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お話の部屋

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好きな本や、マンガの感想と自分で書いたお話の部屋。
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記事一覧

魔王のキッチンで健康料理❺

魔王のキッチンで健康料理❺

エピソード5: 「魔王のキッチンで健康料理 」

第一王子カイルはラークたちを従えて灼熱平原へ向かっていた。今回は反乱軍と小競り合いになる可能性が高い。だが彼らは正面から激突する可能性は低いと考えていた。今の反乱軍の戦力では魔王軍に到底叶わない。むしろカイルたちの方こそあわよくばこの機会に反乱軍を掃討して後顧の憂いを絶っておきたいところだった。だが、反乱軍は平原の中に巧妙に潜み、反撃の機会を狙って

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魔王のキッチンで健康料理❹

魔王のキッチンで健康料理❹

エピソード4: 「潜入者の葛藤」

「ねぇリシャール。あなただったら、城の南西から攻めてくる?」
リシャールの部屋をエミルが訪れていた。
知的好奇心が旺盛なエミルは賢い軍師が現れたと聞いた時からしばしば彼の元へやってきて根掘り葉掘り聞いてゆく。エミルにとってリシャールは家庭教師のような存在。彼との会話はとても楽しいものだった。

「そうですね。兵力のほとんどがそちらにある以上、限られた兵力を分散さ

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魔王のキッチンで健康料理❸

魔王のキッチンで健康料理❸

エピソード3: 「魔王のキッチンからアイスクリーム」

侵入者騒ぎのあった翌日から、菜々美は昼間は厨房で働き、夜はリリアンにハーブティを淹れて、与えられたリリアンの控えの部屋で寝るようになった。
菜々美が主に生活する魔王城の厨房と、魔王の子供達の部屋がある「奥向き」と呼ばれているエリアには厳重な結界が張られており、外のモノは滅多に入って来られないようになっている。
しかし第一王女リリアンの元には様

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魔王のキッチンで健康料理❶

魔王のキッチンで健康料理❶

あらすじ

OLとして働いていた菜々美は、ある日突然異世界に召喚される。新しい世界で彼女が気づくと、そこは魔王の城の厨房だった。魔王ヴァルガスは、強大な魔力を持ち非常に恐れられていたが、実は優しい心の持ち主だった。菜々美はなぜか使えるスマホアプリ「デ◯ッシュキッチン」を駆使して、健康的で美味しい料理を作り始める。そして魔王の困った5人の子供たちも、はじめは菜々美に対して冷ややかな反応だったが、徐々

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魔王のキッチンで健康料理❷

魔王のキッチンで健康料理❷

エピソード2: 「渦巻く陰謀」

「ちょっと、私に黙って何か楽しそうなことしてたんだって!」
厨房に第二王女エミルがやってきた。
言い方はキツイが好奇心で溢れている。長老たちの食事会の噂を聞きつけて飛んできたようだ。

「姉上もやる?面白いよ」

いたずら盛りのフィンは、長老たちに「グリモパン」の受けが良かったので得意になって新しいデザインの「グリモパン」を作っていた。今度は横顔だ。
ルナもフィン

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居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜1/5

居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜1/5

【あらすじ】
主人公・鈴木ハルカは、就職活動をするものの失敗ばかりで、大学卒業後、やりたいことも見つからずにいた。そんな中、彼女に振られ、白いワンピースを着た女が落としたスマホを渡そうと追いかけて道に迷っている最中、突然目の前が真っ白になった。どうやら彼が飛ばされた先は、異世界のようだった。そこはオニや獣人、魔物が存在する異世界。いきなりオニに狙われ殺されそうになるハルカ。彼はこの異世界である人物

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居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜2/5

居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜2/5

ナオトはメニューを考えながら、今日は少し頭を抱えた。
「何かもう一品、加えておきたいなぁ。」
アイデアが思い浮かばないようだった。
ハルカは思わずつぶやいた。
「あのう、参考になるか分からないですけど、僕があちらでアルバイトしていた居酒屋では、『悪魔の半熟煮卵』っていうのが人気でしたよ」
シンヤが驚く。
「魔族の料理が人気だったのか?」
これには、逆にハルカが驚いた。
「もしかしてここには本物の悪

