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パリ生活vol.3 「パリに来て1ヶ月が経った。フランスと日本の演劇について」

2017年当時の文章をそのまま載せています。
今よりもさらに未熟でお恥ずかしいですが、留学の記録として。
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2017年10月21日


パリに来て1ヶ月が経った。超長文です。
強くならなきゃと思っていた。
面白くならなきゃと思っていた。
思ってなるものではないことに今さら気付いた。
素直に、正直に、心が動くものを選んでいけば後悔はしない。
「強い」も「面白い」もよく分からない。各人の価値観による不明確なものは追いかけても仕方ない。
私が好きだと思える私を選択していけば良い。

【 研修の話 】
毎日シーン創りのディスカッションがある。英語とフランス語で猛烈に意見が交わされるのでついていくのに必死。
無理に分かったふりをするのはやめた。
野田地図だったらこうなのに
多摩美だったらこうなのに
日本だったらこうなのに

と考えるのもやめた。まずは全てを受け入れてみる。私の面白いは誰かの面白くないかもしれないし、誰かの面白いが面白いかもしれない。
傷付くことの原因は殆どの場合、自分自身の内面にある。励ましの手に気付けるかどうかも自分自身の内面にある。
多国籍すぎる環境だけど、どんな国籍の人も「良い表現」を目指す心は一緒。もはやそれしか確かなものがない。自分たちを繋げるものはそれしかない。
そんな毎日が嬉しい。正直言って楽しまないと楽しめない。いまだに毎日一回は泣きそうになる。悔しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、迷っていること、そんなことを聞いてくれる人がいつも近くにいてくれたんだなぁと寂しくなる時もある。仲間としょうもない話で笑いたい。好きな人たちに会いたい。
でも私は嬉しく毎日を過ごしている。
ちなみに、私の末っ子キャラはどうやらパリでも通用する。てへぺろ!


【 フランスの演劇と日本の演劇 】
フランスは、オリジナル作品で独立自営し、商業的な活動をしていない芸術家は税制上で優遇してもらえるという、日本でフリーランスで活動している身としては羨ましい話。国立のコンセルバトワール出身なら国家資格なので、国から生活保証してもらえるらしい。
フリーランスでもある程度の生活保護はある。フリーランスといえどどこかのエージェントには必ず所属しないといけないそうだ。フリーランスのためのエージェントというのがあるらしい。そんなのフリーランスじゃないじゃんとか思うけど、それくらい芸術家を職業として管理してくれるということだ。
しかしどうやら文化大国フランスも不景気ということでサルコジ以降から文化に対する国家予算が減っちゃったようで、だいぶ苦しくなってきたそうで。芸術家の生活保証が少なめにはなっているらしい。それにしたって日本の国家予算の文化に対する予算は全体の0.1%というのに対しフランスは1%ですからね。まぁでも歴史も環境も違うわけだから、そんなすぐに日本を変えてくれってゆうのも無理な話と私は思っている。鎖国してた小さな島国が、よくやってる方だと思う。(なに様)
フランスの話に戻る。で、そうなってくるとだ、元気なくなってくるわけですよ。新進芸術が。コンセルバトワール系だけ相変わらずブイブイ言わせてる感じになってきていると。そうなると演出家や劇場も冒険しなくなるわけですよ。古典的表現ばかりの上演になってくる。それが悪いと言ってるわけじゃなくて。そればっかりになると次世代が続かない。新しい文化が出来ないし諸外国に置いてかれてまう!パリはもう古いとか言われてまう!ってことで、じれったい思いや焦りを感じているフランスの文化人も多いようです。
で、私は思ったのよ。
日本の演劇、フランスで食い込んでいけるんじゃね?って。
「フランス人は日本人をナメてる。」そう思ってるからナメられるのよ。
いや、ナメてないから。だいぶ親日的だと私は思います。

