていても、人によって成果に雲泥の差が生まれることだ。


なぜか上手くいってしまう、
その”センス”の正体を、突き止めたくなった。


1.マーケティングセンスとは何か


①マーケティングの定義を調べてみると、

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。
日本マーケティング協会 1990年
(引用:https://www.jma2-jp.org/jma/aboutjma/jmaorganization)

と、凡人には到底理解できない難しい説明が書いてあるし、



②マーケティングのスキルを調べてみると、


ホットリンクのムロヤさんが丁寧すぎるくらい包括的に解説してくださっているが、量が膨大なので初心者が理解に時間がかかる。



➂マーケティングの座学を勉強すると、


STP・4P分析
PEST分析
3C分析
SWOT分析

と大量のフレームワークを知ることができる。

がしかし、実際にマーケティング業務に携わっている方なら分かるかと思うが、このフレームワークを日常的に使うことは少なく、学習と業務が紐づきにくい。


少年野球で例えると、監督と選手の関係で、小学生が野球を上達させるために、「セイバーメトリクス(選手の分析手法)を理解して、采配を論理的に行おう」とはならないのだ。


つまり、新人マーケターが現場で成果を残すために必要なエッセンスは、意外と体系されておらず、

成果を出せている人は「何となくセンスがいい」の一言で片づけられてしまう事態が多くあると思っている。


ゆえにこのnoteでは、その「センスがいい」の正体を解明し、新人マーケターが成果を残せるようになるための方法を考えてみた。



例えば、マーケティング担当が置かれる状況のリアルは、

今、コロナでうちの売上が不調だから、テイクアウトで売上を増やしたいんだけど、どうする?


のような状況で、立地を考えたり、0からお店のコンセプトを変えたり、材料の仕入れを変えたり、優秀な料理人を雇ったりするのは、現実的に難しいことが多い。


故に、ここではテイクアウトの売上を伸ばすための方法を考えながら、マーケティングセンスを定義することにする。



2.マーケティング戦略

まず初めに考えるべきなのは、マーケティング戦略である。


現実的にテイクアウトの売上を増やそうと考えると、

・テイクアウトに最適なメニューを作る。
・値下げをして大量販売を狙う
・店の看板を改良する。
・SNSの販促に力を入れる。


などの方法が考えられる。


そして戦略は下記の2つに分解することができる。

戦略


①市場選定

一言で言うと、どこで勝負をするべきかを考える力である。


・テイクアウトに最適なメニューを作る
┗店の強みが生きるメニューは?(自社)
┗他の店にないメニューは?(競合)
┗その中で売れそうなメニューは?(顧客)

・最適な価格を設定する
┗利益を考えた際の妥当な価格範囲は?(自社)
┗他の店の価格帯は(競合)
┗顧客にウケの良い価格は?(顧客)
※安すぎると安物だと思われる

・立地に合わせた看板を考える
┗今の立地の特徴は?(自社)
┗他社と比べて目立つデザインは?(競合)
┗通行人の目を引く訴求内容は?(顧客)

・SNSの販促に力を入れる。
┗商品やターゲットに合うSNSは?(自社)
┗そのSNSで競合と差をつけるには?(競合)
┗買いたくなる見せ方は?(顧客)


のように、テイクアウトの売り方レベルでも、戦略が必要になる。

上記では、4P(placeのみ本来の使い方とは違うが)分析

と3C分析(これも本来と使い方がやや異なるが)

を用いてまとめている。


例えば、

鳥貴族の1店舗で急に上司から「明日からテイクアウト始めるから、キミがどうやって売るか考えてくれ」と言われたら、


<メニュー>
焼き鳥だとランチで食べにくいから、焼き鳥丼でいこう!牛丼チェーンに対抗して、焼き鳥丼を流行らせるのはどうだろうか?

<価格>
安さが売りだから、低価格でいこう。牛丼と同じ380円だったら、話題になるし、焼き鳥2本300円だから、原価率的には問題ないはずだ。

一方で、プレミアム鶏丼600円を用意することで、380円の安さを際立たせつつ、利益率も高めていこうか。

<立地に合わせた戦略>
ビルの3階だから、店の前で商品を売るのは難しい。一方で、看板のスペースは大きくあるから、【鶏丼貴族~テイクアウト始めました~】に内容を変えてみよう。

<広報>
SNSで話題になるのがよさそう!トリキの名前を使えば「380円テイクアウト」は話題になるはずだから、容器をオシャレにすることで、SNSの投稿を促進しつつ、SNS投稿50円引きキャンペーン周りを行うことで、話題を作ろう。


