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私の不安に寄り添ってくれた全ての人に感謝したくなった映画「劇場版『TOKYO MER~走る救命救急室~」

体調が悪くなるのは、決まって夜だ。
妊娠3か月のときは、夜中に突然激しい頭痛に見舞われた。
ズキズキズキと、脈に合わせて痛みが走る。
動くことも、目を開けることもできない激しい痛み。妊娠中のため、安易に頭痛薬を飲むこともできない。ソファにうずくまって、目をぎゅっとつむって、真っ暗な部屋で、つわりの吐き気と痛みの拍動をやりすごしていた。
それはそれは心細い夜だった。5分が30分、1時間にも感じられる。この頭痛が単なる偏頭痛なのか、はたまたつわりの一部なのか。こんなに痛いことは人生で初めてだ。もしかすると脳内に大きな病気が潜んでいるのかも。そういえば、脳梗塞ってバットで殴られたみたいに痛いっていうよな。もしかして、私、死ぬの?! 
暗い部屋で真っ暗な思考を繰り返していた。

本当は119番通報したいくらい痛みが辛くて怖かったが、そこをぐっと抑えて、迷惑を重々承知で、でもわらにもすがる思いで、かかりつけの産婦人科へ電話した。

「はい、○○産婦人科です」
携帯電話ごしに明るい応答。出てくれたのは、夜勤の看護師さんだった。
「こんな時間にすみません。頭痛が痛くて、どうにもできなくて・・・・・・」
と、状況を説明する。
「ああ、多分偏頭痛ですね。痛いところを冷やすと良くなりますよ。それでも治らなければ、またお電話くださいね」
迷惑そうな感じは全然しなかった。むしろ、つわりと頭痛のダブルパンチを「それは、つらいですね」と心配してくださった。
看護師さんの明るい声に救われた。
冷蔵庫から保冷剤を持ってきて、タオルにくるんで、特に痛みのある部分に当ててみた。5分、10分と時間がたつうちに、看護師さんの言葉どおり、痛みがひいてきて、同時に睡魔もやってきて、気づいたら30分ほど、うとうとしていた。
ああ、もう大丈夫。
寝室のベッドにもぐりこんで、ゆっくり眠ることができた。


妊娠6か月のときには感染性胃腸炎にかかって、夜中に激しい吐き気に襲われた。吐くものがなくなっても、吐き気が数分おきにやってくる。吐き気がするたび、お腹の筋肉が縮こまって、このまま流産してしまうんじゃないかと不安になった。
耐えられなくなって、総合病院の救急外来に吐き気用バケツを抱えて飛び込んだ。
「妊婦さんに薬は出せません」と門前払いをされるかと思いきや、若い当直の先生は、妊婦にも処方できる吐き気止めを一生懸命調べてくれて処置してくれた。おかげで、帰るころにはすっかり吐き気は収まり、流産するかもなんて不安もなくなった。

便秘と下痢が一気に来て強烈な腹痛に襲われるのも、やっぱり深夜だ。
陣痛みたいな激しい腹痛の波が、数時間かけてだんだんと強くなってくる。そして痛みのピーク時には吐き気とめまいも加わって、上も下も大騒動。トイレの中で半裸でうずくまる。なんとも無様な姿。
見かねた夫が119番に電話したことがある。
便秘と下痢ごときで救急車を呼ぶなんて、「救急車はタクシーじゃありません!」と叱られるかもと思ったが、全然そんなことはなく、
「大丈夫ですか? 救急車を向かわせましょうか?」
と誠実な対応に涙が出た。結局、呼ばずにすんだけれど、その優しさがありがたかった。

頭痛だの腹痛だの吐き気だの、書いてみれば大した病気ではないけれど、それでも、渦中のときのつらさは筆舌に尽くしがたい。
心細いし、不安だ。己の体の弱さや日頃の不摂生を悔いたり、こんなことも我慢できないのかと情けなくて泣きたくなる。このまま、治らないんじゃないか、大きな病気じゃないのかと心配にもなる。

日頃の些細な不調でもこんな具合なのだから、まして、大きな事件や事故、災害に巻き込まれてケガしたり病気が悪化したりしたときの、ショックや不安は計り知れない。
そんなときに、目の前に「大丈夫ですよ!」とお医者さんや消防士さんや救急隊員が助けに来てくれたら、まさにヒーローではないだろうか。

そんな現実のヒーローを描いた映画を観てきた。

劇場版「TOKYO MER~走る救急救命室~」

東京都知事直轄の走る救命救急室と、そこで命を救う医師の物語。
事故や事件、災害現場で、死者ゼロを目指すという理想を掲げている。
かならず最後は「死者ゼロ」で終わるのはお約束だけれど、物語の本筋はそこじゃない。
医師や看護師をはじめ、消防、警察、行政、災害現場で自らの命を賭して、諦めることなく、人の命を救おうとするあらゆる人々に光を当てるドラマだ。
実際に助けに行く人、助けに行く人をサポートする人、制度を守る人、仕組みを作る人、いろんな人が手を携えて、どんな命も見捨てない社会を作ろうと頑張っている。そういう人は、ドラマだけでなく、現実にもいるよと気づかせてくれる。

これまで、自分を不安や痛みから救ってくれた全ての人に「ありがとう」と言いたくなった。
ドラマ版でも、中身の濃い映画のような1時間だったけれど、劇場版は本当にドラマ10話を全編一気見したみたいな濃厚な2時間だった。あっという間だった。
映画やドラマを見ていると「これどこまでがセットなのかしら?」とか「今のCG?」なんて雑念が湧いてしまうのだけど、TOKYO MERについては、全く思わないから、ほんとすごい。こういうドラマは珍しい。

一番、胸熱だったシーンだけ書いておこう。
二次災害でケガをし、処置を受けていた消防隊員が、主人公の喜多見の命を救うため、全員が一斉に立ち上がり、消防服をつかんで走り出すシーン。
敵に負けそうだったヒーローが、誰かを救うという信念を思い出し、再び立ち上がる。かっこよかった・・・・・・
そんなヒーローは私のすぐそばにもいて、幾度となく窮地から救ってくれた。本当にありがとう。そしてこれからも、どうぞよろしくお願いします。

公開を楽しみにしていて、予告やら宣伝のYouTubeやら結構たくさん見て期待値を上げまくっていたが、それを越えてきたいい映画だった。

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