現代版・徒然草【40】(第185段・馬乗り)
今日は、鎌倉時代の蒙古襲来の時期に生きていた安達泰盛のお話である。乗馬の名人と言われていた。
原文を読む前に、一言説明しておくが、肩書である「城陸奥守」というのは、秋田城介(あきたじょうのすけ)と陸奥守の2つの役職を歴任したことから、そう呼ばれている。
では、読んでみよう。
①城陸奥守(じょうのむつのかみ)泰盛は、双なき馬乗りなりけり。
②馬を引き出させけるに、足を揃へて閾(しきみ)をゆらりと越ゆるを見ては、「これは勇める馬なり」とて、鞍を置き換へさせけり。
③また、足を伸べて閾に蹴当てぬれば、「これは鈍くして、過ちあるべし」とて、乗らざりけり。 ④道を知らざらん人、かばかり恐れなんや。
以上である。
①の文から分かると思うが、双なき馬乗りだから、泰盛は名人である。
そして、②③の文では、名人ならではの馬の見極め方が紹介されている。
②では、馬を厩舎から出すときに、脚を揃えて敷居をジャンプしたのを見て、「これは暴れ馬だ」と判断して、別の馬のほうに鞍を置き換えたという。
③では、脚を伸ばした状態で、敷居を越えきれずに当ててしまった(=敷居を越えるには脚を浮かそうとして曲げる必要があるのにタイミングが悪かった)のを見て、「この馬は鈍いから、失敗しそうだ。」と言って乗らなかったという。
最後の④の文で、「専門的なことを知らない人は、こんなふうに恐れはしないだろう。」と兼好法師は締めくくっている。
何事もそうであるが、仕事にしても、専門的なことを知らない人が自分の判断でやってしまうと、技術的なことなら大ケガに至ったり、多くの人に迷惑をかけてしまったりする。
現代においても危惧されるのは、しっかりと大学で学んでいない新社会人が基本的なことを知らずに過ちを犯してしまうことであったり、代々引き継がれているマニュアルどおりに、手順に従って行わない人が一定数いること(若い人に限らない)である。
場合によっては、重大な事故に発展するかもしれないという危機感を持って、事に当たってほしいものである。
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