のように、トリキの強みを活かしながら、現実的にできることを考えていくのである。


実際に似たような話がドリルを売るなら穴を売れで紹介されているので、入門書としておすすめしたい。



②資源配分

ただし、実際問題、現場のマーケティング担当が全ての施策を行うのは難しい。時間がないからだ。

ゆえに、やることとやらないことを絞る必要がある。


トリキの集客例であれば、

①毎日呼び込みを行う場合
ランチの2時間でバイト3人で呼び込みを行うと人件費が6,000円。鶏丼1つで200円の粗利が出ると仮定して、呼び込みで1日100人顧客が増やせたら、14,000円の利益になりそう。
※一旦固定費は考えない

②SNSキャンペーンの場合
仮にキャンペーンSNS口コミキャンペーンを始めて、初日は10人が投稿してくれて、その後計50人が投稿してくれて、1日あたり10人の顧客が増えたら、、、あれ?粗利は2000円しか増えないじゃん?


でも、SNSで100人まで広まるとは考えられないし、やっぱり最初は人海戦術の方がいいかな?

のように、数値を計算しながら、何に集中するのかを決めることで、利益を増やすことができる。


①市場選定②資源配分を合わせると、


広告運用担当の場合は、

自社の強みを伝えるために最適なメッセージはなんだろう?

そもそも、Twitter広告、Instagram広告、Google広告、youtube広告、看板広告、TVCM、口コミ施策のうち、1番投資対効果が良いのは、どこだろう?

を考えるし、


SEO担当の場合は、

自社のメディアが他社と比べて優れた特徴は何だろう?

どのKWの記事を書くのが1番効果が大きいだろう?伸びしろがあるのはどの記事だろう?新規記事執筆と、リライトと、LP改善(CVR改善)の何が1番効果が高いだろう?

を考える。


そして、任された予算を用いて、

人件費
広告運用費
クリエイティブ制作費
コンテンツ制作費
プロダクト改善費

のどこにお金を配分し、

それぞれの改善において、


外注
┗法人?個人?

内製
┗誰に任せる?

の誰に任せるのがいいか、人の配分を行う。


これらを数値化することで、

効果の大きさ/投資コストの良い市場を選ぶのが、マーケティング現場担当の役割である。


もし今そうではなく、決められた市場で「記事を書く」「広告を考える」だけの仕事を行っているのであれば、上段の戦略を理解した上で提案をすることが目標になる。

そうすることで、少ない時間で会社の利益に貢献できるようになる。

つまり、業務時間を減らして、給与を上げることができるのだ。


このように、少ない時間で大きな成果を出すために、数値を用いて的確な意思決定を行った結果、何となく早く仕事が終わるから、センスが良いと思われるのだ。

(上記のnoteでも解説している)


マーケティング戦略については、下記の本が良くまとまっている。



3.顧客理解

しかし、マーケティング戦略が完璧でも、顧客理解が浅いと、机上の空論で終わってしまう。


例えば、トリキの例では、

満を持してテイクアウトの体制を整えて、SNSでも発信をしたのに、全然売れずに滑ってしまった…

なんてことは、往々にしてあり得る。


その際に必要なのが、顧客理解(≒人間理解)の力である。

顧客理解力は、

①座学(心理学・脳科学)
②メタ認知(実践でセンスを磨く)

のかけ算で高めることができる。


①心理学

顧客理解


まず前提として、マクロなレベルで見ると、人間に大きな差はない。

人は美味しいご飯を食べたいし、他人に認められたいし、価値観が近い人には共感するのだ。


だから、顧客の心を動かす体験は、ある程度ロジックを用いて作ることができる。

「心を動かす≠幸福に直結」であり、悪い意味で洗脳することも可能なので、そこはマーケティング担当の哲学が問われる)


例えば、

バンドワゴン効果
人気があるものは、中身に関係なく価値があると錯覚する

を活かして、


あえて、店内ではなく店外でテイクアウト待ちの人を並ばせることで、人気があるように見せて、注意を惹こう。

のように行列が行列を呼ぶ法則を利用したり、


プロスペクト理論
人の意思決定は、目の前にある損失の度合いによって変化する。

を用いることで、


あえて、鶏丼380円ではなく、初回限定380円(本当は500円だよ)と打ち出すことでお得感を演出しよう。

のように、見せ方を工夫したりすることができる。


上記の2例は説明のために、分かりやすいグレーなテクニック(本質的に顧客の幸福には直結しない)を用いたが、他にも脳科学や心理学を用いて人が喜ぶ体験を考えることは可能だ。


