- 内部監査に必要な「法務観点」 -
内部統制に法務観点の要素が必要であると同時に、内部監査にも法務観点が必要です。
「業務監査をするのだから、法務知識は必要なのは当たり前では?」・・・というお声が聞こえてきますね。
ただ単に「法務知識が必要」なのではなく、「法務観点(目線)」が必要なのです。
どのような違いがあるのか? 内部監査の法務観点とは?
今回はその内容を説明します。
(約5分程度でお読みいただけます。)
内部監査の「法務知識」と「法務観点」の違いとは?
日本内部監査協会は「内部監査基準」を策定しています。ここに「内部監査の本質」を記しています。
ここに「合法性」とありますので、もちろん法的な知識は必要となります。
内部監査は、会社の全部門/全部署を監査対象として、会社の規程、業務マニュアルに基づいて全業務が正しく遂行されていることを調査(監査)・評価します。
この規程、業務マニュアルですが、外部の法律専門家(弁護士、社会保険労務士など)を招いて定期的に見直しを行い、いつでも適法な内容の規程等となっている・・・というような会社は多くはなく、通常は、法改正の情報を顧問弁護士や法務関係の外部委託先から聞き、その法改正と並行、または改正後しばらく経って規程等を改訂するのではないでしょうか。
内部監査の「法務観点」とは?
さて、この法改正後で内部監査を行ったとしましょう。
例えば、被監査部門の業務が、これまで適法だった業務が、法改正後には適法ではなくなったとき、内部監査は、改めて規程等を確認したところ、法改正に伴って改訂されていたが、被監査部門の業務マニュアルではその改訂が間に合っておらず、適法ではないまま業務が遂行されていたことがわかりました。
法務知識の内部監査の場合、このときの監査結果は、法令、規程等に照らし、「不適合/不備→改善指示」と監査報告を作成することとなります。理由は、規程改訂後に業務マニュアル改訂を行なっていなかったことの不備。業務が適法に遂行されていないことの不適合/不備、となります。
対して、法務観点の内部監査はどうでしょう。
監査結果は法務知識の内部監査と同様「不適合/不備→改善指示」となりますが、その結果を出す前の過程が少々違います。
この不適合/不備の程度はどのくらいか?
この不適合/不備の発生原因はなにか?
この不適合/不備を治癒するためには、何が必要か? など。
上のような項目を、被監査部門だけでなく関係する部門や管理部門に確認して全社的な根本的解決の道を模索して原因を究明し、必要に応じて各部門と連携をとってこの改善事項の解決と原因の解消をサポートしていく体勢を作ったうえで、監査結果を出します。
話は逸れますが、 " 観点 " とは、
これを、法務知識の内部監査と法務観点の内部監査に当てはめてみましょう。
法務知識の内部監査では、監査結果の判断の根拠を「法令」とし、これを「法令」の立場で監査結果を出しました。
法務観点の内部監査では、監査結果の判断の根拠を「法令」とし、これを「会社」の立場で監査結果を出しました。
この違いがおわかりでしょうか。
同じ監査結果なのですが、その内容に相当な差が出てきます。
この記事の冒頭で「内部監査基準」を示しました。内部監査の目的は「組織体の経営目標の効果的な達成に役立つこと」です。「公正かつ独立の立場」、「客観的意見」ばかりが目立ちますが、これらはあくまで機能であり、その上に立つ目的を見失ってはなりません。
よく耳にする話で、被監査部門から「内部監査はいつも他人事だ」と言われることがありませんか?これは先に記述しました「法務知識の内部監査」が色濃く出てしまったケースかもしれません。
内部監査も内部統制も、重要なのは「法務観点」
今回を含めて、内部監査も内部統制も「法務観点」が必要であることをお話ししました。これほど繰り返し「法務観点」をテーマに挙げましたのは、最近ガバナンス体制をおざなり(ひとまず内部監査がいる、など)にしたために、不祥事が発覚した事案が、多い傾向にあると見受けます。(*ちなみに、その事案発覚の発端が " 内部通報 " であることにも注目です。)
財務諸表上は数字が合っているものの、その商流のあやうさや、経費等の支払先である取引先を関連当事者の目線で監査していなかった等・・・
やはり会計監査だけでは洗い出せない指摘事項がある、ということが浮き彫りになっているのです。
ガバナンス体制の構築/再構築や、リスク・コントロールの拡充を図りたいとお考えのときは、ぜひこの「法務観点」を忘れないようにしてください。
もし、会社の周囲にその「法務観点」を持った方がいらっしゃらないときは、ぜひ外部委託をご検討ください。
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