セブ島の洗礼
マクタン・セブ国際空港に到着すると、友人カップルが私達を迎えてくれた。マブール島でお世話になったダイビングガイドの二人。
セブに拠点を移した彼らと一緒に潜ることがこの旅の目的。
その足で街へ行き、フィリピン料理のレストランで乾杯。
おいしい料理とおしゃべりで楽しい時間を過ごした。
翌朝からダイビングなので、9時にはお開き。レストラン前にいたタクシーに、友人たちがメーター使用を確認した上で、ホテル名を伝え、見送ってくれた。
走り出して間もなく、ドライバーが言った。
「この時間じゃホテルまで送っても、帰りに客を拾えないから、メーターを止める。600ペソ払え!」
はいぃ!?
ホテルまで200ペソはかからないと聞いていたのに。だいいち、帰りのことなんて、こちらの知ったことではない。
「No! チップくらいあげるから、メーターのままで行け!!」
「帰りに客がいないと困る!!」
「知ったことか!! とにかくメーターを止めるな!!」
こんな押し問答が繰り返されたあと、あきらめたのか、ようやく静かになったドライバー。
でも、私の胸は不安でいっぱいだった。
初めての国、初めての土地。正しい道を走っているのか、知る術もない。
遡ること数年前、南米で起きた事件が頭をよぎる。
新婚の日本人夫婦が、ホテルタクシーを断って流しのタクシーを利用したばかりに、そのまま拉致され、金品奪われた上、殺傷された事件。
このまま、どこかに連れていかれ、そこにはドライバーの仲間がいて、そして……。
恐ろしい想像が止まらない。
宿泊先ホテルの看板を目にするまでの数十分、生きた心地がしなかった。
これに懲りて、翌日から移動は全てホテルタクシーを利用した。高くつくけれど、あんな思いはもう真っ平。お金で安全が買えるならそれに越したことはない。
翌日、友人がお巡りさんにこの件をちくってくれたそう。
タクシードライバーはたいてい同じ場所で待機しているので、案外、すぐに見つかってお説教されたかも。
例の新婚さんカップルも、たった数ドルをけちったがために、不幸な事件に巻き込まれてしまった。
海外へ行く時は、「安全はタダではない」ということを、どうか、肝に銘じて、皆さんも良い旅を。
※2015年のお話です。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?