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【読書ノート】『真夏の夜の口付け』(『生命式』より』

『真夏の夜の口付け』(『生命式』より』
村田沙耶香著


原稿用紙で言うと、数枚の不思議な物語。

75歳の二人の女性の間で交わされる言葉のやり取り。
芳子は成人している娘が二人いるのだけど、処女で、キスをしたことがない。菊江は、未婚なのだけど、セックスが好きで、色情狂と言われている。

気になったフレーズを挙げてみる。

①「夏はキスの季節」
キスは、人間の感情や関係性を表現する行為、特に季節に関係なく行われるはずなのだけど。夏は暑くて開放的な気分になりやすく、恋愛や性欲が高まるということか?

②「口付け」は、何を意味するか?
自分と相手との距離や絆を表現する方法。口付けの哲学的な意味を考えることは、私たち自身がどのような感情や関係性を持っているか、どのような感情や関係性を求めているかを考えることでもある。

芳子は、75歳の今までに、口付けをしたことがないというは、他人との距離感や関係性が、ぶれない人間なのかもしれない。

③「人工受精」の意味することは?

人間の生命や尊厳、自由や責任、正義や平等などの価値観をどう捉えるか?が問われている。生命の神秘と言うものを、科学技術によって、コントロールするということ。

④「わらびもち」の意味すること

わらびもちは、わらび粉というワラビの地下茎から得られるデンプンを原料とする和菓子だが、この原料は高価で希少なため、古くから身分の高い人や特別な機会にしか食べられなかったと言われている。また、わらびもちは春の季語でもあり、桜の花とともに日本人の心に春の訪れを感じさせる。

現代ではわらび粉の代わりにさつまいもやタピオカなどの安価なデンプンを使って作られることが多く、夏の涼しげなお菓子として親しまれている。

- わらびもちは本物のわらび粉で作られたものだけを指すべきか?それとも代用品で作られたものも含めるべきか?
- わらびもちは春のお菓子として扱うべきか?それとも夏のお菓子として扱うべきか?
- わらびもちは日本独自の文化として尊重するべきか?それとも他国の文化と共有するべきか?

これらの問題は、人間の食文化や価値観に関わるもの。わらびもちの哲学的な意味を考えることは、私たち自身がどのような食文化や価値観を持っているか、どのような食文化や価値観を求めているかを考えることにも繋がる。

以上のキーワードから、本書の主題を考えてみる。

多くの常識というものは、もともと、曖昧なもので、ちょっとしたことで変わってしまう。
わらび餅は、元々春のものなのに、今や、技術の進歩で、夏の食べ物に変わりつつあるし、セックスすることなく、子供を授かることも、技術の進歩で可能になってきている。故に、セックスは、快楽追求の道具にすぎない。
常識に縛られず、自由に生きることは、人間の本来の姿なのか!?
神のいない、愛のない世界は、幸せなのかという、問いかけなのではないか?と思った。

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