見出し画像

【読書ノート】『草之丞の話』(『つめたいよるに』より)

『草之丞の話』(『つめたいよるに』より)
江國香織著


大人向けの絵本としても有名な物語。

主人公の「僕」は、中学1年生。
母親は、女優だ。ある日、町で母親が、サムライ姿の男と会っていることを見つける。母親からは、そのサムライは、幽霊で、名前は草之丞といって、「僕」の父親なのだという。

なかなか、訳のわからない設定なのだけどね。

キーワードを挙げてみた。

①サムライ 
単に戦士の規範を超え、日本の倫理、道徳、そして美学の根底を形成している。武士道は、義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義といった価値観を重んじ、これらを通じて人間性の高潔さを追求する。また、武士道は「一瞬を生きる」という考え方を提唱し、常に死を意識することで、生の価値を高め、現在の瞬間を大切にする生き方を促す。

②女優
現実と虚構の境界に立つ人物として捉えられる。女優は、彼女が演じる役柄を通して、さまざまな人生観や倫理観を表現し、観客に深い感情や思考を喚起させる。この点で、女優は「真理の追究」という哲学の一側面を体現していると言える。女優は時間と記憶、現実とイメージの交錯する場所において、思索を刺激する存在となる。

③幽霊
存在と非存在、物質と精神、現実と超越の間の境界に位置する象徴。幽霊の概念は、私たちが感じる現実の限界を超えた何か、つまり目に見えないが存在すると信じられるものを表している。また、幽霊は過去と現在、死者と生者の間の関係を象徴しており、未解決の問題や未完の願いがある場合、その霊魂は成仏せずにこの世に留まるとされている。

④ワルツ
人々が互いに調和し、リズムと動きで一体となる美しい表現である。ワルツの3拍子は、人生のリズムや時間の流れを象徴するとも考えられている。また、ペアで踊ることから、信頼とパートナーシップの重要性を示唆している。

キーワードから見えてくる物語の主題は何か?

時間と記憶、現実とイメージ、そして人間関係の深い結びつきを探求することにあると言えるでしょう。物語は、私たちがどのようにして過去と現在を繋ぎ、愛と喪失を通じて自己を発見し、成長していくかということ。また、武士道の価値観、女優の役割、幽霊の象徴性、ワルツの美しさが、物語全体を通じて織り交ぜられている。


何だかよくわからない話なのだけど、美しくて、心が暖まる物語だった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?