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居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜3/5

居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜3/5

3 盗難届

ナオトとハルカが卵を買って店に戻ると、ちょっとした騒動が持ち上がっていた。常連のケンタが店に忘れものをしたと言って探しに来ていた。
「大切なものなんだ」
ケンタが忘れたと言ったものは小さな猫用の首輪だった。
「お客さんから預かったものなんだ」
ケンタは明らかに動揺していた。
「行方不明になった猫を探して欲しいと頼まれて、その猫の首輪を預かったんだけど…。」
ケンタの職業は探偵である。

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居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜4/5

居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜4/5

4 炎の魔石

夜中にまちが騒がしくなり、七丁目の空が赤く染まった。
周囲は火事の熱で熱くなり、火の粉が広い庭越しに近隣の屋敷へも飛んできたと言う。
火事はなかなか消し止めることができないようで、七丁目の空は夜通し赤く染まったままだった。
翌朝、シンヤが町会で奥方は大火傷をおったが命はとりとめたようだ、と聞いてきた。
火事が多発しているために緊急で召集がかかったのだ。
町会長の情報によると、奥方は

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居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜5/5

居酒屋「よりみち」商売繁盛記〜失敗から始まる新たな人生〜5/5

【 エピローグ 】

「まぁ。ミイちゃんには兄弟がいたのね。」
フレイアは驚いたように言って目を細めた。
まだベッドから起き上がれないフレイアによく見えるように赤い首輪をしたトリエグルをハルカが抱き上げる。
おとなしく抱き上げられたトリエグルはそのままフレイアのそばにいきたいそぶりを見せたので、ハルカはトリエグルをフレイアの布団の上に置いた。

今日、ハルカたちはアリサに段取りをしてもらって、コル

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【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 あらすじ

【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 あらすじ

全寮制の竹取学園中等部へ転入してきた「大星煌」。彼は幼い頃に両親を無くし祖父母に育てられていた。しかし事故で祖父母が突然亡くなってしまう。そこで煌は父の従兄弟であり、友人であった竹取学園の園長に引き取られることとなった。時折光の妖精のようなものが見える「煌」。彼のその力を狙う謎の影。彼はそこで自分には妹「カグヤ」がいることを知る。どこかに生きているかもしれないカグヤと自分の出生の謎を求めて煌はクラ

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【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 Chapter1−1 喪失

【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 Chapter1−1 喪失

今年の冬は例年よりも雪が多い。
「観測史上初めて」と言われる吹雪の二日間を経て、ようやく気温が緩んだ朝であった。
教室の窓から見える校庭の木々の梢が太陽の光を浴びてキラキラと光るのを見ながら、煌の耳の奥ではまだ昨晩の吹雪の音が 渦巻いているように感じていた。あれは幻聴か?夢だったのだろうか?
「ニゲテ…」夜の底から吹いてくるような風の唸りに細い女の声が混じっていたような気がした。

 煌が4キロ

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【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 Chapter1−2 竹取学園の秘密

【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 Chapter1−2 竹取学園の秘密

竹取学園の授業は朝10分間の英語の発声から始まる。
竹取学園は煌が通っていた中学とは随分勝手が違っていた。
ショッピングモールのようだと言われる校舎内。中央にはアトリウムと図書館。メディアセンターや体育棟も充実しており、地階には温水プールもある。グラウンドも人工芝の面があり、体育棟の屋上にはフットサルコートもある。そして、植物園のようだと言われる大温室。
校風は自由闊達。建学の精神が「立志・開拓・

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【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 Chapter1−3 竹取魔法とタマゴ

【#ジャンププラス原作大賞】      全寮制竹取学園園芸部 Chapter1−3 竹取魔法とタマゴ

「まずは自分と対話するためのスキルを習得するように」と『メデューサ』は煌たちへ告げた。そしてそのまま瞳を閉じて反応しなくなってしまった。『メデューサ』が瞳を閉じると再び三人の前に紙の蝶(MB)が現れた。蝶の導きで丸い扉から外に出た三人は、そこが元来た廊下(学園のサーバールーム奥に置いてある掃除用具入れにつながっていたはず)ではないことに気がついた。扉の外へ一歩踏み出したら、本当の意味で屋外、竹藪の

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