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② 父の肉体との別れ

正確には、
「父が亡くなった」ですが、
私の心の中で父の死を受け入れられていないようで、
「消えてしまった」ような感覚でした。

そのため、
タイトルは「父の肉体との別れ」としました。

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【 葬儀 】

母がとにかく早く動いてくれて、
葬儀も直ぐに手配されました。

この辺りの事は
本当に目まぐるしがった事しか記憶がありません。

悲しみに浸る暇もなかったような気がします。

父は、春頃から入院していたので、
「父が家にいない生活」には慣れていました。

違うのは、
この世のどこかに父がいるか、いないか。

父が死んだ、
というのは分かっていましたが、
ぼんやりとです。

葬儀でお経を聞いていても、
パッとせず。

通夜・葬儀では、
まだ高校生でしたので喪服ではなく制服を着て、
妙に長いお経を聴きながら
親族席に座ってじっとしていました。

母や弟が泣いていたかどうかは覚えていません。

とにかく驚いたのは、
思っていたより遥かにたくさんの方々が
参列してくださった事で…。

父は会社のストレスでお酒やタバコの量が増え、
恐らくそれらにより病気になったようでした。

が、
そんな父は、
取引先の方や下請けの方々にとても親切にしていたそうで、
そういった方たちが参列してくださり、
予想外の参列数となったのでした。

私と弟の友達もかなりの人数が参列してくれました。

一人の人間の死で、
その繋がりの人々がここへ集まる…

なんというか、人って温かいのだなぁと、
ありがたい気持ちになりました。

「人は死んだ時にその人の価値が分かる」

と、何かで読んだことがありますが、
この事なのか、と実感しました。

父の娘で良かったな、と
心から思うと共に、

あ、死んだのか…もう会えないのか…と、

少し実感が湧きました。

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【 火葬・肉体との別れ 】

もう少し深く父の死を自覚したのは、
火葬後です。

祖父母等の火葬は経験がありましたが、
それまで近くにいた人の骨なんて
考えただけでも怖くて直視できません。

火葬前の最後の別れは、
言葉では言い表せない、
なんとも言えない心情でした。

死化粧してもらって、
まるで生きてるかのようなだし、
これをあの熱い炎の中に入れて、焼く?

様々な美しい花々や、
父の好きだったタバコ、お酒、
父の大好きだった、似合ってるような似合っていないような変な麦わら帽子…
メガネや思い出の品々とともに
暗闇の中へ入れられる棺…

重くて硬い鉄の扉が閉まり遮断され、
それ以降、
もう二度と父の肉体を見ることは
出来なくなりました。


火葬は数時間要し、
人の体は相当水分があるんだな、
と考えたりしながら待ちました。

火葬が終わり、
出てきたのは私の知っている父ではなく、
カラッカラになった
炭のようなコロコロした骨たち。

ふぅーっと吹いたら飛んでいってしまいそうな
カスのような骨たち。

これが父?

直ぐには受け入れられませんでした。

住職が、
「これが喉仏で…」等と、
色々説明してくれました。

そして、
あんなに背の高かった父の骨は、
両手で持てるほどの小壺へ納められ、
ただの「モノ」になってしまいました。

とにかく一番大変だったのは母で、
葬儀の手配やら、病院の手続きやら、
役所やら…
やる事が多すぎて、よくやり遂げたなぁと、
今、自分が大人になって、
母は凄い、と感謝しています。

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高校3年の私は、
ちょうど一学期の期末試験直前の事だったので、
期末試験は受けずに忌引で高校を休みました。

不謹慎ですが、
期末試験から逃れて内心ほっとしていました。

そして、
期末試験期間中なのに、クラスメイトが数名、
自宅までわざわざ来てくれました。

高校の友達は決してその辺の近所でもないわけで、
本当に感謝してもしきれませんでした。

人が一人死ぬだけで、
沢山の人が動くというのをこの時知りました。

病院の方々、お寺さん、葬儀屋さん、
本人の所属していた会社、親族、
家族の友人や職場の方々…

人の死は本当に大きなものなのだと、
父に教えられました。


明確にこれが、とは言えませんが、
私の心の中のネジが外れてしまったのは
恐らくこの辺りからだったのかな、と思います。

人間はショックすぎる事があると
それを受け入れられないというか、
そこだけ何故か遠い所から眺めるような…

上手く言えませんが、
私もなんとなく
そういう感じなのかも知れません。

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父は私が41歳になった今も、
ちょこちょこ夢に出てきます。

20歳前後の頃は、
何か悪い事をしようとする前に夢に出てきました。

数年経ったある時、
仙人のように髭がもじゃもじゃになった父が
夢に出てきました。

もしかすると、
その辺で仏様か何かになったか、
他の誰かとして生まれてきたか、
何らかの変化があったのかな?と思いました。

残念ながら、
私にはそういったものを察知する特殊な能力はないのですが…。

時折、父が夢に出てきてくれるので、
見守っていたりしてくれているのかな?
と思っています。


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