見出し画像

無風の場所でモメンタムは生まれない 【#59】


新刊『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』(堀江貴文)が出版されます

まず初めにお知らせから。

長らくケニアで晴耕雨読の生活を送っていましたが、この度、久しぶりに編集協力で書いた本が出ます。堀江貴文さんの新刊『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』(サンマーク出版)です。

加速し続ける世界で居場所を見つけるための一冊です。面白い内容になっていると思います。ぜひご一読いただけると幸いです。今月末に出る予定となります。

制作にあたっては、日本に帰国する前、ケニアで家にこもって書き上げました。堀江さんご本人はもちろん、各章を担当いただいたnoteの深津貴之さん、voicyの緒方憲太郎さん、スペースデータの佐藤航陽さん、脳科学者の茂木健一郎さんの全員にケニアにて取材させていただきました。ありがとうございました。

これまで何度も一緒に仕事をさせていただいてきた編集者の多根さんが声をかけてくれなかったら、日本に帰ってくることさえなかったと思います。しかも、多根さんが長年活躍されたSBクリエイティブからサンマーク出版に移籍してから一発目の仕事。大事な案件に自分に信頼して声をかけてくれたのは余りある光栄な話で、気合が入りました。

感謝しかないです。タイミングと縁に生かされていると思います。

空間と時間を空けて、離れてみて。今回の仕事を通じて、あらためて自分がやるべきこと/やりたいことを見つめ直すきっかけになりました。

何者でもなかった20代の自分にベットしてくれた人たちを、今からでも遅くないから絶対に勝たせないといけない。それくらいしか明確なモチベーションが思いつきません。

人間の思考を社会に届ける

先日、三浦さんに取材していたとき、「ライターを『文章を書く仕事』と捉えるか、『人間の思考を社会に届ける仕事』と捉えるかで、仕事の可能性は一気に拡がるよ」と言葉をくれました。開眼。一気に視界が開けました。たった一つの言葉が価値観を、可能性を開花させる。本であればなおさらです。

最近、自分が考えてもみなかったタイプの仕事の相談をもらうことが多く、むしろ、クライアントに自分のケイパビリティに気づかせてもらっています。自分の仕事の枠組みを自分自身で狭めて、盲信することほどもったいないことはない。自分にとっては当たり前のことこそ、価値がある。才能に関する箴言としてずっと大切にしている、故・任天堂元社長の岩田聡さんの言葉を思い起こさずにはいられません。

自分の労力の割に周りの人がすごくありがたがってくれたり、喜んでくれたりすることってあるじゃないですか。要するにね、「それがその人の得意な仕事なんだ」って話で。

現在は書籍の編集協力はもちろんのこと、経営者のビジョンや思想を言語化し、(文字通りの聖典としての)バイブルを作る仕事にも取り組んでいます。難易度は高い仕事ですが、自分の仕事によって無限の価値を生み出せるやりがいを心の底から感じてます。

知的難易度が高い仕事ばかりがゴロゴロと転がり込んできていますが、歯を食いしばりながら、最高に楽しいんで挑めています。

絶対にバリューを出す、という使命にも似た焦燥感で起床する。

そのプロジェクトにあたるにあたり、改めて、この2週間『ビジョナリー・カンパニー』を全巻読み込みました。魂を言葉に、言葉を物語に、物語を思想哲学に。思想哲学は次なる標準、未来を創り出す。ジム・コリンズの執筆能力が高すぎて涙が出てきます。❶〜❺巻を読み込んだ上で、『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』を読むと、第一章から震えが止まりません。

たった一つの人生を“ビジョナリー・カンパニー”の探求、そして書物にまとめることにオールインしたコリンズの生き様が言霊として立ち現れてくる感覚さえある。使命が物質化した本、とさえ言えそうです。

貪るように読書してた10代は、新しい知に触れるたびに興奮したと同時に、自分の小さくて狭い世界がグラグラ揺さぶられる怖さもあった。だんだん歳をとって知識も増えてくると、怖さはなくなるけど、その分刺激も少なくなる寂しさがある。それでもなお、死ぬまで読み続けるのだろう。

『ビジョナリー・カンパニー』を集中的に読み込んでいた傍ら、その読書休憩の合間でマンチェスターC のハイライト観てて思った共通項(来年こそは絶対にプレミアリーグを現地観戦に行きたい…ブライトンの街は訪れてみたい)。ビジネスにせよサッカーにせよ、偉大な組織には“ヴィジョン共有力”がある。仕組みに根づく再現性にカリスマは要らない。

人類史上最強のスタートアップ、企業体を考えると、やはりビジネスモデルとしての徴税能力を兼ね備えた想像の共同体たる国民国家ということになるのか。であれば、シリコンバレーの起源よりウェストファリア体制を成立たらしめた歴史的経緯と必然を紐解く必要がある。死ぬまで勉強が終わらない。

本書の重要概念「弾み車の法則」は今も昔も、僕が仕事で大事にしている“モメンタム”に通じるものがある。勢いのある仕事をするから、さらなる勢いが雪だるまのごとく転がっていく。雪だるまを持ち合うから、時にムーブメントが起こる。無風の場所に立っていてはいけない。

やがて哀しきスペイン語学習

10年来、ただ隅から尊敬しているだけだった編集者の方と正面から一緒に飲んで学ばせてもらった夜。初期衝動にどこまで向き合えるか、手放さないか。突き詰めれば connecting the dotsになる人生訓を、どこまで自分勝手なオリジナリティとして昇華できるか。めちゃくちゃいい夜になった。感謝。

数日後は、長らく同業界の仲間として親交のあるWORDSの竹村さんとお茶。振り返れば、会社を作った頃から、定期的に竹村さんとゆるりとお茶をして、お互いの仕事について喋りながら、僕らが編集やライティングによって生み出せる価値の出し方を話し続けてきた気がする。どの地点を切り取っても、少しづつパワーアップできてる実感もある。

先日じぇいそるさんのホームグラウンド三重・四日市でお世話になったばかりなので、今度は僕のホームグラウンドである月島で。世界一のハイローラーイベント Triton Pokerでも活躍する台湾の有名ポーカープロ・Jamesも喜んでくれて良かった。

そういえばコスタリカを旅して以来続けているDuolingoでのスペイン語学習の継続日数が300日を超えた。言語を学ぶ続けることの意味を思い返すと、いつも村上春樹のエッセイ『やがて哀しき外国語』を読み返したくなる。

人間の仕事で最後に残る“意思決定”

視界がスクロールしても、スクロールしても、ただひたすらGoogle Docsの無間地獄、な夢から醒める。

そういえばケニアでポーカー漬けだった日々の中で、視界がポーカーテーブルでディーラーがカードを開いていく情景に埋め尽くされていたことを思い出す。人間はその時々の日常を占めるデフォルトな光景の認知処理を高速で行っているのだ。

天気が良くて気持ちがいいので、取材先まで電車を使わずに散歩する。ケニアから日本に帰って、いっちゃんというか唯一戸惑うのはタクシーのあまりの高さ。高すぎるよ。リアルにケニアの5倍は高い。

自分の選択次第で、今この瞬間ケニアにいたかもしれないし、ラスベガス、コスタリカ、あるいはウルグアイに居たかもしれない。”かもしれない”の無限の集積の上に今があることの不感症になっちゃいけないな。と、丸の内のカフェで思う。

ここから先は

1,191字 / 1画像
この記事のみ ¥ 500

ケニアで無職、ギリギリの生活をしているので、頂いたサポートで本を買わせていただきます。もっとnote書きます。