更に、バンドワゴン効果、プロスペクト理論ともに、

狩猟時代では、命を失わないために、脳が素早い判断を求められるから、限られた情報の中で過去の傾向を活かして、深く考えずに無意識に情報判断を行う。

という、脳科学の前提知識まで持っていると、逆にこれらの知見を活かして自分で新たな仮説を考えることもできる。


上記の例を活かして、

脳は細かな情報を見て、意思決定を行うのは面倒くさい生き物なんだなあ。

と理解をしておくと、


数値の可視化によって、「3.5以上あれば外さない」という最も簡単な店選びを可能にした「食べログ」のようなサービス設計の起点を作ることができる。


脳科学・心理学・行動経済学をバランスよく学ぶことが、実際に人が喜ぶ仕組みを作るのに大切なのだ。

少しマーケティングとは逸れるが、幅広い知見を持つためにもおすすめの書籍を紹介する。


心理学


脳科学


行動経済学



②メタ認知

しかし、座学だけでは、実践で使えないことが多い。

例えば、「褒められたら嬉しい」と分かっていても、ただ闇雲に褒めても「わざとらしい」と思われてしまう。

「褒め」で相手を喜ばせるためには、どんな言葉をかけられたら嬉しいのかを想像し、時と場合と関係性を考えながら、言葉選びや口調を変える必要がある。


どんな言葉をかけられたら嬉しいのかを想像し、時と場合と関係性を考えながら、言葉選びや口調を変える必要がある。

これはとても難しいだろう。

そもそも人は、よほど共感性が強くない限り、他人の感情なんて分からないのだ。


この時に使うのが、メタ認知である。


他人の感情が分からなくても、

あの時、あの先輩にかけてもらった、この言葉はとても嬉しかったな。
あの時、めちゃ褒められたけど、あまり嬉しくなかったな。

のように、自分の感情を把握することはできる。


その自分の持つ感情の数を増やすことで、

こんな風に褒められたら嬉しいかな。
こんな風に褒められても嬉しくないな。

のように、相手にも応用することはできる。


この章の初めで述べた通り、マクロなレベルで見ると、人間に大きな差はない。


だから、自分のレンズを通して、人間の無意識の行動や感情の動きを察知できるようになることで、人間の心理に対する解像度を上げることができる。


確かに食べログでは、評価を見て決めてしまうな。
確かにSNSでは、いいねが付いている投稿を見ると、「いいツイート」なのかなと錯覚して、いいねをすることがあるな。
文章が多いと、面倒くさて読みたくなくなるな。
過程を知っている人が成果を出すと嬉しいけど、知らない人が成果を出すと嫉妬してしまうな。
中身が大切とか口では言ってるけど、結局マッチングアプリを開けば容姿で判断している自分がいるな。


など、無意識の自分の行動や感情を、認知することで、より人間理解を深めることができる。


ライターであれば、

100の記事を読んで、1記事1記事で面白かった理由やつまらなかった理由を考えることで、「面白い」「読みやすい」の感覚を磨くことができる。


メタ認知の方法は、メモの魔力が参考になる。


そして、自分を知ることで初めて、他人との差を知ることもできる。


あれ?自分だったら、この広告見ても何も感じないんだけど、人気なの、なんでだろう?

