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【読書ノート】『愛の彼方の不変の死』

『愛の彼方の不変の死』
ガルシア・マルケス著


上院議員オネシモ・サンチェスが死を控えた状況で、彼の人生を変える女性と出会う物語。彼は医者から死を宣告された後、生きる意欲を失い、自らの運命に対する怒りや涙を経験する。

主な登場人物の名前が意味すること

①オネシモ・サンチェス
キリスト教の観点から見ると、変化と成長、そして奉仕の精神を象徴する人物像であると考えられる。オネシモは新約聖書に登場する人物で、「役に立つもの」という意味を持ち、奴隷から解放されて宣教者、さらにはエフェソ教会の司教となったとされている。この変化は、キリスト教の教えによる個人の変容と成長を象徴し、奉仕の精神を通じて他者に対する愛を実践するキリスト教徒の理想像を示している。

サンチェスという姓は、「サンチョの息子」という意味であり、聖化された、すなわち神によって聖別されたという意味合いがある。

②ネルソン・ファリーナ
キリスト教の観点から見ると、奉仕と献身を象徴する人物像であると考えられる。ネルソンという名前は「チャンピオン」や「勝者」という意味があり、ファリーナは「小麦粉」という意味だが、これは日々のパン、すなわち生活の基本的な糧を提供することを象徴している。キリスト教では、日々のパンは神からの恵みとしての食物を意味し、また霊的な糧、すなわち神の言葉を象徴している。

③ラウラ・ファリーナ
キリスト教の観点から見ると、純粋さや献身を象徴する人物像であると考えられる。ラウラという名前は「月桂樹」を意味し、古代から栄光や勝利の象徴とされる。また、ファリーナは前述の通り、日々のパン、すなわち生活の基本的な糧を提供することを象徴している。したがって、ラウラ・ファリーナという名前は、物質的な糧と霊的な糧を提供する者、または純粋さと献身の精神を持つキリスト教徒の理想的な人物像を表している。

次にキーワードをいくつか挙げてみる。

⑴蝶
一般的に、蝶は変化や再生、復活のシンボルとされており、その美しい変態過程は、卵から幼虫、さなぎを経て成虫になることで、人生の変化や成長の過程を表しています。また、キリスト教では蝶は復活の意味を持ち、仏教では輪廻転生を象徴している。このように、蝶が舞うことは、生命のサイクル、精神的な変容、美しさ、そして永遠の命など、多くのポジティブな意味を持つ。

⑵薔薇
一般的に、薔薇は愛と美の象徴とされているが、同時に痛みや苦しみの象徴でもある。この二重性は、人生の美しさとともに存在する困難や試練を表している。キリスト教の世界観では、赤い薔薇はイエス・キリストの受難や殉教者のシンボルとされ、白い薔薇は聖母マリアの純潔を象徴している。

物語の主題は何か?
人生は、短い。そして、死は、不可避だということ。オネシモ・サンチェスは他者に向かって、「誰であれ、いずれは死んでいく運命にあることを覚えておくべきだ。そして、時間が経てばその人の名前ですら忘れ去られてしまう」としている。限られた時間の中で、他者への愛と献身が自分の人生を豊かにするものなのだと理解した。

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