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アパレル店長物語 Epi.7:魚は泳ぎのレッスンを必要としないが、陸を歩くことはできない。

大きな教訓を学ぶためには、時にはこれまで学んだことを破壊する必要があります…。

前回のあらすじ:

その頃購読していたあるメルマガで、ビジネスの基本3原則である新規顧客開拓、客単価向上、リピーターの重要性を学びました。ある日、給与を上げるために何をしたらいいのか? コンサルタントをしている知人のTさんに相談すると、「月給100万円の店長なら何をする?」という質問を受け、ホームページ作成に挑戦することを決意。電気屋でホームページビルダーを購入し、5日間で店舗のホームページを完成させました。この挑戦は私にとって新たな成長の一歩となりました。 

さらに、渋谷店にドレッドヘアの個性的な新人スタッフOさんが加わり、彼女の独特なスタイルやセンスが新たな視点をもたらしました。Oさんとは高校が同じで、偶然の一致に驚きつつ、彼女からファッションについて学ぶことを楽しみに感じました。この経験を通じて、ビジネスにおける新たな戦略と成長の可能性を見出しました。

3.7 BLOGとの出会い

2004年4月、私の前職の飲食店の店舗が入っていたビルの管理部門に勤めていたUさんが、有名な広告代理店へ転職することになり、送別の食事に誘われました。彼はそのビルのホームページ制作も担当しており、時代の先駆者といえる人物です。

私がアパレル店長として、メルマガや携帯サイト、ホームページを作った話をすると、「僕は最近ブログを始めたよ」と言いました。彼はジュゲムブログというサービスを利用しており、「きっとブログに興味を持つだろうから、今から家に行ってブログの解説を手伝ってあげるよ!」と提案してくれました。私は引っ越したばかりで、家が山手線沿線ということもあり、彼も新しい家を見たいというのです。彼は私より5歳年上で、結婚もしたばかりでしたが、彼のブログへの情熱に押され、私は家に招待することにしました(笑)。

パソコンを立ち上げ、まず彼のブログを見せてもらいました。最初の印象としては、個人的に感じたことや出来事を綴っているような、いわば、ネット上の日記という感じでした。 

それから、彼は私のIDを作ってくれました。すぐにブログを始めるかはわかりませんでしたが、毎日日記を書き、自分の発信ができるという新しい世界を知ることができました。そしてこれがまた私のライフワークの始まりとなったのです。 

3.8 店長としての成長への道

メルマガ、携帯サイト、HPを始めたものの、すぐに結果が出るわけではありません。そんな中、直属の上司との面談で、私が実験的に始めたHPのことが指摘されてしまいました。検索にも上がるでしょうから、こういう日が来ることは覚悟していました。

「会社のブランディングに影響が出るかもしれないから、HPはやめた方がいいと思う」と言われました。セールスを上げるためのアクションでしたし、上司も言葉を選んで言ってくれたのだと思います。しかし、始めてまだ1か月で、顧客からも更新を楽しみにしているとの声があり、すぐに辞めたくはありませんでした。

同時に、新たな戦略を考えなければならないと感じました。HPやメルマガを使わずにセールスを上げるためには、自分に何が必要なのか? やはり、「店長が何をすべきか」を知らないことが最大の原因だと思いました。それには、研修でスキルを学び、現場で活かすことが必要です。

私は早速、インターネットで店長研修を探し始めました。そして、有名なコンサルティング会社が主催する10万円の店長研修を見つけました。前職では研修の機会が当たり前にあったので、こちらも提案すれば、アパレルの会社も研修費を出してくれるかもしれません。次に社長と会う機会があれば、相談してみようと思いました。

3.9 感性を磨きなさい

2004年5月、銀座店近くのカフェで久しぶりに社長とミーティングの機会がありました。いろいろと新しい挑戦を始めていましたが、勝手にメルマガやHPを始めたことについては言及できず、目に見える結果にも結びついていないため、気まずさを感じていました。

意を決して、最近考えていることを社長に話してみました。「店長の仕事についてもっと学ぶ必要があると考えています。ある店長研修をインターネットで見つけたのですが、行かせてもらえませんか?」と。

部下からの積極的なアプローチは歓迎されると思いましたが、社長の返事は予想外でした。「前職のことは忘れてください。それよりも、感性を磨いてください」と冷静に言われました。さらに「自分の頭で考えなくてはいけない」と続けました。

頭の中が真っ白になりました。マニュアルや誰かに教わること、本を読んでノウハウを学び、結果を出すことが当たり前だと考えていたのに、その方法がなぜダメなのか? 経験していないことについて、やり方を知ろうとすることの何が悪いのか? 全てが否定されたような気持ちになりました。

「感性を磨く」とは具体的にどうすればいいのか? それに前職のマネジメントスキルを買われて入社できたのに、全てを忘れるとはどういう意味なのか? 最近、前職のスーパーバイザーから紹介してもらったアパレルの経営者のKさんに電話で相談してみることにしました。「感性」という言葉を一番知っていそうだからです。

社長とのミーティングのことを話していると涙が溢れてきました。そしてKさんに「感性を磨くとはどういうことですか?」と質問しました。

Kさんは言いました。「感性を磨くとは、何を見るときも『なぜだろう?』と考えることだよ。例えば、電車の広告を見たときに『これは誰に向けての広告だろう?』とか『このキャッチコピーは誰にヒットするだろう?』とか、『なぜこう作ったのだろう?』と作り手の想いを想像することだよ」と。

そう言われて初めて、自分の頭で考えることの意味が理解できました。これまで、自分の思うままに表現したり、他人のアイデアを参考にしたりしてきましたが、「なぜだろう?」と深く考え、自分の答えを出すことの重要性に気づいていなかったのです。自分が考えることを避けていたことを思うと、浅はかで情けなく感じました。

思い返せば、社長と銀座109に行ったときに「なぜだと思う?」と問いかけられていたのに、それでも気づけなかったのです。また、取締役が言った「やったことと、成長したことは違う。成長とは、新しいことに挑戦することだ」という言葉も、今になってやっと理解できました。 

私は過去の成功体験にしがみつき、「マニュアルがあれば成功できる」と信じていました。しかし、それでは本当の成長は得られません。私は誰かの正解を探すことに必死でしたが、前職の上司や相談に乗ってくれた新しい知人たちは、私に問いかけや新しいツールを紹介してくれるだけで、アパレル店長として何をすべきかの答えを持っていなかったのです。これはある意味、幸運だったのかもしれません。

過去の成功を捨てることが真の成長への道です。私はついに、本当の成功は他人を模倣するのではなく、自分自身の経験を作り、自分で考えることから生まれるのだと気づきました。

でも、そう考えると気持ちがとても楽になりました。前職の経験にこだわらなくてもいいのですから。全く新しいことに取り組むことだけを考えればいいのです。そして、今出会っている人や新たに出会う人たちと共に、新しいアイデアを創造していくことになるのです。

■編集後記

「感性を磨きなさい!自分の頭で考えなさい」本当にそうです。この言葉で目覚めて、自由に泳げるようになりました。(笑)

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