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涙を浮かべて星になる #読書の秋2020

 以前は最近読んだラノベとか小説とか漫画とか、軽い感じで紹介する記事を書いていたのですが、めっきりご無沙汰状態。
 こういうお題タグ、ありがたいですね。

 ということで、さっそく。

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読書の秋。

 普段暇さえあればモノカキをしていたり、モノカキのための素材を集めたり組み立てたりしている私ですが、もちろん読書もその素材——と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、そのひとつです。

 アウトプットをするにも、やはり時々はインプットもしていかないといけません。
 常にアウトプットができるということも素晴らしいことですが、そればっかりだと私のような若輩者ではすぐにいろいろなモノが枯渇してしまいます。
 それに気付かぬまま進んでいくと、それこそ砂漠のど真ん中でガス欠! みたいなことが起きないとも限りません。補給は大事な営みなのです。

 ——。

 ————。

 ——。

 だいぶ話が逸れました。

 ということで、読書も人並みにはたしなむ私が、しっかりと『読書の秋』に浸れましたよ、というお話です。


綺羅星の如く ~『満月珈琲店の星詠み』

 秋の夜長を付き合ってくれたのはコチラの作品。

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『満月珈琲店の星詠み』
著・望月麻衣 画・桜田千尋

 実は『課題図書』として設定される前に購入済みでした。

 表紙買いです。

 大好きなんですよ、こういうふんわりとした暖かさのある夜の色。
 最近の夜好性はどうも延々迷ってしまいそうな闇色をしている傾向がありそうですが、そういう宵闇に道しるべのようにぼんやりと浮かんで見える月色が好みです。

 このお話は、まさにそんな救いの手を差し伸べる月色の微笑みなのです。

 満月の夜にだけ現れる満月珈琲店では、猫のマスターと店員が、極上のスイーツやフードとドリンクで客をもてなす。
 スランプ中のシナリオ・ライター、不倫未遂のディレクター、恋するIT起業家……マスターは訪問客の星の動きを「詠む」。悩める人々を星はどう導くか。
(以上、『満月珈琲店の星詠み』あらすじより引用)


 表紙を開ければ、もうすぐそこには極上スイーツです。
『水瓶座のトライフル』『惑星アイスのアフォガード』にはじまり、『満月バターのホットケーキ』『満月アイスのフォンダンショコラ』
 とどめには『空色ビール“星空”』

 ステキですねえ。

 

 ん……?
 何でしょう?

『珈琲は?』とな?

 ご安心ください、『星屑のアイスコーヒー(朝焼けのシロップ入り)』がございます。

 いや、そうじゃなくて。
 珈琲店なのに珈琲がメインではないのですか? と。

 慌てないでください。
 お客様それぞれの星の動きを「詠」んで、メニューをお出ししますから。
 なにせ、こうですからね。


 ——『満月珈琲店』には、決まった場所はございません。
 時に馴染みの商店街の中、終着点の駅、静かな河原と場所を変えて、気まぐれに現れます。
 そして、当店は、お客様にご注文をうかがうことはこざいません。
 私どもが、あなた様のためにとっておきのスイーツやフード、ドリンクを提供いたします。

 『満月珈琲店の月詠み』導入より引用


 ということで、人生の迷い道に入りそうな人の子を、妙に達観したような風で導くのが『満月珈琲店』の従業員たちなわけです。


星は澪標のように ~『満月珈琲店の星詠み』

 一応私も、ウェブ上に自分で考えた文章をアップしている者です。
 去年から今年の頭に書けては、何度か書いた作品が特集に取り上げられたり優秀作品に選んでいただいたりしましたが、それ以降は——公募にあまり顔を出せなかったのもあり——特段何もなく。

 PVも感想なども時々いただきますが、やはりTwitterなどを見ていれば上には上がいらっしゃるわけで、文字通りに桁違いなステータスが目の前に突きつけられるわけです。

 そう。
『第一章 水瓶座のトライフル』の主人公の女性シナリオライター、芹川瑞希の心境に自分を重ねるには充分すぎました。



 大学時代は教員を目指しながらも、小説を書いたり舞台を見に行くなど文芸趣味に傾倒していたわけですが、あるとき書いた脚本が評価され、非常勤講師をしていた彼女は教師の仕事を捨て脚本家への道を歩み始めます。

 世間が彼女の作品を求めていたのでしょう、時代の寵児——とまで言って良いのかはわかりませんが、二十代にして彼女は売れっ子になるわけです。

 ところがもちろん、時代は移り変わるもので、次第に彼女の作品——ひいては彼女から、光が失われ始めます。
 有名俳優を起用しても『爆死』と呼ばれるような視聴率となり、当然ながら彼女は戦犯のレッテルを貼られるわけです。

 かつて一緒に仕事をしていたテレビ制作の人に書いた脚本を送ったものの、直接不採用となったことをわざわざ自宅近くにまで来られて告げられてしまいます。
 挙げ句の果てには不採用を告げられた場の近くにいた派手めな男の子に『時代に合ってないんだよ』なんて言われる始末。

 しかし、その派手めな男の子は一枚の名刺を置くのです。


【満月珈琲店】


 そう書かれている名刺を。


 もちろん、瑞希はそこへ足を運ぶわけですが。

 その『満月珈琲店』の店主や従業員たちは、みんな猫なんですから驚くわけで。


 ——これ以上はネタバレになるので、話の本筋を書き連ねる筆は一旦どこかへ仕舞っておきましょうか。


 星詠みの言葉に導かれて、それぞれの章の主人公たち——スランプ中のシナリオ・ライター、不倫未遂のディレクター、恋するIT起業家など——は、それぞれに最適なメニューを供され、そして諭されて。
 また明日へと旅立っていくのです。
 ただ、昨日とは少し違った世界へとつながっている明日へ、ですけど。



まとめ ~『満月珈琲店の星詠み』

 それでは、最後に『満月珈琲店』マスターからの一言で、この記事を締めさせていただきます。


「『自分を理解する』というのは、『自分を大切にする』ことにつながります。そうすると、あなたという星が輝き出すんですよ」

「『満月珈琲店の星詠み』 第一章 水瓶座のトライフル」より


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なんだか、おなかがすいてきちゃったな。




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