日本の演劇教育って大したことないじゃない?多摩美出身の私が平然と言っちゃうけど。
本当大したことないのよ。それが唯一の功を奏した点は、創り出すものに固定概念がないこと。日本の演劇は保証や税制上の優遇なんてものは全くないけど、その分自由度がすごい。
例えば昨日まで弁護士だった人が今日から役者やります!演出やります!って言って出来るし、私の友人で某有名週刊誌の記者をやりながらたまーに休みの日に演劇をやってシアターグリーンを2人芝居で満席にした奴もいる。
シェイクスピアのオタクが自分で演出もできるし、シェイクスピアを読んだことないアイドルが役者になったりも出来る。本人が行動すればいい。
今、古典演劇に埋もれて悶々としているパリを救えるのはそんな日本の破天荒な演劇かもしれないよ。現に、日本の劇団からパリの演劇学校へワークショップ講師として呼ばれた人(ちなみにこのワークショップでパリ規格外のことをやられてコンセルバトワールの女優が泣き出して、貧血でぶっ倒れたらしいw)や、作品作りで召集された演劇人もいる。チャンスやでー!そうなったら、古典演劇大国フランスで日本の演劇が流行ってるだとぉ!?ってなって他の諸外国からの注目もあるだろうし、今まで演劇では日本から海外に留学する人ばかりだったけど、もしかしたら演劇で日本に留学に来る外国人が出てくるかもしれない。そんな流れになったら日本だって演劇教育や演劇文化にもっと力を入れるようになるんじゃないかと。
私の足りない頭で考えたことだから、ツッコミどころ満載かもしれないけど、こんなところで細かいことツッコむ大人は喫茶店のコーヒー代も細かく割り勘する人だと決めつけちゃうからねっ。ぷー。
あと、これは言いたい。宝塚はもっと国の文化としてアピールすべき。こっちで出版されてる日本の演劇をテーマにした本にさえ載ってないよ。世界的に見ても、専属の劇場が国の二大都市にあって、通年で絶えず公演を行っている100年以上続いてる劇団なんてない。もっと世界に売り出してほしい。「女だけの劇団だ。」っていうだけで皆ちょー食い付く。どうするの?異性演じるとか超むずかしいじゃん!見たい!見たい!ってそりゃもうすごいんだから。。小林一三先生が生きてたら絶対もっとやってる。がんばれ阪急電鉄。そろそろ阪急のことだけじゃなく日本の舞台文化へ真剣になってくれ。宝の持ち腐れだぞ。
根本的に、日本でやりゃ良いじゃん。と思う人もいるかもしれない。というか、私も昔はそうだった。しかしだ。しかしだよ。日本の演劇、はたまた世界の演劇を文化として後継していくには、世界中の舞台が大好きな人たちが助け合って良いじゃない!と思うの。
そのくらい頑張らないと消えていっちゃう儚いものかもよ。ただでさえ残らない芸術なんだから。空間芸術の中で舞台が唯一よ。形に残らない造形芸術なんて。素敵じゃない。「なんて真実なの!」って思うじゃない。
私には何も出来ないかもしれないけど、私と出会った誰かと何かがどうにかなって、そのまた何かと誰かがどうにかなって、将来の舞台文化がちょっとでも良くなるかもしれないって、本気で思ってる。
私に生きる力をくれた「舞台」に何か少しでも、ほんの気持ちでも、お返ししたいと思う。
話が逸れた。そう。だから、日本の破天荒な皆さんはぜひフランスで暴れてみてはいかがかな?と思います。
安定した海外舞台生活をご希望の破天荒じゃないタイプの方々にはドイツをお勧めします。笑

余談ですが、もうすでに2回引っ越した。爆
色々大変。
でも相変わらずシャイヨー劇場の近くだし、最終的に落ち着いた今のお家はとっても気に入ってる。近くにちゃんと新鮮なものを売ってるスーパーがあるのが最高。好き。良い子。
落ち着いてきたのでそろそろ日本食の自炊生活。お味噌汁。豆腐とワカメのやつ。
あさげ、時々めし。(←懐かしい。あのCMの男性も役者ではない。広告会社の社員だ。)
なるようになるなる。
Let it be。イマジンイマジン、ジョンレノン。(締めがイギリス )

エッフェル


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