クイズと共に「本屋大賞」についてのコラム

Q1.読書好きな方ならみんな大好き「本屋大賞」。では、第一回目の本屋大賞を受賞した作品は、誰の何という作品でしょう?

Q2.2005年と2017年は、同じ人物が受賞していますが、それは誰でしょう?

Q3.2013年と2014年の受賞作のタイトルにはある共通点があります。それは、どちらもある共通したワードが付けられていますが、それは何でしょう?


※正解は記事中及び最後に。


ルカです。

本屋大賞いいですよね。嫌いな人はいないと思います。

ちなみに私は、2004年の第一回受賞作である、小川洋子さんの『博士の愛した数式』から、この記事を書いている2022年時点で最新の受賞作である、逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』まで全て読んでいますが、みなさんはいかかでしょうか?

本屋大賞は2004年に創設された、文学に関する数ある賞の中でも比較的新しい賞です。それにもかかわらず、本屋大賞は芥川賞・直木賞に引けを取らないくらい、毎年のように注目されます。

むしろ、現在では、芥川賞や直木賞を受賞した作品よりも、売上部数が伸びる賞として大きな注目を集めています。

その魅力といえば、やはりその選考方法にあるのではないでしょうか。

普通、こうした作品の評価や選考というのは、作家や小説家、編集者といった、いわゆるプロが行うものです。事実、芥川賞や直木賞の選考委員は、有名な小説家が名を連ねていますよね。そういった方々から評価されることになるので、晴れて受賞作となった作家さんはもちろんのこと、ノミネートされるだけでも大変光栄なことといえるでしょう。

しかし、しかしですよ?評価や選考を行うのが、名だたる有名な作家さんということは、当然ながらそこには「プロの目」が入っているわけです。では、読書するすべての人が、プロのような肥えた目を持っているでしょうか?持っているわけないですよね……。

もちろん、プロの作家さんが集まって評価、選考を行い、その結果として賞を受賞した作品は素晴らしいものであるのには違いはありません。しかし、多くの読書好きな方は「素人」なのです。私たち素人に、プロの作家さんたちの評価の全てを理解することは難しいのです。それが、良い評価の場合はもちろん、批判的な場合であっても、です。

その点、本屋大賞はどうでしょうか?

本屋大賞の最大の特徴は、「全国の書店員さん」が評価や選考を実施するという点です。

本屋大賞にキャッチコピーがつけられているのはご存知でしょうか?

「全国書店員が選んだ いちばん! 売りたい本」というものです。様々な本に囲まれた生活を送り、「本と読者を最もよく知る立場」といえる存在である書店員が選ぶことから、こういったキャッチコピーがつけられています。

この、「本と読者を最もよく知る立場」というのが、本屋大賞という文学賞を支える根幹のようなものといえます。つまり、書店員は「私たち読者に最も近い目線」で受賞作を選考することになります。これだけでも、芥川賞や直木賞よりもより身近に感じる文学賞という感じがしませんか?

そもそも、この本屋大賞が2004年に創設された理由の一つが、前年2003年の1月発表分の直木賞が「受賞なし」に終わってしまってためと言われています。

今日に言われるような、いわゆる出版不況は今に始まった話ではなく、娯楽が多様化した2000年代初頭から既に始まっていました。当時は電子書籍も十分発達していないにもかかわらず本が売れず、書店も数を減少傾向にありました。

そして、本を売る絶好の機会である芥川賞・直木賞の発表であるはずが、上記した通り、2003年1月分発表(2002年下半期)では受賞なし。これではいけないと、当時「本の雑誌社」の営業部であった杉江由次氏が、普段自分が関わる書店員の声を拾い上げるために設立を思い付いたのが本屋大賞であったのです。

繰り返しになりますが、この「書店員の声」というのが本屋大賞の大きな特徴であり、最大のアピールポイントでもあります。普段から大量の本と接する書店員が「売りたい!」と推す本が、つまらないわけないですからね。

こうして2004年に産声を上げた本屋大賞。先述した小川洋子さんの『博士の愛した数式』を皮切りに、毎年ベストセラーとなるような作品がノミネート、そして受賞しています。元々話題となった本はもちろん、本屋大賞をきっかけに知った作家さんも多いのではないでしょうか。

ちなみに、毎年ノミネートされた作品の中で、一位となった作品が本屋大賞を受賞することになりますが、この本屋大賞を2回受賞した人がいます。それは2005年に『夜のピクニック』、2017年に『蜜蜂と遠雷』でそれぞれ受賞した、恩田陸さんです。

また、本屋大賞と直木賞がをダブル受賞した人物もいて、それは2012年に『鍵のない夢を見る』で直木賞を、2018年に『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞した、辻村深月さんです。

他にも、2008年に受賞した伊坂幸太郎さんは毎年のように何かしらの作品がノミネートされていますし、また本屋大賞部門の他にも、「発掘部門」「翻訳小説部門」「ノンフィクション部門」も設けられていたりと、話題に事欠くことはありません。

書店員が売りたい、推したい本というのは、普段本屋さんに足を運ぶ私たち読者の感覚にも近いと言えます。このことは、最低限の「娯楽性」が保証されているとも捉えることができ、多くの受賞作、ノミネート作が映像化、漫画化されるなどのメディア展開がなされています。

一方で、本屋大賞は書店員が投票で選ぶという選考方法ゆえに、「突出した作品が出てきづらい」「奇抜な作品はノミネートすらされにくい」などの批判があり、良い意味でも悪い意味でも本屋大賞は、「無難な作品」が選ばれる傾向にあるとも言えるでしょうか。

大切なことなので何度も繰り返しますが、本屋大賞は書店員=私たち読者の目線で選ばれる文学賞です。それゆえ、自ら出版業界に携わる書店員が売りたいと思っている本というのは、熱意からして相当なものであると、私たち読書も感じ取ることができますよね。

今まで、本や読書は好きだけど本屋大賞には注目していなかったとか、次読みたい本がなかなか見つからないといった方がいらっしゃれば、ぜひともこのコラムを機に本屋大賞について調べてみてはいかがでしょうか?

新しい本との出会いを見つけることができますよ。

また、先述した通り、本屋大賞部門の他にも、「発掘部門」「翻訳小説部門」「ノンフィクション部門」もあるので、チェックしてみてくださいね。

最後に、このコラムを書いている2022年までの本屋大賞の受賞作をおさらいしましょう。

2004年『博士の愛した数式』小川洋子

2005年『夜のピクニック』恩田陸

2006年『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー

2007年『一瞬の風になれ』佐藤多佳子

2008年『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎

2009年『告白』湊かなえ

2010年『天地明察』冲方丁

2011年『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉

2012年『舟を編む』三浦しをん

2013年『海賊とよばれた男』百田尚樹

2014年『村上海賊の娘』和田竜

2015年『鹿の王』上橋菜穂子

2016年『羊と鋼の森』宮下奈都

2017年『蜜蜂と遠雷』恩田陸

2018年『かがみの孤城』辻村深月

2019年『そしてバトンは渡された』瀬尾まいこ

2020年『流浪の月』凪良ゆう

2021年『52ヘルツのくじらたち』町田そのこ

2022年『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬


※冒頭のクイズの正解は、Q1「小川洋子さんの『博士の愛した数式』」、Q2「辻村深月」Q3「海賊」でした!

ノーベル文学賞についてのコラムもございますので、興味があればぜひ!


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