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【読書ノート】「蕗子さん」(『すいかの匂い』より)

「蕗子さん」(『すいかの匂い』より)
江國香織著


「集団が、苦手でもあり、学校を心底嫌悪していた」主人公(「私」)は、26歳の大学生蕗子さんの語る話が好きだ。「私」は、今やその当時の蕗子さんの年齢になってみて、彼女との出会いを思い出す。

蕗子さんは、亀を甲羅から取り出そうとして、包丁で、切り込みを入れたら、あっけなく亀は死んでしまったのだという。「私」は、そのオチが好きだった。

ある日「私」が、近所の男の子たちが作った落とし穴に落とされ、泣いて帰る。そのことを当時、自宅に、下宿をしていた大学生の蕗子さんに話すと蕗子さんは、仕返しに大きな落とし穴を掘ろうという。そして、蕗子さんは消えてしまうという話。

なかなか、シュールな物語で、よくわからないので、キーワードを挙げてみる。

①亀を甲羅から取り出すこと
1. 内面の資源や潜在能力の発見:亀は長寿や忍耐力といった特性で知られており、その象徴的な意味を持つ亀を甲羅から取り出すことは、自己成長や可能性の追求を象徴している。

2. 自己の変革や成長: 亀の甲羅は安全や保護の象徴であり、亀を甲羅から取り出すことは、自己の限界や制約から自由になり、新たな可能性を追求する意志や勇気を表す。

3. 過去の固定観念や習慣からの解放:。亀の甲羅は亀の身を守るための堅固な外殻ですが、亀を甲羅から取り出すことは、自分自身を新しい経験や視点に開放し、過去の枠組みにとらわれずに前進する意志を示す。

②穴を掘るということは?
1. 創造と変革: 穴を掘ることは新たな空間や形を創り出す行為であり、物事を変革する可能性を象徴する。

2. 探求と探究: 穴を掘ることは内面の世界や隠された現実への探究を象徴し、深層に潜む意味や真理を追求することを意味する。

3. 努力と根気: 穴を掘ることは目標の達成や困難の克服に向けた取り組みを意味し、忍耐力や毅然とした精神を表す。

4. 無常と仮定: 穴を掘ることは物事の一時的な変化や有限性を意味し、無常さや仮定の側面を表す。

キーワードから見えてくること。
今の「私」にとって、蕗子さんの存在は大きな転換となったのだろう。
当時の「私」は、ひたすらに、闘うことを避けて、降りかかる災難を自ら被災者を演出することでやり過ごしていたのだったが、蕗子さんは、変化に挑む姿勢を示して「私」の前から消えていった。

物語の主題は何か?
人生は変化の連続だということなのだと理解した。

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