見出し画像

本を書き続ける男、本を読み続ける男

ケニアにやってきてから、早いもので、もう一年以上が経った。

この間、ぼくは経営していた会社を畳んで、毎日ポーカーに明け暮れ、家にいる間はずっと本を読みふけっていた。

ケニアにやってくる前の一年ほどは体調を崩し、会社はメンバーに任せきりで、本を読む気力さえなく、ただ寝転びながら、どうにか明日がやってくるのを待ちながら過ごした。

体調を崩す前はといえば、全力疾走で毎日を駆け抜けていた。仕事とプライベートのオン/オフもなく、寝ているとき以外、ほとんどの時間なにかしら“書き”続けていた。

ぼくがライターを始めたきっかけや、そこから新卒でリクルートに入社して、すぐに退社して独立し、会社をつくるまでの経緯は下記のnoteに詳しい。

ライターとして関わる媒体は幅広い。本や雑誌といった紙媒体から、ウェブ、はたまたその雑種的な知見を求められ、ワークショップやイベントに識者的な立ち位置で呼ばれることもある。ぼく個人としても、そのすべてに満遍なく関わりながら、日々活動をしていた。

なかでも、思い入れの深い仕事はやはり、本の制作にライターとして関わったことだろうと思う。

ライターとして関わらせていただいた本のなかでも、真っ先に思い出すのは『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文、落合陽一)だ。

この本が売れに売れたおかげで、ライターとして本の制作の依頼をいただく機会が段違いに増えた。会社として本以外の、たとえばオウンドメディアの運用、なども続けながら、コンスタントに本の制作には関わるようにしていた。

YouTubeをはじめ、本というコンテンツフォーマットにかぎらない情報はいくらでも溢れている。それでもやっぱり、ぼくは本が大好きだ。

本がなければ、いまの自分はないと断言できる。学生時代は呼吸するように、あらゆる本を貪った。何気なく目にした言葉、フレーズ、考え方それを起点に、自分なりの思考を陶冶させてきたように思う。

読む、書く、話す、そして生きる、このすべては繋がっていると信じて疑わない。新しい言葉を手にするから、新しい思考を手に入れ、行動に移し、人生が展開していく。大げさにいえば、ぼくにとって読書は、酸素や血液くらい、なくてはならないものだ。

✳︎

時計の針を3年ほど前に戻す。

ぼくは渋谷のホテルを転々としていた。主には宇田川町の東武ホテルを拠点に、部屋にこもっては原稿と格闘する毎日だ。ちなみに、このホテルは一階にプロントがあったり、近くにユニクロがあったりと、何かと便利なのだ。

ホテルには、ぼくが独立して最初にアシスタントになり、共にモメンタム・ホースを立ち上げたライターのオバラさんを呼び出す。

もちろん、本の方向性だったり全体感については、ぼくも全力で関わる。ただ、時間が経つにつれ、具体のライティングは、徐々にオバラさんにほぼすべて任せるようになっていった。

初めて彼に会ったとき、ライター志望なのに「ほとんど本を読んだことがない」と言っていたときは、正直、閉口しかけたが。猫の手も借りたいほど繁忙だったので、そんなことも言ってられない。

当初は、文字起こしのような簡単な作業を請け負ってもらいつつ、課題図書を設定し、実践経験と並行しながら基礎体力を上げてもらうことにも努めた。文字通り二人三脚の日々だ。

原稿執筆と取材の無限往復、夜は仕事の反省も兼ねたご飯。毎日行動を共にしていくうちに、彼もめきめきとライターとしての力を身につけていった。ぼくらが制作に携わった本がベストセラーになった折には、祝勝も兼ねて海外に行くこともしばしばあった。

たとえるならば、毎日が文化祭のような慌ただしさと高揚感に包まれていた。

大口のクライアントとの契約が切れた際は、ふたりでルノアールに無言で佇まい、「俺たち終わったな」といった会話を交わしたことも一度や二度じゃない。それでも、なんとか目の前の仕事に食らいつき、モメンタム(勢い)の火種を消すことなく、走った。

✳︎

そして、ぼくは倒れた。というか、ある日突然、動けなくなった。

動けるようになって、ぼくはケニアにやってきた。冒頭にも書いた通り、この間に会社はクローズし、ぼくはもう基本的には書く仕事に携わっていない。ぼくはまた、“本を読み続ける男”に戻ったわけだ。

それでも、彼はまだ走り続けている。書き続けている。来る日も来る日もパソコンに向かい、原稿を作り続けている。

課題図書を読ませ、原稿に赤字を入れ、共に汗を流した日から、思えば遠くにきたものだ。

そう、ぼくはいくつかの本の制作に携わり、形として本を残せたことよりも、オバラさんのようなライターが(育てられたとは一ミリも思っていないけれど)今でも活躍してくれていることの方が何十倍もうれしい。

いまにも難破してしまいそうな二人乗りのボートに乗り込み、行く先も分からぬままかいを握り続けてくれたこと、漕ぎ続けてくれたことに感謝を表したい。

一番最近のnote「生きるより、続けることの方がむずかしい」でも触れたように、命をくべて続ける何か、にこそ生き方は表出すると思う。継続は美しい。

ライターとして日夜動きを止めぬ、そんなオバラさんが制作に携わった最新刊『Work in Tech! ユニコーン企業への招待』が今月発売されたそうだ。

たいろーさんが言うことには、これからやってくるのは、「テクノロジーが世界をのみ込む時代」です。

あらゆる産業にテクノロジーが浸透し、もはや「IT業界」「Web業界」という言葉すら消滅していく、とのことでした。

産業がテクノロジーに支配された時代において、テクノロジーなしで産業が成長していくことはあり得ません。

特に「人口減少に歯止めが効かない日本」では、テクノロジーが成長の原資であり、テクノロジーと疎遠な人生を送ることは、「キャリアアップ」という観点においては推奨されない選択肢になっていきます

つまり、これから年収を上げたい人や、仕事でなにかを成し遂げたい人、家族を経済的に守りたい人は、テクノロジーに支配されていく世界の流れを理解し、それとうまく付き合って行かなければいけません

つまり、『Work in Tech! ユニコーン企業への招待』は、僕のための本であり、みなさんのための本なのです

とのことです、気になった方はぜひお手に取ってみてください。

ケニアで無職、ギリギリの生活をしているので、頂いたサポートで本を買わせていただきます。もっとnote書きます。