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【読書ノート】『スパイの妻』

『スパイの妻』
行成薫著


物語の時代背景
太平洋戦争前夜の日本。街中を軍人が闊歩し、国民生活が、少しずつ制約を受けはじめた時代。

福原聡子は神戸で貿易会社を営む夫・優作と幸せな日々を過ごしていた。そんなある日、優作は、甥・竹下文雄と満州に出張する。そして、満州で、草壁弘子と言う看護師から重大な機密情報を知らされる。日本軍は細菌兵器としてペストを使った人体実験を行っていたという。優作は、コスモポリタンであることを自認していて、日本軍が満州で行っている人体実験を止めなければならないと決意する。それが、スパイ活動の始まりになる。

キーワードを挙げてみる。
①スパイとは?
一般的には、スパイは秘密裏に情報を収集する人を指すが、哲学的な観点からは、知識、真実、倫理などに関する深い問いを投げかける存在といえる。例えば、スパイは隠された真実を明らかにする役割を持ち、それによって我々が世界をどのように理解し、行動するかに影響を与える。また、スパイは自己のアイデンティティを隠し、他者になりすますことで、「自己」とは何か、また「他者」との関係性についての探求を促す。

②コスモポリタン
個人が自分の属する民族、国家、または国民を超越して、全人類を同胞と見なす世界観を指す。この思想は、古代ギリシャのキュニコス派やストア派にその考え方が見られ、世界を一つの共同体とし、すべての人間が平等な立場でこれに所属するという理念。

優作は、聡子を守る為に、スパイ活動のことは、聡子に悟られないように配慮していたのだけど、
神戸の憲兵分隊長の津森泰治が、聡子の幼なじみであったこともあり、優作が、要注意人物であることを知られる。そうして聡子も国家の不正を知り、優作について行く決意をする。


物語の主題は何か?
①様々な夫婦の愛の形。優作の愛、津森泰治の愛、聡子の愛。
②自分に課された使命に気づいた時に、自分のアイデンティティが、明確になるということ。

物語の主題とは異なるけれど、日常的に遭遇する不正に気づいても、なかなか、正義を振りかざすことは、難しい世の中であるのは、今も昔も同じなのだなあと改めて思わされた。

映画も良かったのだけど、原作とは、結論が全く異なっていて、正直、驚かされた。

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