と疑問が生まれ、その疑問を解くことで、色々な人の感情が分かるようになり、結果的に顧客理解が深まるのだ。


マーケティングセンスを高めたいのであれば、顧客理解は必要不可欠である。

この顧客理解の深さが、目に見えないマーケティングセンスの2つ目の正体である。


資格などで定義ができない分、盲点となりがちだが、だからこそこの能力は希少性が高く、市場価値がどんどん上がってゆく。




4.企画力

最後に必須なのが、企画力だ。


ここまで、戦略を決めて、顧客を理解する大切さを話してきたが、唯一かけているものがある。

実行に移すためのノウハウである。


顧客はこんな感情で、(競合との差も加味した)こんな訴求をしたら喜んでくれるし、効果も大きいだろうなあ。

と考えたところで、それだけで具体的に広告やTVCMは作れないのである。


例えば、TVCMの1つの狙いは、

単純接触効果
よく耳にすることで、愛着を持ってもらうこと。

であるが、これを最大限に生かしたのが、消臭力のCMである。


これは、戦略や顧客理解(一部あるが)でなく、

若い少年に記憶に残りやすい高い声で歌を歌わせることで、覚えてもらえるのではないか。

というアイデアが土台となって、大ヒットとなっている。

これが企画力である。


2年前にnoteがバズったが、これも戦略(誰にどんな情報を届ければ刺さる)と顧客理解(シェアやスキの心理)はある程度頭に入ったうえで、

それらを実現させる企画が当たったから、大きく伸ばすことができたのだ。

戦略と顧客理解だけで勝てるなら、何度か連続してバズを起こせているが、そうなっていないのは僕の企画力不足である。


企画力を2つに分解すると、

アイデア収取:アイデアの種を探して、
思考法:花を咲かせる。

の2つのステップに分解することができる。

企画力




①アイデア収集

前提として、

企画で最も大切なのは「新しさ」である。


人間は新しいものを知りたくなる生き物であり、飽きる生き物であるから、

新しい×有益or面白い=大ヒット

の方程式が成立する。


そして新しさとは、かけ算で生まれる。

若い男×高温の歌×CM=消臭力
お年玉×宝くじ×Twitter=前澤社長
死×鬼×友情漫画=鬼滅の刃
飲み物×食べれる×インスタ映え=タピオカ

のように、世の中で話題になるものは、何かと何かを組み合わせた結果に過ぎない。


死を扱うから刺さる=戦争ドラマ
共感型友情ストーリー=ワンピース

を鬼という今までにない斬新な切り口でかけ算を行ったのが、鬼滅の刃だと言える。


つまり、かけ算を行うためには、日常からかけ算の種を多くストックしておく必要がある。

マッサージ屋さんに行って、心地が良かったら、

マッサージ×コーチングとかどうだろう?
マッサージ×福利厚生で生産性が上がる?

のように、日常で良かった体験を起点にして、アイデアの種をストックすることで、いつかピースがハマると、


この戦略で、この顧客なら、○×■だな。

のように実現に向けて、人の心に刺さる企画を行うことができる。


つまり、
良い企画の基礎はアイデア収集なのだ。


上場企業50社の事業分析
→勝ちパターンのストックが増える

有名な広告50選の確認
→デザインとコピーのストックが増える

noteでスキの多い記事50記事
→伝えるための幅が増える

のように、様々な具体事例を知ることで、アイデアのストックを増やすことができる。


また、

いつもと違う本を読んだり、
いつもと違う遊びをしたり、
いつもと違う人と会ったり、
いつもと違う場所に行ったり、
いつもと違う物を買ったり。

のように、日常の経験を増やすことも、アイデアストックの大きな武器になる。


日常からアイデアを貯める方法については、企画の神様「秋元康」さんの考え方をインプットするのが良い。



②思考法

アイデアのストックを行ったら、そのアイデアを実際にかけ算する思考法が必要になる。


点になっているアイデアを具現化するために、マインドマップなどのフレームワークを用いることで、より早くアイデアを発散できるようになる。


思考の全体像については、考具か多々良さんのnoteがよくまとまっているので、これらに目を通すとよいと思う。


思考法の全体像が分かる

具体的な手法が多く分かる。


また、企画力を高める1番基礎的な手法がコピーライティング力を磨くことだ。

・記事執筆
・広告作成
・タイトル設定
・コンセプト設計
・商品名設定

など、現場でマーケティングの仕事に関わる際には、必ず「言葉」を選ぶ瞬間がある。


そして、コピーライティングとは、

①こちらが伝えたいこと
②相手に伝わること
かつ
➂真新しさで興味を持ってもらうこと
④情報が多すぎないこと

をかけ算によって作る「企画力」を要する仕事である。

(このnoteのタイトルも10パターン以上考えて決めたものである)


コピーライティングの入門は下記の書籍がおすすめだ。


コピーライティングのように、戦略と顧客理解を形にしていく企画力こそが、マーケティングセンス3つ目の正体である。


顧客理解と同様、知識を覚えれば何とかなる分野ではないからこそ、差が付くのだ。



まとめ

スクリーンショット (235)

マーケティングセンスは、戦略と顧客理解と企画力で説明することができた。

そして、この能力がなぜ重要なのかというと、

ほぼ全ての活動で応用できるからである。


LP制作でも、広告制作でも、記事執筆でも、商品開発でも、プロダクト設計でも、ブランディングでも、採用広報でも、PRでも、

①最適な市場を選び、

②費用対効果を基にリソースを配分し、

➂何が顧客に刺さるかを妄想し、

④かけ算で強いコンテンツ・広告・プロダクトを作る。

流れは、変わらないからである。


ゆえに、現場のマーケティング担当が行うべきことは、フレームワークを暗記したり専門知識を深めることではない。


僕自身、新卒で初めて任された仕事はSEOであったが、SEOの専門知識をつけることよりも、

①データから最適な戦略を導き、

②読者に刺さる記事を科学し、

➂自社の強みとかけ算で優位を築く

ことの方が余程重要だと感じている。


マーケティングセンスの向上への道は、


①数値を基に優先順位をつける癖をつけ、

②人間の心理について座学と日常から学び、

➂企画の種を日々収取する。


のような、地道な修行の積み重ねである。


~fin~

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