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『稲盛和夫一日一言』 6月19日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月19日(水)は、「知恵の蔵 ①」です。

ポイント:宇宙のどこかにある「知恵の蔵」ともいうべき場所から、人間は自分でも気がつかないうちに、そこに蓄えられている「叡知」、新しい発想やひらめきといったものを引き出してきた。

 2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の中で、「知恵の蔵」の存在について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 この世界の、この宇宙のどこかに「知恵の蔵(真理の蔵)」ともいうべき場所があって、私たちは自分たちも気がつかないうちに、その蔵に蓄えられた「叡知」を、新しい発想やひらめき、あるいは創造力としてそのつど引き出したり、汲み上げたりしているのではないか。

 それはいわば「叡知の井戸」だが、その所有者は人間自身ではない。例えば、神や宇宙が蔵している普遍の真理のようなもので、その叡知を授けられることで人類は技術を進歩させ、文明を発達させることができた。
 そしてまた私も、何かの加減か、必死になって研究に打ち込んでいるときにその叡知の一端に触れ、創造性を発揮して成功の果実を得ることができたのではないか。

 1984年、私は「京都賞」というものを創設し、人類に新たな地平を開いたさまざまな分野の研究者を顕彰してきましたが、そうした受賞者の方々と接していると、彼らが一様に創造的なひらめき(インスピレーション)を、あたかも神の啓示のごとく受けた瞬間があることに驚くのです。
 その創造の瞬間は、人知れず努力を重ねた研究生活のさなか、ふとした休息の瞬間であったり、ときには就寝中の夢の中であったりします。

 私は、偉大な先人たちの功績を顧みるとき、人類はそのようにして、「知恵の蔵」からもたらされた叡知や技能を創造力の源として、技術を進歩させ、文明を発展させてきたのだ、という確信を強くするのです。

 では、その蔵の扉を開いて知恵を得るにはどうしたらよいのか。
 それには、やはり燃えるような情熱を傾け、真摯に努力を重ねていくことしかないのではないか。つまり、何かを得ようと、善き思いを抱いて一生懸命頑張っている人に、神は行く先を照らす松明(たいまつ)を与えるかのように、「知恵の蔵」から一筋の光明(こうみょう)を授けてくれるのではないでしょうか。

 そうでも考えなければ、知識も技術も、経験も設備も乏しかった私に、なぜ世界に先駆けた発明ができたのか、明確に説明することはできません。
 当時の私は、寝ても覚めても研究に没頭し、それこそ「狂」がつくほどのすさまじい勢いで働いていました。何としても成功させたいという強い願望を抱き、必死の思いでひたむきに仕事に取り組んでいたのです。
 その報酬として、「知恵の蔵」に蓄積されている叡知の一部が与えられたのではないかと思っています。
(要約)

 2015年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第1巻 技術開発に賭ける』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、創造的で独創的な研究開発をするということについて、名誉会長は次のように述べられています。

 どのような分野であろうと、研究に対して全身全霊で打ち込むと同時に、常に虚心に反省でき、さらに勇気をもって進むことができる、そうしたバランスのとれた人間性を備えた人でなければ、誰もやっていないテーマの研究開発はできない、と私は思っています。

 本当に研究を究めていこうとすれば、あらゆる現象面でバランスがとれているのか、それともアンバランスなのかが見抜ける精神構造でなければならないはずです。
 そういう点では、強い動機付けに裏づけられて研究する場合、通常持っている意識に加えて、その人が意識下に持つ「潜在意識」が大事になると思います。その潜在意識まで動かし得る研究者でなければ、本物の研究はできないのではないでしょうか。

 ある研究テーマに没頭し、苦しみ悩み、四六時中そのことだけを考えながら、どうしても成功させたい、という強い願望を常に持っていると、その願望は潜在意識に浸透していきます。すると、潜在意識は、仕事や研究の合間に休息をとったとき、または眠りにつこうとする瞬間に働きかけてきます。
 つまり、潜在意識はニ四時間常に働いていて、目の前の研究から意識が離れた瞬間に、ヒントを与えてくれる。

 実際のところ、何が正しいのかまではよくわかっていませんが、京セラの研究者には、「普通の意識だけではなく、潜在意識まで働かせよう。燃え上がるように強い願望が潜在意識にまで浸透していけば、潜在意識が働いてくれるはずだ」と言ってきました。(要約)

 「運も実力のうち」ということわざがありますが、関連する名言をふたつ紹介します。

「幸運は、チャンスと準備が一致した時に実現する」
              トーマス・エジソン

「運とは巡り合わせです。
 普段から努力し続けていれば、巡り巡ってどんな困難にぶつかっても、
 必ず救世主が現れたりして、状況が好転していくものです。
 苦しくなったとき、なぜか必要なときに必要なものがもたらされる
 のです。それはあきらめずに努力を続けてきたおかげです。
 ロマンとビジョンがあるから、あきらめずに努力を続けられるし、
 あきらめずに努力し続けるから、運が引き寄せられてくるのです」

                          似鳥昭雄

 にわかに「知恵の蔵」の存在など信じらえないという方にとっても、準備と努力を続けることの大切さは理解いただけたかと思います。

 「日々精進」あるのみ!


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